董和先生に聴く

慢性病・老衰の補腎治療(Ⅱ)

聞き手・大浦 純孝社長

主な対談内容の記事:

大浦 前回は、二人の慢性病に悩まれる方を例にして、慢性病に対する漢方の基本的な考え方と、その治療方法を教えていただきました。今回は、前回に触れられていない慢性病について、標準的な治療方針を教えていただきたいと思います。


喘息・肺気腫

董和 はい。では、まず喘息と肺気腫を取り上げてみたいと思います。この場合、咳や喘息の症状がひどくて痰が多く出る場合には漢方系食品の「肺風草(はいふうそう)植物」をお勧めします。また、咳や喘息の症状はあまり気にならないにも拘らず、息苦しいとか疲労感があるという場合は漢方系食品の「紅景天(こうけいてん)植物」が役立ちます。ただし、咳や喘息の症状が慢性化している場合には「肺風草植物」あるいは「紅景天植物」と、体力低下を改善するために補腎作用のある漢方系食品の「鹿茸などの生薬」を併用されることをお勧めします。

大浦 人間医学社では咳や喘息に対して、以前は「山桃草植物」を利用させていただいていましたが、これが製造できなくなったため、それに代わるものとして「肺風草植物」を新たに作られたのですね。

董和 ええ、そうです。「肺風草植物」は肺風草のことです。しつこい咳や喘息に対しては、「山桃草植物」よりも効果があると思っています。

大浦 そうですか。咳というものはありふれた症状ですが、なかなか厄介なものですね。特に慢性咳嗽とか慢性気管支喘息には、現代医学では安全かつ有効な治療薬がありません。そういう意味では「肺風草植物」は副作用がなく、大いに期待しています。ただ、慢性化したものには「肺風草植物」に加えて補腎作用のある「鹿茸などの生薬」を併用すべきなのですね。

董和 そうです。「肺風草植物」によって咳とか喘息症状を治療し、「鹿茸などの生薬」によって体力低下の改善を図るわけです。慢性病は自然治癒力を高めないと、治療薬の効果を発揮させることができないからです。

大浦 ところで、肺気腫には「紅景天植物」が改善薬として勧められていますが、この「紅景天植物」は当社でもよく利用させてもらっている漢方系食品の一つです。
肺気腫だけでなく、不整脈の方にもしばしば使っていただいていますが、ほとんどの人に喜ばれています。お年寄りで舌に苔が少なく乾燥気味で、体力が低下し、心臓や肺に問題を抱えている方にはピッタリの漢方系食品ですね。構成生薬の紅景天とか冬虫夏草が酸素供給能力を引き上げていることがよくわかります。血中酸素濃度を計ってもらうと、早期に上昇することで確認できます。

董和 ありがとうございます。ただ、不整脈を訴える人でも、舌に苔が多い人には漢方系食品の「瓜楼の果実植物」を単独、あるいは漢方系食品の「熊柳と寒涼性の生薬」をプラスして食べていただくことをお勧めします。ところで、「紅景天植物」は「肺風草植物」と併用していただくことがあります。陰虚型といって、ほてり、のぼせ、寝汗、口の渇き、午後~夜になると熱が出てくるといった症状を呈する方で、しつこい咳に悩む場合に有効です。

大浦 確かに陰虚型の咳は長引きますね。

董和 陰虚という概念は現代医学にはないものですから、それに対する治療方法もありません。こういう治療はむしろ漢方が得意とするところで、補腎療法が奏効することがよくあります。

慢性肝炎・肝硬変

大浦 では、次に慢性肝炎、肝硬変に対する治療法についてお願いします。

董和 慢性肝炎や肝硬変には肝臓の血液の流れを改善したり、肝臓の機能を高めたりするのに役立つ「紫霊芝などの生薬」をお勧めします。体力が低下してる場合には補腎生薬の「鹿茸などの生薬」を併用されることをお勧めします。

大浦 「紫霊芝などの生薬」は慢性C型肝炎から肝硬変、肝臓ガンへという悪化のパターンを食い止める目的で作られたものですね。その後、慢性肝炎や肝硬変、肝臓ガンだけでなく、悪性腫瘍に対する基本的な食品として使われるようになりました。

また、ステロイド剤の代用として慢性関節リウマチやアトピー性皮膚炎などの炎症を鎮める目的でも使われるようになり、めざましい効果を上げています。

董和 ありがとうございます。多くの薬局の先生方に使っていただき、その応用範囲が広がっていきました。ステロイド剤は強力な抗炎症作用がありますが、同時に連用すると厄介な副作用が現われてきます。その点「紫霊芝などの生薬」は安全かつ有効な漢方系食品ですアトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症、慢性関節リウマチといったステロイド剤が適応するような病気には、是非使っていただきたいと思います。

大浦 価格的にはかなり高い製品ですが、それに見合うだけの価値は十分にあると思います。ところで、慢性肝炎にも補腎生薬をプラスすることがあるということですね。

董和 そうです。体力が低下している方では陰虚に陥っていることがあります。いわゆる肝陰虚証というもので、寝汗、口の渇き、煩躁(気分が落ち着かずじっとしていられない)五心煩熱(両手のひらと両足の裏の熱感と焦燥不安といった症状)潮熱(午後または夜になると熱が出る)といった症状を呈します。こういった場合には「紫霊芝などの生薬」に漢方系食品の「亀板などの生薬」を加えていただくとよいでしょう。

慢性胃腸病

大浦 では、次に慢性胃腸病に移りたいと思います。まず、慢性の下痢に対してはどのようなものが勧められますか。

董和 慢性の下痢に役立つ漢方系食品はたくさんあります。例えば、先の喘息に役立つ「肺風草植物」、「野牡丹植物」、浪花茨の果実(金桜子)などです。

大浦 そうですか。当社の会員の方で慢性下痢に悩んでおられる方に漢方系食品の「熊柳などの生薬」を勧めたところ、非常によく効いて、逆に便秘気味になってしまわれたことがあります。じつは「熊柳などの生薬」を利用していただいた理由は、食欲が全くなく、冷えて元気がないという症状があったからです。下痢自体には煎じ薬を使っていただき、それに併用する形で「熊柳などの生薬」を食べてもらったのです。煎じ薬はやはり面倒だったのか、日数的にはあまり服用されなかったのですが、「熊柳などの生薬」は長く食べられました。そうこうするうちに慢性下痢はすっかり良くなられたのです。

この経験から、私は慢性下痢には「熊柳などの生薬」を勧めるようになったのです。

董和 それは良い症例ですね。「熊柳などの生薬」は慢性病はもとより食欲不振、鼻づまり、花粉症、冷え症などの症状にもお勧めしていますが、これからは慢性下痢の方にも勧めていけますね。

大浦 次に、便秘について説明していただけませんか。

董和 慢性の便秘で悩まれている方は多いと思いますが、漢方系食品の「白桃花(もものはな)植物」と「土大黄植物」を合わせて食べていただければ改善すると思います。「白桃花植物」は便秘のほか、お腹の張り、胃のつかえ、浮腫などの解消にも役立ちます。
「土大黄植物」はギシギシの根のことで、便通の改善に役立ちます。これでたいていの便秘は解消するはずですが、それでも効果がみられないというときには補腎生薬を併用します。

大浦 便秘は一般的にけいれん性便秘、弛緩性便秘、直腸性便秘に分類されますが、「白桃花植物」と「土大黄植物」の組み合わせはいずれのタイプの便秘にも有効なのでしょうか。

董和 便秘に対する漢方系食品は主に体質によって使い分けます。けいれん性便秘と直腸性便秘の人には、体力があって暑がりという体質が多くみられます。このような場合には「白桃花植物」と「土大黄植物」を合わせて食べられることをお勧めします。弛緩性便秘の人には、体力が低下して胃腸の働きが低下した体質の人が多くみられます。このような場合にも「白桃花植物」と「土大黄植物」が役立ちますが、胃腸の冷えが強いとか腹痛を起こしやすいという弛緩性便秘の方はこの二つの漢方系食品に、胃腸を温める働きのある「熊柳と温熱性の生薬」を加え、計三種類の漢方系食品を食べられることをお勧めします。

一方、お年寄りで舌に苔が少ない、足腰がだるい、頻尿や冷えがあるなど腎虚の症状があって便秘しているという方には「白桃花植物」と「土大黄植物」に補腎作用のある「鹿茸などの生薬」を併用されることをお勧めします。「鹿茸などの生薬」の中には“肉蓯蓉”という生薬が配合されています。これには補腎陽(腎の陽気を補う)益精血(気と血を増す)潤腸通便(腸を潤して便を出す)の作用があり、足腰がだるい、筋骨無力(筋肉や骨の弱り)、腸燥便秘(腸の脱水による便秘)などの改善に最適な生薬の一つです。

大浦 日本で許可されている漢方薬の場合、補腎作用のあるものはどちらかというと胃にもたれやすいところがあり、慢性胃腸病には使いにくいと思うのですが、先生の考えられた補腎生薬はそのような心配はいらないのですね。

董和 ええ。できるだけ胃腸障害を起こすことのない体に優しい生薬を選んで組み合わせています。

骨粗鬆症・変形性関節症

大浦 高齢社会を反映してか、骨粗鬆症や変形性膝関節症で悩んでいる方が実に多いですね。次に、これらについて説明をお願いします。

董和 はい。骨粗鬆症や変形性膝関節症には漢方系食品の「骨砕補(こつさいほ)植物」をお勧めします。漢方では骨は「腎」と深く関係していると捉えています。この腎は、西洋医学でいう腎臓の機能も含みますが、もっと広く、成長、発育、生殖など生命の根源的な働きを指しています。その機能はいろいろとあり、その一つに「腎は骨を主り、髄を生じる」という働きがあります。年をとると腎の働きが衰えて(腎虚)きます。腎虚になると骨がもろくなる、歯がグラグラする、足腰がだるくなるなどの症状が現われてきます。骨砕補植物には補腎壮骨(腎を補い、骨を丈夫にする)の作用があり、骨密度を高めるのにも役立ちます。ただし「骨砕補植物」でなかなか改善しないという場合には、補腎生薬と一緒に食べていただくと効果が高まります。加齢とともにすり減ってくる軟骨の再生にも有効です。

大浦 実際、当社では先生が作られた漢方系食品を40種類ほど扱わさせていただいていますが、その中で最もよく売れているのは「骨砕補植物」です。骨粗鬆症や変形性関節症は「骨砕補植物」だけでも改善に役立ちますが、なかには効果がハッキリと現われないことがあります。こういう場合に補腎生薬を併用すれば効果が期待できるということですね。

董和 はい。先ほども説明しましたが、「腎は骨を主り、髄を生じる」働きがあるわけですから、「骨砕補植物」に補腎生薬をプラスしていただくことが理想的な改善策となるのです。つまり、陰虚型には「亀板などの生薬」を、そして陽虚型には「鹿茸などの生薬」を加えていただくのです。
陰虚型、陽虚型については次回に詳しく説明したいと思います。

化膿性炎症・歯周病

大浦 では、化膿性炎症と慢性歯周病の対策について説明をしていただけませんか。

董和 急性化膿性炎症と急性歯周病には、前回に説明しました「苦草(にがくさ)植物」をお勧めします。
一方、慢性の炎症に対しては「苦草植物」に補腎作用のある「鹿茸などの生薬」などを一緒に食べていただきます。

大浦 「苦草植物」は抗生物質が適応する病気全般に使わせていただいていますが、じつによく効く漢方系食品だと思います。しかも抗生物質のような副作用がないので安心して使えます。しかも適応するタイミングにぴったり合うと、それこそ直ぐに効くので、食べられた方がびっくりされます。素晴らしい食品ですね。

董和 ありがとうございます。ただ、急性の化膿性の炎症には「苦草植物」だけでいいですが、慢性の場合は補腎生薬を併用していただかないと、十分な効果は現われません。

頻尿・尿漏れ

大浦 では、最後に頻尿や尿漏れの対策についてお願いします。

董和 頻尿に対しては慢性下痢にも役立つ「浪花茨(なにわいばら)植物の果実」を用います。
漢方では、「腎は二陰(大便と小便) を主る」といわれ、下痢と頻尿の治療には腎を補います。また漢方では、頻尿や尿漏れは腎気不固の状態と捉えています。腎気不固とは、腎と膀胱の固摂(引き締めて固める)作用が低下することで、これにより頻尿や尿漏れ、多尿、遺尿などが起こるというのです。「浪花茨植物」に配合されている浪花茨の果実や桑螵蛸、山茱萸などには、補腎と固摂を高める作用があります。ただ、これで改善しない場合には補腎生薬を併用します。

大浦 下痢と頻尿の治療が同じであるというのも漢方のおもしろさですね。排泄口はどちらも下半身にあって、前から出るか、後ろから出るかの違いです。そういえば、漢方では水様便が出る時に利尿剤を使って、大便に過剰に出ている水分を小便に出す治療が行なわれることがありますね。

董和 確かに、あります。

大浦 今回取り上げていただいた病気は慢性病の一部ですが、他の慢性病についても同じような考え方で対応すればいいのですね。次回には慢性病と腎虚の関係について、中医学的な考え方を教えていただきたいと思います。

(つづく)   戻る