董和先生に聴く
羊プラセンタについて(中)

聞き手・(株)人間医学社 大浦純孝 社長


大浦
 前回は「羊胎盤などの生薬」が美肌に効果があるという話をしていただきましたが、今回は現在もっとも多く利用されている不妊症について説明をお願いしたいと思います。

不妊症の周期療法

董和 漢方には不妊症に対して周期療法というものがあります。これは月経周期を「月経期」「低温期(卵胞期)」「排卵期」「高温期(黄体期)」の四つの時期に分けて、それぞれの期間に合った漢方薬を使っていく方法です。

大浦 細かく分かれているので、実行するのが大変なような気がしますが…。

董和 理想的には、このように月経周期に合わせてやっていくのがいいのですが、この方法だと確かに繁雑で、実際に続けていくのは難しいところがあります。そこで、私どもでは不妊症の方に対してもっと簡単な周期療法をお勧めしています。

大浦 それはどのような方法でしょうか。

董和 月経周期を次の二つに分けて、それぞれに合った食品を食べるという方法です。
    ①生理期間から高温期までは「野牡丹などの生薬」を食べる。
    ②生理期間以外の日には「羊胎盤などの生薬」を食べる。
これは、とても簡単でなおかつ有効であると考えています。

大浦 生理が始まったときから高温期がくるまでは「野牡丹などの生薬」を食べ続け、生理期間以外の時は「羊胎盤などの生薬」を食べるとよいということですか。つまり「野牡丹などの生薬」と「羊胎盤などの生薬」の両方を周期に応じて使い分けるわけですね。

董和 ええ。月経期に子宮の血液がきれいに排出されないと瘀血になり、せっかく受精した卵子が着床できなかったり、着床しても育ちにくかったりします。また流産をくり返す原因にもなります。さらに低温期は卵胞の発育を促進し、卵子の質を高める時期です。この時期は補腎精(生命のエネルギーを補う)のものが必要になります。
そこで羊の胎盤や鹿角、管花肉蓯蓉といった補腎精の生薬を組み合わせた「羊胎盤などの生薬」が勧められます。

大浦 ちょっと待ってください。先ほど①生理期間から高温期間までは「野牡丹などの生薬」、②生理期間以外は「羊胎盤などの生薬」と説明されましたが、低温期は生理期の後にきて、その後に排卵期、高温期と移行していきますから、低温期は先の分類からいえば①に入りますね。①に入るなら「野牡丹などの生薬」ではないでしょうか。

董和 これには少し説明が必要です。先ほど説明しました周期療法は、具体的には生理期から排卵期までは「野牡丹などの生薬」を使い、低温期から次の生理が来る日までは「羊胎盤などの生薬」を使うというものです。したがって、低温期と排卵期には「野牡丹などの生薬」と「羊胎盤などの生薬」の両方を用いることになります。

大浦 そういうことですか。よくわかりました。注意すべきは、生理期には「羊胎盤などの生薬」を使わないようにし、高温期には「野牡丹などの生薬」を使わないようにすればよいというわけですね。

董和 「羊胎盤などの生薬」というのは、いわば締める働きがありますから、生理の時に用いると、瘀血がきれいに除去できません。そのため受精卵子が着床しても、瘀血が邪魔して、赤ちゃんが生育できないことにもなりかねません。また、「野牡丹などの生薬」に組み合わせている野ぼたんや田七人参、シャチュウ、カザンコウといった生薬は、瘀血を下ろす働きがあるので、高温期には避けます。何より妊娠したばかりのときは、最も受精卵が流されやすい時期だからです。こういう時期に活血剤(瘀血を下ろす働きがある薬剤)を使うと流産しやすいので、中国では一切使わないように注意されています。


羊胎盤などの生薬で妊娠

大浦 周期療法については今のお話でよく分かりましたが、現実には単独で使われて妊娠された例もあると聞いています。その例をご紹介いただけますか。

董和 はい。良い症例がありますから紹介したいと思います。これは和歌山の薬局の先生からいただいた症例です。
患者さんは31歳の女性で、結婚して五年経ちますが一度も妊娠したことがなかったそうです。この女性は、これまで和歌山の不妊治療で有名な婦人科医院で三年、その後は、大阪の不妊治療の病院で治療中とのことでした。体外受精はすでに一度行なっており、次回は二ヵ月後を予定しているとのことでした。病院では、妊娠できない原因は卵巣の働きが悪いからと診断されました。子宮内膜症の手術で卵巣の細胞を取ったために卵子ができにくく、また卵巣の機能が実年齢より衰えていて、四十歳代の女性の卵巣だと言われたそうです。
この相談を受けた薬局の先生は、この方には「羊胎盤などの生薬」が必要だと思われ、それ以外には、お種人参とクロレラ製品を併用してもらったようです。その結果、くだんの女性はすぐに妊娠され、予定していた体外受精もキャンセルして、以後、順調に経過しているとの報告でした。

大浦 それは良かったですね。この女性には「野牡丹などの生薬」は使わずに、「羊胎盤などの生薬」だけで成功したといってもいいですね。

董和 ええ。子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣の腫れなどがあれば「野牡丹などの生薬」が必要となります。しかし、この方のように単なる卵巣の働きが悪い、あるいは弱いだけなら「羊胎盤などの生薬」だけでも妊娠には役立つことが、この症例で証明できたと思います。漢方では、卵巣の働きが弱い場合には腎精(生命エネルギーの源)不足、または腎虚不妊(腎精不足による不妊)の証だと捉えています。その点、「羊胎盤などの生薬」は大補腎精の性質があり、腎虚不妊の方にとても良い食品と考えています。


腎虚の不妊

大浦 現代医学においても、最近では「DHEAアンチエイジング療法」という不妊治療が注目されているようですが、これも受精能力の高い卵ができるようにし、また妊娠に必要な性ホルモンの体内合成を促進させる作用も合わせ持っているとのことです。
先ほどの女性は医学的には低反応卵巣と呼ばれるものではないでしょうか。低反応卵巣に対してDHEAアンチエイジング療法は、DHEAというホルモンの投与で卵巣機能が向上し、妊娠に必要な性ホルモンの分泌量が自然と増え、妊娠しやすい体内環境が整うことが明らかにされ、アメリカなどでは画期的な不妊療法として注目されているそうです。しかし、漢方ではすでに腎虚不妊として、このことは分かっていたわけですね。
  
 *低反応卵巣
卵巣が排卵誘発剤に反応しない状態を指す。その治療は難しくて、妊娠は困難とされてきた。成熟卵ができなければ、人工授精も体外受精もできないからだ。

董和 そうですね。腎虚不妊とは体力低下による生理遅延や、生理の量が少ない、または生理が来ない、貧血、腰がだるいなど「腎虚証」がみられる人の不妊を意味します。この腎虚不妊の人には卵巣機能低下や、卵子の発育に問題がありますから、補腎薬の成分を多く含んだ「羊胎盤などの生薬」が適していると考えています。

大浦 補腎薬の成分については次回にお話をうかがいたいと思います。また、不妊の問題は女性側だけでなく、男性側の問題もありますから、その点についてもお願いいたします。
(つづく)    戻る