董和先生に聴く
紫霊芝など薬草のおはなし(上)
聞き手:大浦純孝


大浦 今年二回目の対談は紫霊芝の話が中心ということですが、紫霊芝については以前にもお話ししていただきました。C型慢性肝炎が十年、二十年と長く続いていると、やがて肝硬変、肝臓ガンに進行していきます。これをできるだけ遅らせる、あるいは肝硬変、肝臓ガンへの移行を防ぐために、紫霊芝などの薬草を利用されたということでしたね。

董和 私は、父の肝硬変の治療の有効処方を参考にして、紫霊芝や冬虫夏草菌糸体、田七人参十頭根をはじめ、白花蛇舌草、半枝蓮、山稜、山慈姑など、ガンの抑制に効果があるといわれるものを多く組み合わせました。

大浦 その後、これがいろいろな病気、症状に効果を発揮するということがわかってきました。

董和 私は平成十四年十一月の中庸会で「C型肝炎、肝臓癌に有効な薬」という題で話させていただきました。以来、大浦先生らにこれらの薬草をお勧めいただき、多くの方々に使ってもらったところ、肝臓の病気ばかりでなく各種の腫瘍やアトピー性皮膚炎、リウマチ、掌蹠膿疱症などにも効果が期待できることがわかってきました。


アトピー性皮膚炎


大浦  アトピーは免疫の過剰反応によるとされています。リウマチは免疫の過剰反応によるという説もあるし、反対に免疫力の低下で起こるという説もあります。紫霊芝などの薬草が免疫の過剰反応にも免疫力の低下にも効くというのは、どのように説明できるでしょうか。


董和  漢方では、免疫反応によって激しい炎症を起こしている場合は実証とみます。これには抗炎症、解毒作用のあるものを与えますが、これには免疫抑制作用があります。代わりに免疫力が低下しているときには滋養強壮作用のあるものを与えます。これは免疫力を高めます。紫霊芝についていえば、これはキノコの一種ですから免疫力を高めます。

ただ紫霊芝は、他の組み合わせるものによって免疫力を抑制したり、また高めたりします。例えば、紫霊芝に白花蛇舌草、山慈姑、半枝蓮、大青葉などの抗炎症、解毒作用のあるものを組み合わせれば、免疫抑制作用があります。一方、田七人参十頭根、冬虫夏草、黄精などの滋養強壮作用のあるものを組み合わせれば、免疫力が高まります。

大浦  紫霊芝の働きを一言でいえば、免疫調節作用ということになりますか。

董和  そうですね。ただ、アトピー性皮膚炎は炎症の激しいときと、比較的落ちついているときをくり返します。問題は炎症が激しいときですが、こういうときには大青葉、金銀花、石膏など清熱解毒作用のあるものを用いて免疫力を抑制します。

大浦  例えば昔の「山桃草の艶」のように、大青葉や金銀花などの植物を合わせて免疫の過剰反応を抑えるわけですね。

董和 ええ。大青葉、山梔子、金銀花のような清熱解毒の薬草を用いて体を冷やし、免疫の過剰反応を抑えます。

大浦 アトピーの患者の体質は敏感で、普通では反応しないようなものにまで反応してしまいます。そういう体質の本質的な改善に役立つのが紫霊芝ということですね。

董和  漢方では「正気」といいますが、免疫力、生命力の弱っている人は過敏になりやすく、病気にもかかりやすい。
正気が十分にある人は病気にかからないと考えています。
先に、激しい反応を起こしている人は実証といいましたが、実際は複雑で、表面的には過剰反応が起こっているようにみえても、体の中では正気が不足(虚)していることもあります。
ただ単に過剰反応だけが起こっているものなら、清熱解毒作用のあるものを与えれば良くなります。例えば、単なる湿疹、ジンマシンであれば、大青葉、金銀花などで良くなります。しかし、表面的な過剰反応に惑わされて、体の中は正気が不足しているのに清熱解毒のものを与えると逆効果になります。

大浦  見立てを間違うから治りにくいわけですね。

董和  漢方の先生で、アトピーの患者は温めなさいといわれる先生があります。体を温めると免疫力が上がります。
皮膚表面の炎症をみれば冷やしたほうがいいと考えられますが、体の中が弱っている場合はむしろ温めるべきなのです。

大浦  ステロイド剤を使っている人は体が冷えているといいます。以前に、先生はステロイドを使っている人は舌に冷えの症状が出ていると言われましたね。

董和  漢方では「腎陽虚」といいますが、舌の色がうすく、皮膚は黒っぽく、むくみもあり、体は冷えています。こういう人の反応は過剰とはいえません。
アトピーは炎症が激しくなったり緩やかになったりをくり返します。これは免疫が不安定なためです。炎症が激しいときは、過剰な反応を抑える必要があります。

大浦  それは紫霊芝や山桃草の艶みたいに、大青葉や金銀花など清熱解毒の薬草の量によって加減するわけですか。

董和 そうですが、炎症が激しいときは苦地胆のように、一時的に清熱解毒の生薬が必要です。

大浦 ジュクジュクして膿が出ているようなときでも苦地胆で良いでしょうか。

董和 結構です。それともう一つ、ヘビの抜け殻も効きます。漢方では、ヘビの抜け殻は解毒駆風作用が強いとされています。
ジュクジュクしてかゆみが強いときは、これが苦地胆と同じように効きます。かゆみが強いときは、苦地胆とヘビの抜け殻どちらを使っても良いですし、一時的には併用しても結構です。かゆみが治まったら止めてもよいです。

大浦  免疫力や体力の向上のために飲みつづけても良いのは、何でしょうか。

董和  霊芝、冬虫夏草、田七人参、山慈姑などは「平性」で、体を冷やす作用も温める作用もなく、それでいて滋養強壮作用があり、続けて飲むことによって免疫力や体力を高めるのに役立ちます。

大浦  これら多くの薬草と組み合わせた紫霊芝などの薬草は、長期にわたって飲んでも大丈夫ですね。

董和  ええ。これは「寒」と「熱」また「補」と「瀉」などのバランスを考えて、どちらにも偏らない「平性」になるように生薬の組み合せが考えられています。アトピー、肝臓疾患、各種腫瘍のほか、健康な人が病気予防のために飲まれても有用です。血行を良くし、体力をつけ、また解毒作用もあります。

大浦 ただ、値段が高いのが気になります。

董和 材料が天然のもので量が少ないため、どうしても高価になるのですが、症状が激しいときのみ(大体一ヵ月から、長くて二、三ヵ月)これを飲んで、以後、症状が和らいだら、似たような組み合せで価格の安いものがありますから、それに替えてよいと思います。

大浦 霊芝の胞子ですね。

董和  ええ。霊芝の胞子が主材ですが、ほかに冬虫夏草、田七人参十頭根などを組み合わせてあります。作用は少し弱いですが、症状の緩解期であれば十分コントロールは可能です。

大浦  どれくらいの期間、飲めばいいですか。

董和  顔や手足、背中などに赤み、かゆみがあり、一見してアトピーとわかる程度のものなら、目安は一年前後です。よほど重症のアトピーは別ですけど。

大浦  成人型アトピーにもよいですか。

董和  はい。成人型アトピーの患者はストレスに弱い人が多い。
これは体が弱いということで、体が強ければストレスに対応できるのです。

大浦 アトピーの人は、普通の人なら反応しないようなハウスダスト、食品添加物、農薬などに過敏に反応します。

董和 そういう体質(アトピー体質)を持っているのです。紫霊芝や冬虫夏草、田七人参などを続けていって体質が改善できれば、抗原があっても普通なら反応しないようになってきます。

アレルギー性喘息
大浦  漢方の治療というのは、そういうところを目指しているのですね。

董和 現代医学のように単に症状を抑えるだけでなく、体の偏りをなくし、体全体のバランスを整え、体質から改めていこうとするのが漢方的な治療です。体質が改善されれば、抗原があっても過敏には反応しなくなります。
例えば野牡丹科植物は、アレルギー性喘息や小児喘息に大変よく効きます。これはもともと胃腸に対する生薬ですが、アレルギーは脾胃(消化吸収機能)と密接な関わりがあります。これを飲みつづけた結果、発作が起こらなくなったという例はたくさんあります。気管支喘息や老人の喘息にも好評です。

大浦 そういう治り方が理想ですね。

董和 喘息は大きく二つに分けられると思います。一つは外原性喘息で、アレルギー性喘息のように外からの抗原に過敏に反応するために起こる喘息。もう一つは内原性喘息で、慢性気管支炎のように炎症の刺激によって起こる喘息です。
慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫などは、現代医学でも治療に手を焼きます。呼吸困難に対しては気管支拡張剤、痰には祛痰剤、喘息発作に対してはステロイド剤と、対症療法が中心です。
野牡丹科植物だけでこれらを治すのは難しいですが、咳や痰を緩和することは可能ですし、アレルギーがあればその改善にも役立ちます。こうして体質の改善が進み、免疫力、自然治癒力が高まってくれば症状の改善も期待できます。

大浦  この場合、野牡丹科植物と合わせて摂ると良いものは何でしょうか。

董和  まず、冬虫夏草です。これはキノコの一種ですが、心肺機能と腎機能を高める働きがあります。

大浦 慢性気管支炎に対しては、どのような組み合せがよいでしょうか。

董和 慢性気管支炎の患者は、まだそれほど免疫力は落ちていないと思われるので、野牡丹科植物を主として、ほかに症状に合わせて良いものを併用したらよいと思います。例えば、食欲がないというときは熊柳、人参、黄精、山薬などを合わせます。これは食欲不振、体力低下、免疫力低下などに大変良いものです。

大浦  熊柳という植物は食欲のない人に飲んでもらって、本当によく効くことを実感しています。

董和  これは食欲がないときのみ効いて、食欲が正常なときには作用しません。漢方の五行説では、「土」(脾)は「金」(肺)の母です(肺は脾の子)。生薬で補肺(呼吸機能を高める)のものはあまりありませんが、脾胃(消化吸収機能)を高めてやれば、子の肺が補われます。そういう意味で脾胃に良い熊柳などは、補肺にも有効なのです。

大浦 慢性閉塞性肺疾患(COPD)が増えつつありますが…。

董和 この病気は肺の血流が悪くなり、血中の酸素が不足してきます。これには野牡丹科植物と冬虫夏草、それに灯盞細辛などを合わせて用います。血中酸素が不足してくると、唇が紫色になる、舌が紫がかってくる、顔色がわるい、手の指先がふくらむ等の兆候が現われます。さらに進むと胸苦しさ、呼吸困難などが現われてきます。これには野牡丹科植物と灯盞細辛を合わせて用いると、肺への血流を良くするのに役立ちます。


肺炎、気管支炎

大浦  以前、血中酸素濃度が低いときは冬虫夏草が良いとお聞きしました。これを用いたら、確かに血中酸素濃度が上がってきますね。

董和  血中酸素濃度を高めるには二つの方法があると思います。一つは肺の機能を高め、肺で酸素が多く取り込めるようにすることです。この働きを高めるのに役立つのが冬虫夏草(ほかに心経、腎経にも働く)です。
もう一つは、血流を良くしてやれば酸素が多く運ばれ、血中酸素濃度が上がってきます。灯盞細辛は血管のつまりを解消し、血流を良くする働きがあり、これによって血中酸素濃度を高めるのに役立ちます。ですから、冬虫夏草と灯盞細辛では効く機序が違います。灯盞細辛にお種人参、田七人参、紅景天などを加えると、さらに肺機能が高くなります。
高齢の人は免疫力が低下してきて、慢性気管支炎、その他の慢性炎症を起こしやすくなりますが、咳がひどくなり黄色い痰が出るようなときは細菌感染を起こしています。
こういうとき病院では抗生物質が出されますが、腸内細菌が死滅して下痢を起こすなどの副作用があります。こういうときお奨めしたいのが苦地胆植物です。中国では化膿性炎症によく用いられるもので、先年のSARS(新型重症肺炎)のときには活躍しました。肺炎、肺膿瘍のほか、中耳炎、蓄膿症、歯周病などにも有効です。

大浦 年をとると、寝たきりの人などは誤嚥性肺炎を起こしますが、こういうときにも苦地胆はいいですか。

董和 そういう場合は、野牡丹科植物と合わせて用いるとよい。
肺炎だから咳や痰があります。咳には野牡丹科植物が最適です。それに黄色痰疾があるようなら苦地胆植物を加えるといいです。黄色い痰は肺熱を表しています。そういうときは唇が赤く、体も熱っぽいものですが、これは細菌感染によることが多いので、苦地胆などで鎮めてやります。

大浦 苦地胆には体を冷やす傾向があるのですか。

董和 少しあります。炎症は熱ですからこれを冷やす必要があります。ですから苦地胆は、アトピーでバイ菌による二次感染を起こし皮膚が腫れてジュクジュクしているようなときには必要な薬草です。

大浦 紫霊芝の話から少し逸れてしまいましたが、紫霊芝はずっと飲みつづけていても大丈夫ですか。

董和 大丈夫です。これは温・冷、どちらにも偏らないようにいろいろな生薬を組み合わせて用いますから、長く飲んでも大丈夫です。大青葉、半枝蓮、山稜、莪朮など抗炎症、解毒の生薬もありますが、紫霊芝、冬虫夏草菌糸体、田七人参十頭根、黄精など滋養強壮作用のあるものも多く含んでおり、全体として「平性」であり、むしろ長く飲みつづけることによって、より効果が現われてくるといえます。



注:ここの苦地胆は、別名苦草、または金瘡小草の植物です。菊科の苦地胆、別名地胆草、または地胆頭と呼ばれる植物ではありません。(董和)