董和先生に聴く
「痛み」の対策(下)
聞き手:大浦純孝 社長

大浦 これまでのお話しで、痛み、特に激しい痛みにはツボクサ(積雪草)が良いということでした。

董和 そうです。痛みばかりでなく、炎症にも化膿にもいい。また解毒や免疫力向上にも良く、幅広い作用を持っています。
私は昨年からツボクサを研究してきて、この薬草は本当に良いものだと感じております。

今までの生薬の中で、これほど多面的に効くものはないと思います。前回、ツボクサの茎葉数枚を煎じて、朝のお茶として飲むと「百病を下げる」という記述があると言いましたが、決して大げさではないと思います。


安全性が高い

大浦 ツボクサは中国では普通に食べられているのですか。

董和 これをお粥に炊いて食べている地方もありますが、私の故郷ではツボクサをカゼの解熱に使ったりします。
カゼで熱が出たとき、農民はツボクサを採ってきて、これを煎じて食べます。

大浦 そうですか。近代化が進んでいない所では昔ながらの民間療法を利用しているのですね。現代の日本の医者任せの状況にあっては、うらやましい感じがします。ところで、ツボクサには解熱作用もあるのですか。

董和 あります。先日も、ある薬局の先生から、カゼをひいて肩がこってこって仕方がなかったのが、ツボクサで良くなったといって喜んでメールが来ました。でも普通のカゼなら人参木植物のほうが早く効くと思います。ツボクサは同じカゼでも、筋肉痛とか関節痛を伴うときに用いると、よく効くでしょう。

大浦 インフルエンザは関節痛を伴いますね。

董和 そういうときもツボクサが役立ちます。ツボクサは風寒、風熱、両方のカゼに使えます。カゼの頭痛にも良く、人参木植物と合わせるといっそう良いです。

大浦 胆石、胆嚢炎も激しい痛みが起こります。以前は、白花草を勧めておられましたが…。

董和 痛みがあればツボクサのほうが良いです。痛みがなければ白花草でもいいですが、痛みが出てきたらツボクサを合わせてください。

大浦 ツボクサは安全性も高いですね。

董和 ええ。たくさん食べても胃にもたれるということがありませんので、痛みが止まるまで食べることができます。激しい痛みのときは一日分の目安量を一度に食べます。三十分~一時間しても痛みが治まらなければ、また同じように一日分を一回に食べます。これを痛みが取れるまで続けて結構です。


神経痛・しびれ

大浦 年をとると神経痛が多くなります。三叉神経痛、座骨神経痛、ヘルペス後神経痛など、いろいろな神経痛がありますが、漢方薬にはあまりよく効く処方がないように思います。

董和 中国では神経痛やしびれに、昔から「ヘビ」を使っています。ヘビには毒蛇と無毒蛇がありますが、効き目は毒蛇のほうが高いようです。特に中国南部では五歩蛇とか大白花蛇といい、神経痛、しびれ、痙攣などに使われています。

大浦 ヘビの脱け殻にも効果がありますね。

董和 ヘビの脱け殻は生薬名を「龍衣」といい、ヘビと同様に神経痛あるいは皮膚病に用いられます。

大浦 神経痛はヘビや脱け殻だけで大丈夫ですか。

董和 ヘビは普通、一日に二~三g(粉末)が目安ですが、量を多く食べたほうが効果は高いようです。神経痛の痛みが強い場合は、ヘビのエキスをおすすめします。ヘビエキス二gはヘビの乾燥粉末約二十gを濃縮したものです。
それでも効果が十分でないというときはツボクサを併用します。頸椎や腰椎の変形による手足の神経痛やしびれには、ヘビエキスとツボクサが良いですが、症状がとれた後には骨の変形改善のために骨砕補植物を食べつづけてください(ヘビとツボクサは止めてよい)。

大浦 ヘビは麻痺にはどうですか。

董和 使えます。ヘビには駆風・解毒作用がありますが、ほかに通絡(血流改善)や痛み止めの作用もあり、神経痛、しびれのほか、麻痺、半身不随にも使われます。


子宮内膜症、生理痛

大浦 話は変わりますが、最近、野牡丹科植物が女性の方に好評ですね。

董和 生理痛や子宮内膜症、卵巣の腫れにずっと野牡丹科植物を使っており、食べられた方は一様に良い結果が出ています。子宮筋腫の方にも使っていただいており、改善効果は期待できます。

子宮内膜症には二つの型があります。一つは子宮内膜が子宮の筋層に存在するもので、内性子宮内膜症あるいは子宮腺筋症と呼ばれます。もう一つは、子宮内膜が子宮以外の部位に発生するもので、外性子宮内膜症と呼ばれ、卵巣にもっとも多く見られます。

この子宮内膜が炎症を起こし、痛みを伴います。一般には消炎鎮痛剤が用いられますが、これは血流を悪くするので良くありません。

大浦 子宮内膜症の痛みには野牡丹科植物だけでよいですか。

董和 結構です。これで抑えきれない時はツボクサを合わせてください。
野牡丹科植物は世界に3,000種ほどありますが、中国の『四川中薬誌』という書物には、ある種の野牡丹は「行気(気のめぐりを良くする)活血(血流を良くする)の効果があり、……治月瘕病(生理不順で下腹部の腫れや不快感を伴う病気)徴瘕 (子宮筋腫や卵巣の腫れなど)に用いる」とあります。

大浦 先生は、どの野牡丹を使われているのですか。

董和 中国南部、私の故郷の福建省に自生している野牡丹を使っています。私がまだ中国にいた頃、この野牡丹を子宮内膜症や子宮筋腫に使ってみたところ、確かに手応えがありました。特に子宮内膜症や卵巣の腫れには効果があり、利用者は大変喜んでくれました。

この種の野牡丹科植物には補血、活血、止血の効果がありますから、生理痛にも良いです。


生理痛

大浦 軽い痛みから寝込むほどの痛みまで、生理痛の程度はいろいろですが、多くの女性が悩まされています。原因は何でしょうか。

董和 生理というのは、受精卵が着床し妊娠するための準備として厚くなっていた子宮内膜が、妊娠しなかったために剥がれ落ちて出ていく現象です。このときプロスタグランジンという生理活性物質(局所ホルモン)が分泌されます。

このプロスタグランジンが子宮を収縮させ、経血を押し出しますが、プロスタグランジンの分泌が多すぎると子宮が必要以上に収縮し、痛みが起こります。これが生理痛です。

生理痛は、生理中に起こるもの(月経困難症)と、月経の直前に起こるもの(月経前緊張症)があります。痛みは下腹部痛、腰痛、頭痛などが主なものです。

大浦 漢方的に考えると、原因はどうなりますか。

董和 漢方では、月経前に痛み、月経後には軽快するのは「気滞血オ」(気と血、両方のめぐりが悪い)と考えています。一方、月経後に鈍痛が生じるのは「気血不足」が原因、また月経期間中に体が冷えて痛み、温めると軽快するのは「冷え」が原因と考えています。

大浦 生理痛にも野牡丹科植物だけでいいですか。

董和 野牡丹科植物には補血、活血、止血の効果がありますが、これだけでは生理痛には効力がやや弱いので、体を温める作用があり活血、止血の効果もある田七人参などを合わせて用いることをおすすめします。そうすれば効力がアップし、全ての生理痛に応用できます。これは止痛より血流の改善が主目的ですから、ある程度の期間、用いてください。

大浦 できるだけ早く痛みを取りたいというときは?

董和 痛みが特にひどいときは、子宮内膜症のときと同様にツボクサを併用してください。
ツボクサの量は一日分の目安量を一回分として、三十分~一時間おきに同量ずつ、痛みが解消するまで食べてください。ツボクサはいくら食べても大丈夫です。


卵巣の腫れ、卵巣嚢腫

大浦 卵巣嚢腫にも野牡丹科植物はいいですか。

董和 ぜひ、おすすめします。もともと野牡丹科植物は、卵巣の腫れや卵巣嚢腫の改善のために使ったものです。
これをベースにしていろいろな生薬との組み合せを考えてきました。使われた人たちはみな一様に喜ばれています。

大浦 チョコレート嚢腫にはどうでしょう?

董和 いいです。ただ、野牡丹だけでは活血作用(血流の改善)は弱いので、田七人参、シャチュウなどを合わせたほうがいいです。ただし、これらは妊娠中の人には使えません。

大浦 妊娠中はダメということですが、では生理中には使っても構いませんか?

董和 構いません。むしろ摂ったほうが良いです。生理のときは気・血のめぐりが悪くなります。ですから、行気(気のめぐりを促す)化オ血(滞った血を除く)によって子宮をきれいにしなければなりません。それに野牡丹科植物が役立ちます。

大浦 もう少し、詳しく説明していただくと……。

董和 女性は高温期と低温期を約二十八日周期でくり返しますが、生理が終わってから排卵日まで(低温期)は補血(血の産生を促す)を行なう期間です。そして三日~一週間くらいの排卵、妊娠可能期を経て高温期に移行しますが、この妊娠可能期間にも行気、化オ血を促します。

その後は高温期に移り、次の月経が始まるまで高温期がつづきます。その間は補腎の期間で、腎を養う方法を講じます。
そして月経が始まったら、また行気、化オ血の方法を講じ……という風にくり返します。

大浦 そのほかに、先生は不妊症の人に良い食品も考えておられるということですが、楽しみに待ちたいと思います。

(了)