董和先生に聴く
紫霊芝など薬草のおはなし(中)
聞き手:大浦純孝 社長


大浦  ガンの話に戻りますが、ガンは免疫力の低下が大きな原因です。紫霊芝には免疫力を高める作用があるといわれていますが、その他にもさまざまな生薬が組み合わされていますね。 

董和
 キノコ類は免疫力を高めるといわれ、ガンには霊芝をはじめアガリクス、メシマコブ、マイタケ、冬虫夏草などがよく使われます。しかし私は、進行ガンや末期ガンにキノコ類だけでは、良い結果は期待できないと思っています。
ガンが発生した人の体は正常なバランスが崩れており、免疫力を高めるためには多方面からの調整が必要だからです。
漢方的な見方ではガンは「正虚邪盛」の病気です。正虚とは体力低下、免疫力低下のことで、邪盛とはガンの浸潤や転移による臓器の損傷、炎症、血行不良、痛み、腹水などを指します。これらに対して、キノコ類だけで立ち向かうのは難しいと思います。また、現代医学のガンの治療は手術や抗ガン剤、放射線ですが、これらは免疫力をさらに低下させ、体調をますます悪化させ、貧血や食欲不振なども生じます。

大浦 でも、霊芝をほかの生薬類と併用すれば、大きな力を発揮できるわけですね。

董和
 ええ。滋養強壮のもの、抗炎症・解毒作用のあるもの、また悪血を除いたり痛みを止めたり、食欲を増進するなど、いろいろな働きのあるものを組み合わせて用いれば、体調を整え、免疫力を高め、ガンにでも対応できるのではないか、そう考えて研究してきました。


免疫力を高める

大浦 具体的には、紫霊芝にどのような生薬を組み合わせるのでしょうか。

董和 まず、不足している正気を補う(補虚)ために、冬虫夏草や田七人参十頭根、黄精などを加えています。特に冬虫夏草は古くから不老不死の妙薬といわれ、健康に良いキノコとして崇められており、免疫力の増強に役立ちます。

大浦
 免疫力を高めるには胃腸の働きを高めることも大切ですね。

董和
 山稜、ガジュツ、ウコン、青皮などは、紫霊芝、田七人参とともに胃腸の気のめぐりを良くし、悪血を下ろすので、脾胃(消化吸収機能)の働きを向上させる目的で加えています。
漢方では、腎を「先天の本」というのに対して、脾胃を「後天の本」といいます。前者は生まれながらにして持っている生命力、免疫力を指しますが、私たちが生まれでた後は自ら産出した「気血」によって体を保っていかなければなりません。その本とのなるのが脾胃です。
現代医学でいう免疫力は、漢方では脾胃の「気血」の範疇にあると、私は考えています。ですから、脾胃から産生される「気血」は免疫力ともいえ、慢性病の克服やガンの治療に大切な「免疫の本」ともいえると思います。


大浦 これらのものを飲んで、たまに軽いお腹の痛みや下痢をすることがあるようです。私も四年間で二人、そういう人に会いました。

董和
 ごくたまにですが、あります。原因は宿便だと思います。
胃腸が弱っていると蠕動が起こりにくいです。これを動かそうとすると痛みが起こるようです。しかし一度宿便を出してしまえば、次からは下痢をするようなことはありません。
霊芝などは老廃物を排除し、消化器系をきれいにし、気のめぐりを良くして、免疫力を高めます。多くの人は紫霊芝のものを飲むと通じがよくなるはずです。


アトピー性皮膚炎
大浦
  霊芝は宿便除去に働いているのでしょうか。

董和
  宿便を取るだけなら大黄(だいおう)でも取れます。しかし、それだけでは良くなりません。大切なのは胃腸機能の回復です。そのために紫霊芝に冬虫夏草、田七人参、山稜、ガジュツ、ウコンなどを加えて用います。

大浦
  消化器系がきれいになれば腸管免疫が高まります。これはアトピーに対してはどうですか。

董和
  悪くはありませんが、反応が強く出ているときは紫霊芝、田七人参、冬虫夏草だけでは効き目が弱い。また山稜、ガジュツ、ウコン、青皮だけでもダメです。やはり大青葉、山慈姑、白花蛇舌草なども組み合わせて、総合的に用いるのでうまく行くのだと思います。

大浦
 皮膚には毒素の排泄器官としての働きもあります。

董和
 症状は皮膚に現われていますが、外からばかり治療していてもなかなか治りません。体の内から整え、胃腸の働きが正常になれば、皮膚の炎症は自然に治まってきます。それは宿便だけの問題ではありません。ただ、ジュクジュクしているようなときは熱を持っていますから、少し冷やすものが必要になります。それには苦地胆やヘビの皮などを併用します(前回参照)。

大浦
 体の中がきれいになれば皮膚の炎症も治まってくる道理ですね。

董和
 皮膚の炎症が激しいときは少し攻めの治療になりますが、そうでないときは紫霊芝のものだけでも対処できます。ある薬局には、五歳の子どもさんのアトピーが紫霊芝のものだけできれいに治りましたといって、お母さんがわざわざお礼に来られたということです。

大浦
 皮膚がカサカサしている場合はどうすればよいでしょうか。

董和 これも免疫力が低下している現われです。紫霊芝を続けるとともに、スッポンやカメの甲羅を合わせるとゼラチンが補給されて、肌に潤いが出てきます。


「邪盛」を抑える
大浦 話が少し反れましたが、ガンの治療には一方で、先の「邪盛」と闘うものも組み合わせてあるわけですね。

董和 そうです。ガンなどでは邪盛、すなわち病邪の勢いが盛んですから、これを抑えるものも必要です。中国には昔から、ガンと闘うのに役立つといわれる薬草がいろいろとあります。その中から毒性がなく抗ガン・解毒作用のあるものとして山慈姑、白花蛇舌草、半枝蓮などを駆邪(病邪を駆除する)の目的で利用します。

大浦  それぞれの薬草を簡単に説明してください。

董和  山慈姑はユリ科の植物で、球根を薬用にします。清熱解毒(熱を取り毒を下ろす)消腫(腫れ物を散らす)軟堅散結(堅い所を軟らかくする)などの働きがあり、腫れ物に良い薬草で、食道ガン、乳ガン、リンパ肉腫などへの臨床応用も研究されています。
白花蛇舌草も半枝蓮も清熱解毒、利尿の薬草に属し、最近、胃ガン、食道ガン、肺ガン、白血病などに対して、ある程度の効果があることが報じられています。こうした清熱解毒の薬草は、ガンによる炎症や体力低下による感染症にも対応できます。


食欲の増進を図る

大浦  慢性病やガンが長くなると、たいてい食欲が低下してきます。こういうときは熊柳を合わせたほうがよいですか。

董和  ええ。ガンや慢性病でも食欲があれば治りやすいといえます。食欲がないと苦労します。特に抗ガン剤の治療では食欲が低下しますから、難しくなります。私は食欲の増進には熊柳を併用します。これはクロウメモドキ科の植物で、ルチンが豊富に含まれ、抗酸化、止血、血管保護などの作用が知られています。

大浦  紫霊芝だけでは食欲は出ませんか。

董和  消化不良くらいならいいですが、体が非常に弱っているようなときは難しいと思います。

大浦  そういうときは熊柳のものと合わせて用いると良い?

董和 ただ熊柳だけでなく人参、山薬、大棗などと合わせて滋養強壮剤として用いますから、体力の弱った人にも食欲増進効果が期待できます。

大浦 それと熊柳は花粉症やアレルギー性鼻炎にもいいですね。これを飲むと体温が上がってくる人が多いですが、花粉症は肺の冷えと関係がありますか。

董和 現代医学ではIgE抗体の高値が関わっているといわれますが、漢方的には花粉症は肺と脾胃の「気」の不足とみます。熊柳は補脾胃(脾胃の機能を高める)の植物です。脾胃の機能が高まれば、五行説の相生関係により肺(脾の子)の働きも高まります。

大浦 熊柳で体温が上がる理由は?

董和 血行が良くなることが大きいと思います。人参だけでも体温が上がることがありますが、熊柳ほどではない。
これらに九香虫を加えますが、これは補陽気の作用が強く、気のめぐりを良くし、体を温める働きが優れています。体が温まるのは気の働きも大きいのです。くしゃみ、鼻水などのときは即効性があります。

大浦  今のガンの治療では免疫力の向上のほか、血管新生の阻止、アポトーシスの誘導などが大きな柱として考えられていますが、紫霊芝にはこうした働きは期待できますか。

董和  漢方では、体の生理的な働きの邪魔になるものは悪血と考えており、新生血管も悪血(古血)に属します。これを改善するには血行を良くすることが大切です。その働きをするのが田七人参、山稜、ガジュツ、ウコンなどです。


痛みを鎮める
大浦 ガンの闘病で、特に苦しいのは痛みです。これに対する対策は?


董和 痛みがあると、患者は精神的にも肉体的にも苦痛が大きく、体力を消耗し、食欲が低下し、免疫力も低下します。この痛みに対して良い薬草があります。それはツボクサです。セリ科の植物で、別名を積雪草ともいいます。これに田七人参、真珠などを併用しますと鎮痛効果はさらに高まります。副作用はありません。

大浦 中国では良い結果が出ているそうですね。

董和 中国・湖南省の大学病院で、私の大学院時代の同級生の曹教授(腫瘍科科長)に依頼して、ガン患者の痛みにどれくらい効果があるかを調べてもらいました。結果は非常に良好でした。ある患者など、モルヒネを多量に使っていたのに、これだけでほとんど痛みがなくなったということでした。ツボクサには痛みの緩和のほか、抗炎症、解毒の働きもあるので、悪性腫瘍にはよいと思います。

大浦 ツボクサはガン以外の痛みに対してはどうですか。

董和 ほかの痛みに対しても役立ちます。たとえば、歯痛(歯周病)、胃・十二指腸潰瘍の痛みや、腹痛(急性胃腸炎)、虫垂炎、胆石、胆嚢炎、乳腺炎、生理痛、関節炎、腰痛、神経痛、痛風、皮膚の腫れ物の痛み、また原因不明の痛みにも用いることができます。化膿性の炎症に対しては痛みを抑えるだけでなく、化膿止め、炎症止めの効果もあります。

大浦  こうみてきますと、紫霊芝は実に多くの生薬と組み合わせられているわけですね。

董和  滋養強壮のもの、免疫力を高めるもの、血行を良くするもの、食欲を増進させるもの、それに痛みを和らげるもの、こうしたさまざまな生薬の相乗作用によって、難病とされるガンでも症状の緩和、改善に対して立ち向かうことができると思っています。

大浦 紫霊芝はまた、リウマチ、掌蹠膿疱症など難しい病気にも良いということですが、これについては次回に。