董和先生に聴く
私の健康食品

聞き手:大浦純孝 社長

大浦 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

董和 おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

大浦 先生は毎年、新しい健康食品を創られています。昨年も「芰草」「北葉」「麻実」「積雪草」「灯盞花」など、多くの健康食品が誕生しました。それぞれ会員の皆さんから好評を得ています。
ところで、先生は新しい健康食品を創られるとき、どのような理念あるいは考え方で創られるのか、その辺からうかがっていきたいと思います。といいますのも、先生が創られる製品は「平性食品」ということで、なによりも安全性を第一に考えておられることを確認したいからです。
私ども人間医学社が先生の製品を奨めているのも、この安全性にあります。有用性はもちろんですが、安全性について理論的にも実際的にも、考えつくして創られた製品は、残念ながら少ないのが実情です。そのため使いつづけると体に偏りが生じて、健康を損なうのではないかと危倶されるものが、市場には多々あります。
もちろん、ほとんどの製造業者の方は危険性の高いものを創ろうという気持ちなどありませんが、結果的には偏りをもったものがつくられてしまいます。
董和先生のように、薬草などがもつ性質(熱性、寒性、湿性、乾性など)についての深い知識をもって創っておられる方は、まずいないと思います。
そこで、この平性食品について、まだ読者の方々にも十分には理解していただいていないようですので、以前にもお話ししていただいたことがありますが、再度お願いしたいと思います。

漢方薬と西洋薬の違い

董和 健康食品は利用者の皆さんの健康を増進することはもちろんですが、大前提として副作用があってはなりません。漢方薬は患者さんの体質や症状などを、細かい漢方理論によって分類し、患者さんに最も合った処方を選びます。
しかし、これには長年の経験が必要で、漢方を勉強した人でなければ難しい。
一方、西洋薬は長く飲み続けると副作用があります。
そこで私は、そういう難しい知識はなくても、自分で症状と照らし合わせて簡単に選べ、しかも効果が確かで、副作用のないものを創ろうと心がけています。

大浦 漢方薬と西洋薬では、成り立ちも作り方も大きく違います。

董和 漢方薬と西洋薬の大きな違いは二つあると思います。

一つは、漢方薬は自然界に存在するものを用いますが、西洋薬は化学合成品だということです。西洋薬は病名がわかれば患者の体質など考慮しないで、同じ薬を投与することができます。それは、西洋医学は薬の偏性(寒、熱、補、瀉の性質)をまったく無視して、病名を根拠として行な
う治療だからです。したがって病名が不明の場合には治療効果は低いのです。

一方、漢方薬は病名を治療の根拠とするのではなく、患者の体質(虚、実、寒、熱)や症状を細かく見定め、これに薬の偏性(寒、熱、補、瀉の性質)を考え合わせ、患者と薬をうまく適合させることで治療効果を発揮するものです。ですから病名がわからなくても、原因が不明の場合でも、漢
方薬は用いることができます。

大浦 もう一つの大きな違いは副作用ですね。

董和 西洋医学の薬は化学合成品です。これは人体に対しては外来の異物、毒物ですから、さまざまな副作用をもたらします。別の障害を引き起こしたり、ひどい場合には死亡者も出るほどです。
漢方薬にも 副作用 はありますが、これは西洋薬とはまったく違う種類のものです。劇薬・毒薬を除いて、生薬の副作用はあくまでも薬の偏性(寒、熱、補、瀉の性質)を間違って用いたために、病気を悪化させたりするものをいいます。
例えば、風邪の場合、西洋医学ではほぼ同じ薬を投与しますが、漢方では、冷え性の鼻風邪には主に体を温める生薬を用い、熱性のノド風邪には体を冷やす生薬で対処し、体力が低下している人の虚人風邪には体力を補う薬と風邪薬を併用して治療するというふうに、治療方法がそれぞれに異なります。
つまり、同じ風邪という名の病気でも、それぞれの患者の体質(寒、熱、虚、実)に合わせて、処方を選んで行なわなければいけません。
こうした細かい点を考慮せず、ただ化学的な風邪薬を投与するという西洋医学では、どうしても副作用が起こりがちです。

大浦 もう少し、詳しく説明していただけませんか。

董和 漢方の治療法は患者さんの体質を分析し、それを改善することが治療の基本となります。主なものは次の四つです。
  
  ▼「寒者熱之」= 寒性体質の病気には体を温める治療法を。 
  ▼「熱者寒之」= 熱性体質の病気には体を冷やす治療法を。
  ▼「実者瀉之」= 病理反応が激しくて症状が強く現れている(実証)ときにはこれを抑える治療法を。
  ▼「虚者補之」= 体力の低下が著しく病理的に反応が鈍く、外見的に症状も緩和状態にある場合には、体力を補う治療法を。

このように漢方では、治療は患者の体質に応じて正しく行なわなければいけませんが、同じ患者でも病気によっては、寒、熱、虚、実の性質を二つ以上、または全て持っていることがありますから、区別はますます難しくなります。
患者の体質(寒、熱、虚、実)を詳しく分析し、これに熱性、寒性、補益、瀉実といった生薬の性質(偏性)を考慮し、その病気に効く生薬または処方を選んで治療する方法を、漢方では「弁証論治」といいます。これをまちがって逆に治療すれば、症状が悪化し、最悪の場合、死を招きかねないのです。

大浦 それがいわゆる漢方薬の副作用というわけですね。

董和 ええ。漢方薬は天然物ですが、どんな物でも寒、熱、補、瀉の性質を持っています。これを適切に使わなければなりません。
中国では漢方生薬について、昔から「凡薬皆有毒、凡薬皆殺人」(あらゆる生薬が毒を有する。あらゆる生薬が人を殺し得る)という言い伝えがあります。

大浦 有名な朝鮮人参なども、これを熱性体質の人に使いつづければ、その人を死なせてしまうこともありうるわけですね。
ところで、先生は新しい健康食品を創られるとき、私たちが聞いたこともないような珍しい生薬をよく使われますね。

董和 私は健康食品を創るとき動・植物を原材料とします。
ただ、動・植物の生薬を使いますが、それは漢方薬とは違いますし、もちろん西洋薬とも違い、安全性の高いものです。
私は漢方薬と同じように生薬を利用しますが、漢方薬のように弁証論治(寒、熱、虚、実の体質と薬の寒、熱、補、瀉の性質)を重視する方法は取りません。むしろ西洋薬と同じように、病名や症状から誰でも容易に選べるものを創ろうと心がけています。そういう意味では、新しいタイプの健康食品ということができると思います。原料は天然のものですから、副作用の心配もありません。
健康食品ですから、症状があればその回復を促しますし、病気がなくても健康維持におすすめできます。


「平性」が肝腎

大浦 では、先生が健康食品を創られるとき、考えの中心に置かれていることは、何でしょうか。

董和 それは一言でいえば「平性」(体を温めたり冷やしたりする作用がない)ということです。
先ほど、生薬には寒・熱・補・・瀉の性質があると言いました。私の健康食品はいろいろな生薬を組み合わせて創りますが、出来上がったものが、体を冷やしたり温めるなど、偏っていたのではいけません。あらゆる人に、長く使っていただくためには、いずれにも偏っていない「平性」でなければならないのです。
例えば、私たちが毎日食べているのはご飯です。ご飯は平性の食べ物ですからへどんな体質の方でも、安心して常食することができるのです。
私は生薬を健康食品に利用する際、漢方の複雑な弁証論治を用いることなく、このご飯のように、どんな体質の方でも利用できるようにということを念頭に置いて考えています。それには生薬の偏った性質を消して、全体として平性の食品に仕上げなくてはなりません。

大浦 もし、健康食品に寒・熱の偏りがあったら、用いる人の体質によっては副作用が出ることになるわけですね。

董和  ええ。そこで私は漢方の「相須・相悪・相畏・相殺・相使」といった生薬配合法の理論を参考にして、生薬の寒・熱・補・瀉の性質を平性に調整し、さらに生薬に含有されている成分を有効に利用できるように工夫しています。
こうして漢方の複雑な弁証論治を必要とせず、病名、症状が分かれば西洋薬と同じように簡単に使える健康食品を開発できたのです。

大浦 生薬を平性に調整する生薬配合法の理論について説明してください。 

董和 これには五つのやり方があります。

《相須》は、効能がよく似ている二つ生薬を配合したとき、互いに効能を増強する働きのことです。

《相悪》は、ある薬物が別の薬物に対して寒・熱または補・瀉の偏性を抑制する作用をいいます。

《相畏》は、生薬がお互いに悪い作用を消し、よい作用を増強することです。

《相殺》は、ある薬物が他の薬物の毒性を消すこと(解毒作用)です。

《相使》は、二つ以上の薬物を同時に使用したとき、治療の主薬となる生薬の効果を、補助となる生薬が高める働きをいいます。

大浦 その他に、健康食品の開発に当たって留意されていることはありますか。

董和 健康食品を開発する場合、原材料は必ず厚生労働省から「食品」として認めている生薬のみを使用しています。
まず劇薬・毒物の混入を避けること、これが安全な食品づくりで第一に心がけなければならないことです。
先ほど説明しましたように、使用する原材料(動・植物)の性質(寒・熱・補・瀉)や作用を詳しく究明し、生薬のお互いの作用を利用して偏性(副作用)を消し、寒・熱・補・瀉の作用をできるだけ平性にもってゆき、難しい場合は微温性、微涼性にまで調整します。
こうすることによって、生薬の有用な働きだけが利用でき、用いる人の体質を調べなくても、誰でも利用できる食品になります。

大浦  つまり、漢方生薬が「健康食品」へと変身するわけですね。

董和  このようにしてできた健康食品は、長期間にわたって食べても、体の寒・熱・虚・実のバランスを崩すことはなく、病気があってもなくても、どなたでも食べられる安全な食品なのです。
「平性食品」は安全だということを考えると、天然の動・植物(劇薬・毒薬は除く)は、先の言い伝えに倣っていえば、私は「凡薬皆無毒、凡薬皆益人、凡薬皆能食」(あらゆる生薬はみな無毒で、人々に有益であり、あらゆる人が食べることができる)といえると思います。

大浦  これからも非常に有効かつ安全な新しい健康食品が増えそうですね。 

董和  人間医学社の大浦社長をはじめ、多くの皆様のご協力のお陰で、私はこの七年近くの間にオリジナルの健康食品を三十種類ほど開発いたしました。これからも人類が長い歴史から学んだ病気と闘う薬食同源の貴重な経験や、動・植物を食品化するための組み合わせ方、また健康維持のお役に立つ話などを、ひとつひとつご紹介させていただきたいと思っています。