董和先生に聴く

子宝相談()
                                               聞き手・大浦 純孝社長

大浦 前回は、子宮機能の低下による不妊には「野牡丹植物」を摂り、卵巣機能の低下による不妊には「羊プラセンタ」を中心にした漢方食品を食べるという方法を教えていただきました。今回は、一人目は生まれたが二人目がなかなかできないという方や、四十歳代で子どもが欲しいという方、さらに男性不妊についての子宝相談について教えていただきたいと思います。まず、二人目が欲しいがなかなかできないという方に何か良い対策法はありませんか。

董和 私は昨年の末より薬局の先生から、三名の女性の子宝相談を受けています。

年齢は32歳、41歳、45歳の方で、三名とも二人目が欲しい、といって相談に来られたそうです。

32歳の方は、長女が現在4歳で、二人目が欲しいのだけれどなかなか妊娠できないということです。生理の周期は正常で、生理痛もありません。ただ、三年前に原因不明の出血が一回あったそうです。

大浦 そのような場合にも「野牡丹植物」と「羊プラセンタ」の二種類を勧められたのですか。

董和 ええ。この方の舌には苔がたくさんあり、三年前に不正出血があったことから、妊娠できない原因は主に子宮に問題があると判断しました。「野牡丹植物」は毎月の生理が来た日から約十四日間(低温期)食べ、それ以後(高温期)は、次の生理が来るまでは食べない。「羊プラセンタ」は生理と関係なく毎日食べ続けるように勧めました。

大浦 食べ始めてからそれほど期間が経っていないとは思いますが、効果はどうですか。

董和 まだ妊娠はされていませんが、ご本人は肌の艶が良くなったとたいへん喜ばれています。このまま続けていただいたら妊娠されると思います。


四十歳代の不妊

大浦 41歳の女性はどのような状態の方だったのですか。

董和 この方も、長女が4歳で、二人目が欲しいのだけれどできないということです。生理の周期は正常で、生理痛や子宮筋腫、子宮内膜症、流産の経験もありません。

ただ、生理前になると少し頭痛があるそうです。貧血気味で顔色が悪く、肌に艶が少なく、いつも手は冷たい、と言われています。

大浦 もう一人の45歳の方はどのような状況ですか。

董和 この女性は二人目が欲しくて、約二年前から病院で漢方薬による不妊治療を受けておられます。生理の周期は正常で、生理痛もありませんが、流産を二回経験されています。病院で排卵誘発剤を使ったそうですが、現在は使用されていません。排卵は普通にあり、病院では黄体機能不全と診断されたそうです。

大浦 このお二人にはどのような漢方食品を勧められたのでしょうか。

董和 40歳代のお二人には、「野牡丹植物」と「羊プラセンタ」の二種類に「蚕の成虫などの生薬」の漢方食品を合わせて食べるようにお勧めしました。


女性は七の倍数で歳をとる

大浦 32歳の方の治療と、40歳代のお二人の治療とは少し異なるようですが、これは漢方的にみて32歳と40歳代では、何らかの体内状況の変化があるとみなされるからでしょうか。

董和 そうです。まず体質が違いますね。40歳代の二人とも舌に苔が少なく、舌の肉の色にも赤みが少なく、舌全体の肉質が柔らかです。

大浦 漢方の見方では、それはどのように判断されるのですか。

董和 漢方の言葉で言えば、腎精不足ということです。以前にも説明したことがあると思いますが、中国最古の医学書とされる『黄帝内経』の「素問・上古天真論篇」には、女性は七年ごとに、男性は八年ごとに発育の段階がある、と記されています。

大浦 もう少し詳しく説明をお願いできますか。

董和 女性は七歳で腎気が旺盛になり、歯が生え替わり、髪が伸びます。十四歳になると天癸(生殖機能を促進させる働きがある物質)が成熟し、生理が始まり、生殖能力が備わってきます。21歳になると女性としての成熟期を迎え、最も妊娠に適した時期に入ります。そして身体機能、性機能とも最盛期を迎えるのが28歳です。これをピークとして、35歳以降は陽明脈(気血の力が旺盛な経絡)が衰えはじめるため、顔や頭髪などに老化が出はじめます。次いで42歳ごろから三陽脈(体表から体内の

深部までの気血の脈)が衰えだすので、顔のやつれや白髪や抜け毛が目立つようになります。そして49歳ごろから任脈が虚して、太衝脈が衰え、天癸が尽きて、血の道が通わなくなり(閉経)、形が壊れてくると記されています。

大浦 35歳を過ぎると女性ホルモンの分泌が少しずつ低下しはじめ、卵巣と子宮の働きにも緩やかな衰えが見えはじめるのですね。

董和 ええ。そして49歳ごろになると任脈・太衝脈(月経と関係の深い経絡)が衰え、やがて閉経し、妊娠能力がなくなってきます。


生殖年齢の若返り

大浦 昔から、女性は四十歳を過ぎると妊娠するのが難しいとされていたのですね。しかし、今は昔と比べて環境や生活、栄養など、全ての面で大きく違っているので、四十歳代でも妊娠、出産する女性が増えていますね。

董和 ええ。年齢とともに体が衰え、生殖能力が落ちていくことは自然な現象ですが、漢方では抗老衰作用のある補腎(生命力を補う)補血(血を増やす)の生薬を用いて“体内年齢”をある程度は遅らせることができます。

大浦 体内年齢というのは血管や内臓、骨などの体内機能の年齢のことですね。実際の年齢より体内年齢が上回る原因には、不規則な生活、偏った食生活、過度のストレス、睡眠や運動の不足、タバコなどがありますね。

董和 それ以外にも瘀血(血液の滞り)や水分不足、冷えなどが関係します。体内年齢が実年齢を上回ると、妊娠にも影響が及びます。しかし、不妊の原因に関してもっと重要なのは体内の生殖年齢の衰えです。

大浦 そうなんですか。では、生殖年齢の衰えを遅らせることはできるのですか。

董和 先ほど言ったように、漢方では女性の体は七の倍数の年齢ごとに変化し、35歳から体の衰えがはじまります。その原因は、腎の精血(生命活動を維持する栄養物質)が年齢とともに減少していくためです。

大浦 つまり、この腎の精血を増やせば生殖年齢の衰えを遅らせることができるのですね。

董和 はい。それに最も役立つのが「羊プラセンタ」です。これは腎の精血を増やし卵巣機能を強化する漢方食品で、生殖年齢の衰えを遅らせるのに役立ちます。


雄蚕蛾・海馬

大浦 腎の精血を増やすものとしては「羊プラセンタ」以外にもありますか。

董和 はい。四十歳代の女性の方には、「野牡丹植物」と「羊プラセンタ」の他に、生殖力を強化する蚕の成虫(雄蚕蛾)やタツノオトシゴ(海馬)などをお勧めします。

大浦 日本でも養蚕の盛んな地方では、昔は蚕の蛹を食べる習慣があったようで、今でも佃煮として販売されています。蚕の幼虫も食べていたという話もあるようですが、蚕の成虫については聞いたことがありません。中国では蚕の成虫を食べるのですか。

董和 中国では「蚕の蛹三個で鶏卵一個分の栄養がある」といわれ、蛹は貴重なタンパク源として食されています。蚕の成虫も唐や宋の時代から食用としての長い歴史があり、中国の皇室では古くから強壮剤として重宝されています。

大浦 成虫も栄養価が高いのですか。

董和 成虫の主な成分は、二十数種類のアミノ酸、脂肪酸、ビタミンB12などです。中国の古い薬物書『本草綱目』では、蚕の成虫を“神虫国宝”という言葉で賞賛しています。中国では蚕の成虫は単なる栄養剤ではなく、強精剤として男女を問わず古くから利用されています。

大浦 もう一つのタツノオトシゴは、卵と稚魚を育児嚢で保護する様から、日本各地では「安産のお守り」として干物を妊婦に持たせる風習があります。

董和 タツノオトシゴも有名な漢方の補腎薬(腎機能を強化する薬)の一つで、中国では男性の滋養強壮剤として疲労回復やED(勃起不能障害)、精力減退などに用いられています。女性の子宮の発育不良による不妊や不感症などにも効果があるとされています。


生殖年齢を延ばす

大浦 蚕の成虫とタツノオトシゴの他に、生殖年齢の衰えを遅らせるのに役立つ生薬はあるのでしょうか。

董和 はい。羊睾丸や管花肉蓯蓉、お種人参、鹿茸(鹿幼角)、鎖陽(オシャグジタケの全草)、黄精(ナルコユリの根茎)などが役立ちます。これらは男女を問わず、生殖年齢の衰えを遅らせるのに役立ちます。羊は体の割には大きな睾丸を持っており、繁殖力がとても強く、中国では羊睾丸は肉体疲労や精力減退によく使われています。

大浦 羊は胎盤だけでなく睾丸も不妊の方に役立つのですね。管花肉蓯蓉は“砂漠人参”とも呼ばれている植物ですね。

董和 はい。これは肉蓯蓉の仲間で、砂漠に自生する多年性の植物です。補腎や強精、潤腸通便(腸を潤し、排便を促す)の働きがあり、インポテンツや遺精、不妊、足腰の衰え、便秘などに用いられます。お種人参や鹿茸、鎖陽、黄精は補血・強精に役立つ漢方生薬です。35歳以上の不妊の方には「野牡丹植物」と「羊プラセンタ」の他に、蚕の成虫やタツノオトシゴ、羊睾丸、管花肉蓯蓉、お種人参、鹿茸、鎖陽、黄精などを組み合わせた「蚕の成虫などの生薬」をお勧めします。


男性不妊

大浦 若い方の不妊には子宮強化薬の「野牡丹植物」と卵巣機能を高める「羊プラセンタ」だけで良いということですね。しかし、35歳以上、特に40歳代の方や二人目がなかなかできない方には、この二種類に「蚕の成虫などの生薬」を加えた方が良いということですね。この「蚕の成虫などの生薬」は男性不妊の方にも役立つように思うのですが、どうでしょうか。

董和 その通りです。男性不妊の方にも是非食べていただきたい漢方食品です。先ほどの41歳と45歳の不妊女性のご主人にも「蚕の成虫などの生薬」を食べていただくようにお勧めしました。

大浦 近年は、不妊の原因が男性側にもかなりあるとされていますね。あるデータでは女性が45%で、男性は40%とありました。残り15%は原因不明の不妊だそうです。男性不妊の主な原因として、無精子症、乏精子症、精子無力症、精子運動低下症などが挙げられています。

董和 漢方的には、これらはいずれも腎精不足のためですから、ご主人にも「蚕の成虫などの生薬」を食べていただくようお勧めします。妊娠は女性の卵子と男性の精子が結びついて成立するものですから、どちらに不備があっても妊娠できません。女性ばかりでなく男性も協力していかなければ不妊は解決しません。

大浦 その他、不妊には食生活も非常に大切ですね。

董和 はい。最近の若い人は、朝食をパン一枚とコーヒー一杯で済ませるとか、三食ともインスタント食品やコンビニ弁当で済ませるといったことが多いようです。このような食生活では、必須ミネラルやビタミン類が不足し、食品添加物が体内に蓄積したりして、生殖能力が低下します。食事は栄養バランスを考えて一日三食をしっかり摂るようにしてください。そして、子宮の血液の流れを改善する「野牡丹植物」と卵巣機能を強化する「羊プラセンタ」をお勧めします。また、35歳以上、特に40歳代の方にはさらに、生殖年齢の衰えを遅らせるのに役立つ「蚕の成虫などの生薬」を合わせて食べられることをお勧めします。そして同時に、ご主人も「蚕の成虫などの生薬」を食べ、夫婦ともに努力されれば良い結果を得られるはずです。

大浦 不妊の原因はさまざまですが、先生はそれを子宮血流の改善と卵巣機能の強化、さらには体内生殖年齢の若返りという非常に分かりやすい方法で解決できることを示されました。しかも「野牡丹植物」「羊プラセンタ」「蚕の成虫などの生薬」という三つの食品の成分で対応できることを教えていただきました。子宝相談で来られたら、是非、これらを勧めていきたいと思います。

本日はありがとうございました。

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