〈新春対談〉董和先生に聴く

“熊柳三兄弟”のはなし(Ⅰ)
                              聞き手・(株)人間医学社 大浦純孝 社長


大浦 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

董和 おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

大浦 さて、本年最初に取り上げたいと思いますのは、先生が新しく創られた「熊柳と温熱性の生薬」や「熊柳と寒涼性の生薬」、そして既にこの対談コーナーで何度か取り上げさせていただきました「熊柳などの生薬」についてです。

董和 この三つの製品は、今後は病気の治療における体質改善策の一つという位置付けで考えています。漢方治療には、それぞれの病症に対して行なう標治法(対症療法)と、体質改善ともいうべき本治法(根本治療)とがあります。この三つの製品は、まさに根治療法に用いていただくために考案したものです。


根治療法が大切

大浦 慢性病では、さまざまな場面で、さまざまな症状が出てきます。そういった個々の症状に対応するものを使って症状を改善するとともに、体質改善を同時に図っていかなければ、また同じような症状が現われたり、あるいは別の症状が出てくるわけですね。そういった観点から今回、根治療法に役立つものを開発されたわけですね。

董和 そうです。たとえば、高血圧症を例にとってみても、病名といいますか病症から類推して、交感神経の興奮を鎮める働きのある「羅布麻などの生薬」をお勧めするわけですが、それだけでは解決しないことがあります。

大浦 たしかに、そういう方は多くおられます。

董和 こういった場合、その人の体質に問題があるとすれば、それを改善するものを合わせることによって解決に導くことができるわけです。たとえば、陰虚(手足のほてりや皮膚の乾燥など)があれば「亀板などの生薬」を、肝陽上亢(頭痛やめまいなど)があれば「かぎかずらなどの生薬」を併用していただくことによって、体質改善がなされ恒常的に血圧が安定していくと考えられます。

大浦 体質というものは遺伝的なものもあるでしょうが、生後の環境とか食習慣なども大きく影響しているのでしょうね。

董和 そうです。たとえば、湿度の高い日本では湿邪が人々の体内にたまり、陽気(生命の火)に悪影響を及ぼします。

大浦 そのような場合、漢方ではどのように捉えるのですか。

董和 漢方には「万病の根源は陽気不足にある」という考えがあり、陽気を高めることを第一に考えます。また、陽気は脾胃(消化器系)から産生されるものです。ですから「万病の根源は脾胃にある」と言い換えることもできます。


冷えが万病のもと

大浦 以前、漢方においては慢性病の治療は、脾胃、つまり胃腸の働きを高めることを基本にするということを先生に教えてもらいました。じっさい食養生によって多くの慢性病が改善することからいっても、この漢方の考え方は的を射ているわけですね。
ところで、日本では最近「冷えが万病のもと」という考えが流行っていますが、この“冷え”は陽気と関係するわけですね。

董和 はい。陽気というものは体を温める作用があり、陽気が旺盛になれば病気に対する抵抗力が強く、病気の回復もより早くなるわけです。
たとえば、中国の最古の医学書とされる『黄帝内経・霊枢』にこんな話が書かれています。
現代語に訳しますと、
 ・ 黄帝の質問……人が病気になった時、または数人が同時に発病した場合、治りが早い人もいれば、治りにくい人もいる。これはどうしてか。

 ・ 少愈(人の氏名)の答え……人が同じ病気になった場合に、体が温かいと治りやすいが、体が冷えていると治りにくいからです。

という問答です。
また『温疫論・四損不可正治』という書物には、「平素から陽気不足の人は病気が悪化しやすく、陽気の旺盛な人は病気が回復しやすい」と書かれています。

大浦 体温が高い人ほどリンパ球の数が多いということですから、基礎体温の高い人は免疫力が高いことになります。つまり、体温が高くてリンパ球が多い人は細菌やウイルスなどが体に入ってきても、それを速やかに排除でき、少しのことでは病気にかからないわけで、かかってもすぐに治るということになりますね。

董和 はい。現代医学の方でも、体温が1度上がると免疫力が五~六倍に上がり、自然治癒力も高まると考えています。東西の医学にこのような共通した認識があることから、この度、陽気を補うことを主な目的とした「熊柳と温熱性の生薬」と「熊柳と寒涼性の生薬」を開発しようと思いました。


熊柳三兄弟

大浦 そうすると、体質改善用としてつられたということであれば、あまり細かく証を考えなくてもいいということですか。

董和 ええ、ごく単純に寒がり体質の人には「熊柳と温熱性の生薬」を、暑がり体質の人には「熊柳と寒涼性の生薬」を、と考えていただいていいと思います。

大浦 それはわかりやすいですね。先生の製品は、漢方独特の考え方からつくられたものが多くて、一般の人が何を選ぼうかという時に難しいものもあります。この二つは簡単に寒がりか、暑がりかで選べばよいということになるわけですか。

董和 そうです。今回、私は陽気(生命の火)というものの重要性に着目しました。陽気を上昇させる方法で正気(体がもっている自然環境の変化に対する調節能力と病症に対する防衛能力)を補い、体質を改善することによって万病を退治することを考えました。そこで、補気(気を補う)作用の強い熊柳とお種人参、それに水分代謝を改善する蚕砂(さんしゃ)と蜜柑の皮の四種類の生薬を主成分にして組み合わせました。

大浦 先生は、「熊柳などの生薬」も含めた三種類の製品を“熊柳三兄弟” と名付けておられますね。いずれも熊柳、お種人参、蜜柑の皮の三つの生薬を共通して含有しており、しかも、それらが主成分になっていることから命名されたわけですね。でもまあ、熊柳三兄弟とはなんとも愛嬌があって、良いネーミングを付けられたと感心しています。

董和 ありがとうございます。脾胃は五行説からいえば「土」に相当します。土は万物を産生しますが、いわば良いもの(元気がいいもの)も、悪いもの(弱ったもの)もつくる可能性があります。しかし、この土が元気になれば、良いものをつくってくれるのです。
漢方では、病気の予防や治療、健康回復、さらに日常生活の中での健康維持や養生などに、陽気は重要な役割があると考えています。「一日に陽気があれば一日を生かす。陽気が消えると人は死ぬ」という考えがあるように、生命は陽気(火)がなければ生きられない、というのが漢方の考え方なのです。また、発病機序に関しても「邪のあつまる所、必ず正気に虚がある」とか「正気が内にあれば、邪は何も出来ない」という言葉があるように、正気・陽気が充実していれば病気は起こりにくいのです。


寒がり体質・暑がり体質

大浦 たとえば、ウイルスが蔓延していても、正気・陽気が充実していれば病気は起こらないというのは、感染症などではしばしば経験されることです。ウイルスという外邪があるというだけでは病気が成立するとは限らないわけです。しかし、逆に免疫力が弱っていると、普段は悪さをしない常在菌が異常に増殖して病気を引き起こすこともあります(日和見感染)。こうした現象を漢方では昔からわかっていたわけですね。

董和 漢方では病気の素因を次のように考えています。つまり、病気は臓腑組織の機能が低下することによって外邪が侵入してくることとか、体内で生じた邪を排除する働きが低下したために外邪の侵入を許したために起こると考えています。こうして引き起こされた病邪は、体質によって化寒(冷えに変わる)化熱(熱に変わる)化湿(水毒に変わる)化燥(乾燥に変わる)化毒(炎症・化膿に変わる)したりするわけです。
このうち、化寒に対応するものとして「熊柳と温熱性の生薬」を、そして化熱ならびに化毒に対応するものとして「熊柳と寒涼性の生薬」を創りました。

大浦 今、言われた「体内で生じた邪を排除する働きが低下したことによって外邪の侵入を許す」というのは、現代医学に欠けている考え方ではないかと思います。たとえば、現代人はよく水を摂りますね。高齢者の方も血栓を予防しましょうということで、しばしば寝る前に水を積極的に摂るよう、お医者さんからアドバイスを受けることが多いようです。現代の医学で不満に思うことの一つは、患者を診ずに、一律に一つの方法を押しつけるところにあります。だれもかれも水が大量に必要ではないはずです。

董和 そう思います。じっさい調子が悪いといってくるお年寄りの舌を見ると、水分がたまり過ぎている人がとても多いように思います。「脾は湿を悪(にく)む」といいますが、水分を取り過ぎて、それがうまく排泄されなければ、脾を傷めることになります。

大浦 こうした点もふまえて、次回には実際に「熊柳と温熱性の生薬」と「熊柳と寒涼性の生薬」のそれぞれの使い方について教えていただきたいと思います。

(つづく)  戻る