董和先生に聴く
「痛み」の対策(上)
聞き手:大浦純孝 社長


大浦 今回は痛みについておうかがいしたいと思いますいろいろな痛みがありますが、年をとると多くなるのが頸椎や腰椎の変形による痛みです。これらに対して骨砕補植物を用いてもらっていますが、効果が高く、好評です。

董和  年をとるにつれて軟骨が減ったり、関節周辺の筋肉靱帯が弱って間接が不安定になってきます。骨棘といって骨がトゲのように増殖してくることもあります。これはちょうど、石垣を積み上げるとき、大きな石の間に小さな石を入れると、石垣が安定するのと似ていますが、骨棘は関節の滑膜など周辺の組織を刺激し、炎症を起こします。そのため膝に水がたまったりします。


変形性関節症

大浦 これらの痛みに対して、骨砕補植物はどのように効くのでしょうか。

董和 その機序はよく分かりません。骨砕補植物はウラボシ科の植物で、中国南部の木の上に寄生している植物です。
これには、補腎(生命力を高める)活血(血の流れを良くする)止痛(痛みを止める)の働きがあるとされ、中国では昔から腰痛、捻挫、打撲、骨折などによく使われています。近年、特に骨の変形に効果が高いことがわかってきました。

大浦 骨砕補植物で変形が治るのですか。

董和 変形は老化によるものが多く、これを治すのは難しい。
ただ、変形はあっても痛みがなくなれば日常生活には差し障りがない。これは病院では臨床治癒(寛解)と呼んでいます。これを目指すのがいいと思います。

大浦 骨砕補植物には、臨床治癒に導く働きがある?

董和 その力は強いと言えます。骨砕補植物には活血・止痛・抗炎症などの働きがあります。これらの働きによって、腫れがひき、炎症が治まれば、圧迫がとれて痛みも治まります。
もう一つ、骨砕補植物には単に活血・止痛・抗炎症作用があるだけではない。漢方的には補腎薬に属します。漢方では「腎は骨を(つかさど)る」といい、腎と骨は密接な関係があります。骨の変形や骨粗鬆症の予防、改善には腎の強化が大切です。

大浦 これは漢方でいう「腎」のことですね。

董和 漢方の腎は、西洋医学でいう腎臓と同じではありません。もっと広く、抵抗力、生命力のようなものを指します。
西洋医学では、骨や関節の改善にカルシウム、あるいはコンドロイチン硫酸やグルコサミンの摂取を勧めますが、腎の機能が良くないとこれらの吸収、利用は難しいのです。骨砕補植物はカルシウムなどの吸収、利用を高める働きも持っています。腎を強化しながら、活血・止痛・抗炎症の働きもあります。

大浦 それで関節は安定した状態が得られるようになる?

董和 ええ。関節周辺の組織の炎症をとるのは比較的早い。関節の痛みが治まれば日常生活に大きな支障はありません。

大浦 どれくらいの期間で効果を実感できますか?

董和 食べる量にもよりますが、五~七日もあれば実感できると思います。腰部はもっと早いかもしれません。

大浦 腰のほうが早く良くなるのですか。

董和 骨砕補植物には補腎作用があり、腰はこれに敏感に反応するようです。ただし前述のように、症状は早くとれますが、変形を改善するのは難しく、これは首より期間がかかります。首は頭が乗っているだけですが、腰には上半身の体重が全部乗っているからです。


「腎虚」の改善
大浦 骨砕補植物を摂っていると骨密度が上がってくるという人があります。骨砕補植物には骨からカルシウムが抜けるのを防ぐ働きもあるのでしょうか。

董和 骨のカルシウムには副甲状腺が関わっています。
副甲状腺ホルモンの分泌が多いと、骨からカルシウムが溶かしだされます。そのため血中にカルシウムは増えているので、カルシウムを摂取しも、あまり吸収されません。体はカルシウムが十分にあると思ってしまうのです。
しかし骨のカルシウムは減っていきます。これは副甲状腺機能が亢進しているからです。こういう人は舌が赤く、苔は少なく、漢方的には腎陰虚に属します。骨砕補には補腎作用があります。腎陰虚を改善することが副甲状腺機能を正常化し、骨密度の改善に役立っているのかもしれません。

大浦 副甲状腺ホルモンが過剰な人は腎陰虚が多いのですか。

董和 腎虚、それも腎陰虚に属する人が多いです。特にヘバーデン結節(指の関節が膨らむ)は腎陰虚が多い。

大浦 骨砕補植物は腎陰虚と腎陽虚のどちらに良いのでしょう。

董和 それは腎陽虚のほうでしょう。ただ、骨砕補植物は微温性ですが、これに真珠末や山梔子など涼性のものを合わせれば平性になり、腎陰虚の人にも使えます。
体のなかで陰と陽と、どちらがリーダーかといえば、それは陽です。ですから腎を補する場合、腎陰と腎陽のどちらを補するかというと、補腎陽が先になります。陽が高まれば陰も回復してきます。

大浦 骨砕補植物などで効果が得られないような場合は?

董和 そういう人は虚証(気血不足、体力低下)のことが多いようです。特に高齢の人は気血不足のために、いろいろな生薬を用いても反応が鈍い傾向があります。そういう方で、のぼせ、ほてり、ノドの渇きなどがあり、舌が赤く、つるつるしていれば腎陰虚ですから、亀版(亀の甲羅)鼈甲(スッポンの甲羅)黄精(なるこゆり)枸杞子(クコの実)などを、いっしょに摂ってみてください。

大浦 腎陽虚の場合は?

董和 寒がりで、体が冷え、冷えると痛みが増すような人で、舌の色が薄い(舌苔は少ない)人は腎陽虚です。こういう人は鹿角(鹿の幼角)、海馬(タツノオトシゴ)などをいっしょに食べることをお勧めします。

大浦 腎陰虚か腎陽虚か、判断がしにくい場合もあります。

董和 そういう場合は補腎陽の対策、つまり鹿角、海馬などを合わせて摂ることをお勧めします。もちろん、骨砕補植物は続けて摂ってください。
陰といい陽といい、元は一つで、根っこは同じです。年をとると腎陰虚の人のなかにも腎陽虚があり、腎陽虚の人のなかにも腎陰虚があります。そういう場合、どちらの対策を優先するかというと、腎陽虚を補うほうを優先します。

大浦 腎虚が解消すれば、副甲状腺ホルモンは正常に戻りますね。

董和 副甲状腺機能が正常になれば、血液中に増えたカルシウムは骨に戻るでしょう。そうすれば胃腸からカルシウムが吸収されるようになり、骨がだんだん丈夫になってきます。そして軟骨が増え、骨棘は消えていくでしょう。

大浦 単にカルシウムなどを与えたり、カルシウムの脱失を抑える薬を投与する現代医学とは違って、より根本的な対策ということになりますね。

董和 現代医学の対策は消極的治療です。それに比べると、漢方は積極的治療といえます。体の中からカルシウム代謝を良くします。カルシウム代謝が良くなれば骨が丈夫になります。骨が丈夫になると関節が安定し、骨棘も消えていきます。
骨砕補植物のもので、腫れや痛みは比較的早く治まります。これを第一次効果とすれば、長く続けていると少しずつ変形が良くなってくることが期待されます。これは第二次効果です。

めまいに対して
大浦 頸椎の変形はどうですか。

董和 首の症状の起こり方には二通りあります。一つは局所的な末梢神経の圧迫によるもので、手のしびれ、首のコリや肩のコリなどが現われるもの。もう一つは、首の脊髄(頸髄)の圧迫によるものです。これは中枢神経ですから、排尿・排便困難、歩行異常など下半身にまで影響が及び、深刻なことがあります。

大浦 頸椎症ではめまいを訴える人が多いですが、頸椎の変形で起こるめまいと、それ以外の原因で起こるめまいを見分けるには、どうすればいいですか。

董和 はっきりと区別するのは難しいですが、首が痛い、肩がこるなど頸椎症の症状があって、めまいがするとき、また頭を傾けるとめまいがするときなどは頸椎変形によるめまいと考えてよいでしょう。

大浦 斜め上を見たとき起こるのは頸性めまいのことがあるといわれますね。

董和 首は体幹とちがって細く、ちょっと頸椎が歪んだり組織が腫れたりしても、神経が刺激されたり血管が圧迫されたりして症状が出やすいのです。
症状の起こり方には、神経圧迫型、頸髄圧迫型、自律神経圧迫型、血管圧迫型とこれらの混合型があります。どのタイプでもめまいは起こり得ますが、その元が頸椎の変形の場合は、変形が治るにつれて良くなってきます。
先日も、女性の患者さんがめまいの相談に来ました。舌は正常でしたが、手に触れると大変冷たい。肩こりもあります。そこで、これは首の変形からきためまい、特に血管が圧迫されるために起こっているめまいではないかと考えました。

大浦 その方にも骨砕補植物を勧められた?

董和 そうです。これをしばらく続けてもらったら、だんだん良くなってきました。こういう型は、頸髄圧迫型や自律神経圧迫型など、わけのわからないことを(不定愁訴)いろいろと訴えるタイプの人に多いように感じます。

大浦 むち打ち症についてはどうでしょうか。

董和 これにも骨砕補植物は良いですが、もう一つ、めまいが首からであることを確かめる方法があります。100%ではありませんが、腰に痛みがないか、尋ねてみてください。
もし腰痛があれば首の変形によるめまいの確率が高くなります。背骨(脊柱)はまっすぐな棒ではなく、生理的に彎曲して、上半身の重みを支えています。もし頸椎が変形して曲がると、その下の腰椎もそれに従って逆方向へ彎曲し、曲がったなりに体重を支えようとして、頸椎の変形が徐々に腰椎に変形をもたらし、腰にも痛みが出ます。ですから、手にシビレがあり、肩もこるという人の場合、それに腰痛があれば、首の変形によるめまいである可能性が高くなります。

大浦 パソコンを使っている人は、長く無理な姿勢をしていますね。

董和 こういう人も変形しやすいです。特に長く悪い姿勢をしていると頸椎が歪んで、周辺の組織を損傷したり、炎症を起こしたりします。膝の関節でも、肥満などで長く無理な力が加わると、損傷しやすくなります。

大浦 この場合も骨砕補植物が良いですか。

董和 ええ。骨の変形であればすべてに骨砕補植物は適用できます。
ただ、リウマチは単なる変形ではなく免疫が絡んできますから、骨砕補植物では難しい。この場合は、むしろ紫霊芝などが適しています。

シビレには?
大浦 頸椎や腰椎の変形では痛みのほかに、シビレもよく起こります。

董和 首の変形では手に、腰の変形では足にシビレがよく出ます。骨の変形によって、神経や血管が圧迫されるからです。

大浦 長く正座していると足がシビレてきます。これは血流障害によるものですが、神経圧迫によるシビレとはどのように見分けたら良いですか。

董和 大まかにいって、血流障害によるシビレは一時的で、圧迫が取れれば回復します。神経の圧迫によるシビレは慢性的です。ガンによる神経の圧迫ではシビレが長く続きます。

大浦 腰や足のシビレがなかなか取れないときには?

董和 シビレにはヘビエキスが良く効きます。この場合、腰椎の変形もあると思いますから、骨砕補植物とヘビエキスを合わせて用いるのが良いでしょう。それでも効果が思わしくないときは、さらにツボクサ(積雪草)を加えるとよいです。
ヘビエキスが神経痛に良いことは経験的に知られています。以前、ある薬局で、顔面神経痛の患者さんにヘビエキスを出していました。しかし、あまり効果がみられなかったので、それまで用いたことのなかったツボクサを出してみました。すると、その顔面神経痛はきれいに治ったのです。

大浦 ツボクサは痛みに良いということでした。

董和 そうです。ですから、関節や脊椎の変形による痛み(ぎっくり腰も)には、骨砕補植物とツボクサを合わせて用いるとよい。一方、神経痛やシビレには骨砕補植物とヘビエキスを組み合わせて用います。症状が軽くなってきたら、ツボクサやヘビエキスは摂らなくても良いでしょうが、変形した骨の改善のために骨砕補植物は続けることをお勧めします。

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