董和先生に聴く
こり・痛みの症例(下)
聞き手:大浦純孝 社長


大浦 もともと皮膚の病気や神経痛などに有効なものとして開発されたヘビエキスですが、思いがけず肩こりや偏頭痛に優れた効果を示した例を前回はお話しいただきました。今回は、本来のと言いましょうか、当初からの対象である神経痛が鮮やかに改善した例だそうですね。

董和
 私は、私の漢方や生薬に対する考え方を知ってもらうために時々勉強会を開催しています。これには多くの薬局の先生方が出席されます。この例も、その中のある先生が体験されたものです。

神経痛

大浦
 患者さんの病気は何だったのでしょうか。

董和
 神経痛です。骨粗鬆症もあり、激痛のために立てないので、今年1月30日から病院の薬を飲み始めました。しかし、一ヵ月たっても良くならないので、この薬局の先生のところに相談に来られた(2月27日)ということです。

大浦 その先生の処方は?

董和
 ツボ草のエキスとハカマウラボシ科植物のエキスを同量ずつ、病院の薬を中止して食べてもらわれたそうです。

大浦
 その結果はどうでしたか。

董和
 二週間後(3月12日)に来られたときには、痛みが三割ほど減っていました。そこで先生は、ハカマウラボシ科植物のエキスをヘビエキスに変更し、以後はツボ草のエキスとヘビエキスを同量ずつ、食べるように指示されました。

大浦
 これはどうでしたか。

董和 効きました。一週間後に来られたときには、痛みはほとんどなくなっており、杖も要らなくなっていました。

大浦
 痛みにはツボ草のエキスとヘビエキスの併用が良いのですね。

董和
 多くの先生方の話をお聞きしても、神経痛にはツボ草エキスとヘビエキスを合わせて食べると非常に効果が高い、と言われています。

大浦
 でも、どっちか一方を試したいというときには…。

董和
 それはツボ草エキスの方が良いでしょう。ツボ草エキスはたいへん応用範囲の広い生薬で、神経痛ばかりでなく、炎症、化膿を伴う痛みにも有効です。

大浦
 では、ハカマウラボシ科植物の方はどうでしょう。

董和
 これは骨粗鬆症や四肢の変形性関節症、頸椎や腰椎の変形などには良いものですが、神経痛にはツボ草エキスとヘビエキスの方が効果的です。

歯周疾患にも

大浦
 ツボ草はこれのエキスだけで効果があるのでしょうか。

董和
 一定の効き目はありますが、より効果を高めるためには白花草、田七人参、カザンコウ、真珠などと合わせて食べるのがよいです。

大浦
 それぞれの効用について簡単に説明してください。

董和
 白花草は芳香性の生薬で、炎症性の痛みによく、また胆石などの結石にも効果があります。田七人参は血流を改善し、瘀血を除去します。もう一つ、カザンコウは神経痛、関節痛、腰痛、腹痛、生理痛など、色々な痛みに効果を発揮します。

大浦
 これだけ効けば、ほとんどの痛みに対処できますね。
董和 ええ。これらを合わせれば、炎症性の痛み、非炎症性の痛み、どちらにも用いることができます。
大浦 歯周炎で歯ぐきが赤く腫れ上がっているようなときでもよいですか。

董和
 治まります。軽いうちに手当てするのがよいですが、ひどくなった場合でもこれらのエキスを多量に食べてみてください。そして(前回述べたように)30分、様子をみます。痛みが改善しなければ、また食べる。……これを痛みが治まるまでくり返します。

大浦
 董和先生も以前は歯が悪かったそうですね。

董和
 これまで、何回も歯医者に通いました。しかし、ツボ草などのエキスを食べるようになってからは調子が良く、最近は歯医者には行っていません。

大浦
 他の薬局の先生方からの反響もありますか。

董和
 ある薬局の先生の例ですが、年末の忙しいときだったので放っておいたら、歯ぐきがピンポン玉くらいに腫れ上がりました。歯医者に行ったら、あまりに腫れがひどかったので、口腔外科に行ってくれと言われたそうです。年が明けて正月に私が行ってみたら、びっくりするほど腫れていました。すぐにツボ草などのエキスを大量に食べてもらいました。

大浦
 結果はどうでしたか。

董和
 病院からもらった抗生物質も飲んでいましたが、効果ははかばかしくありませんでした。しかし約二週間で腫れは引きました。やはり軽いうちに手を打つ方が、ずっと早く治ります。

「顔面神経痛」

大浦
 最後の症例は顔面神経痛の例だそうですね。

董和
 ええ。別の薬局の先生からいただいた五十代の女性の例です。昨年10月、ストレスと過労が続いたあとに、突然左耳が痛くなり、吐き気などを感じました。そして翌朝から顔の左半分がしびれ、ポーッと腫れた感じで、触っても感覚が全くなかったということです。

大浦
 それで、その先生のところに来られた。

董和
 時折、ピリピリと電気のような刺激が走り、味覚もなく、頬をよく噛むとか、しゃべりにくい、歩きにくい、物をつかみにくいなどの症状があったので、脳梗塞かもしれないと病院で検査を受けたのですが、目立った異常はなく、薬も処方されませんでした。しかし、一ヵ月たっても症状は変わらず治る気配がないので、来局されたということです。

大浦
 これが顔面神経痛だったのですか。

董和
 顔面神経痛という名前は曖昧で、これはいくつかの症状に分かれます。①まぶたや唇などがピクピク引きつるのは顔面痙攣、②顔の左右どちらか半分の筋肉、まぶた、唇などが動かなくなるのは顔面神経麻痺、③電撃的にビリビリッと顔面に痛みが走るのは三叉神経痛で、本来、顔面神経痛という病名はありません。

大浦
 この患者さんの場合は?

董和
 この方の主訴は顔の左半分のしびれと痛みですから三叉神経痛と思われます(これが俗に顔面神経痛と呼ばれる)。

大浦
 何が原因なのでしょうか。

董和
 いろいろとありますが、よくあるのは脳から出てくる神経を血管が刺激することです。本来、神経と血管は離れて走行しています。しかし、動脈硬化などが起こると血管が蛇行します。これがたまたま神経にぶつかると神経が刺激されます。三叉神経痛はこのようにして起こる例が多いといわれています。

大浦
 年齢的には?

董和
 動脈硬化が始まる中年以降に多くみられます。

三つの健康食品

大浦
 こういう場合、漢方的にはどのように対処しますか。

董和
 三叉神経痛に対しては、神経痛一般に良いヘビエキスを用います。

大浦
 その他の症状に対しては?

董和
 血行不良があればそれを改善し、また水分代謝が悪ければそれを改善するようにします。

大浦
 そういうときに用いるのは?

董和 血流の改善に良いのは灯盞細辛(とうさんさいしん)のエキスです。また水分代謝を良くするにはウチワドコロのエキスが適しています。これらを合わせて食べます。

大浦
 その先生も、この三つを食べるようにすすめられたのですね。

董和
 そうです。ヘビエキス、灯盞細辛エキス、ウチワドコロエキスを、いずれも一日の最大量より更に多めに食べるようにすすめられました(11月14日)。

大浦
 それはどのような理由からでしょう?

董和
 顔の左半分が右側にくらべて腫れて下がっている。ピリピリとしびれた感じで感覚がない。舌は左半分が青紫色で(血行が悪い)舌縁には歯痕があった。また舌の中央~奥にかけて黄膩苔(おうじたい)(黄色のネバネバした苔=水分代謝が悪い)があったことなどによります。

大浦
 その結果はどうだったのでしょうか。

董和
 まだ一ヵ月もたっていませんでしたが、12月11日に来られたときは、顔の腫れが引き、左右のバランスも違和感がなくなり、顔色も良くなっていました。しびれが取れ、感覚も戻り、ピリピリ感もなくなったとのことで、以後、三種類のエキスの摂取量を普通量にしました。

大浦
 その後の経過はどうですか。

董和
 年が明けて今年の1月7日に来られたときは、顔が引きしまってキリリとしていたそうです。本人も本来の顔に戻ったことを実感され、感覚の異常もみられず、歩きにくさ、しゃべりにくさ、頬をよく噛むといったこともなくなり、違和感は解消したということです。

大浦
 こうなれば健康食品の摂取量をさらに減らしてもいいですね。

董和
 ええ。舌苔がきれいになっていたので、その先生は水分代謝を良くする働きがあるウチワドコロのエキスは止めて、ヘビエキスと灯盞細辛のエキスのみにされました。その量も当初の1/3に減らされ、これを続けているということです。

瘀血を除く

大浦
 最後に、ここで用いられた生薬の働きについて少し説明してください。

董和
 ヘビエキスについては前回述べましたが、ヘビは去風湿(風邪、湿邪を追い出す)通経絡(経絡のめぐりをよくする)の働きがあり、皮膚病や神経痛に良いとされています。ヘビエキスは乾燥ヘビ粉末の三倍くらい多く有効成分を含んでいます。

大浦
 ウチワドコロは?

董和
 ヤマノイモ科の植物で、中国では穿山薯預(せんざんしょよ)あるいは穿山龍(せんざんりゅう)といわれ、活血(血流を良くする)化痰(かたん)(体内に停滞した水分を除去する)という二つの働きをもつ名薬といわれます。

大浦
 治りにくい病気には瘀血と痰飲が関係していますね。

董和
 そうです。その意味で、活血(血流改善)化痰(水分代謝改善)の働きのあるウチワドコロは貴重な食品です。消化促進などの働きもあります。

大浦
 これは気管支炎や喘息(咳・痰)や甲状腺瘤、甲状腺機能亢進、消化不良で上腹部が苦しいなどに良いということですが、ウチワドコロを使う目標となるのは?

董和
 舌にネバネバした苔があることです。こういう人は水分の代謝が悪く、体に余分な水分が停滞しています。これを追い出す必要があります。

大浦
 他に合わせて摂った方が良いものはありますか。

董和
 ウチワドコロは青皮竹(天竹黄)、枳実(ダイダイ)、釣鐘人参、山梔子(クチナシ)、大棗(さねぶとなつめ)などと合わせて摂ると、効果が高くなります。これらをあわせるとメタボリックシンドロームの改善にも使えるのではないかと私は考えています。

大浦
 もう一つ、灯盞細辛の方はどうですか。

董和
 灯盞花ともいい、中国・雲南省では民間療法として灯盞細辛の粉末と鶏卵をいっしょにして食べています。

大浦
 その主な働きは?

董和
 大きな働きは化瘀(古血を除く)通絡(経絡のめぐりを良くする)作用です。そのため血管のつまりを除き、血行を良くする働きが優れています。

大浦
 ということは、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞やその後遺症(手足の不自由、しびれ、いたみ)、また耳鳴り、難聴などに適用できると思いますが、いっそう効果を高めるために合わせて摂った方がよいというものはありますか。

董和
 それには紅景天(こうけいてん)、お種人参、田七人参、天竹黄、真珠、サフランなどを合わせて摂ると効果が高くなります。

大浦
 今回は神経痛を中心に、実例を紹介していただきました。

董和
 三叉神経痛のほか、座骨神経痛でもヘルペス後神経痛でも、神経痛に対してはヘビエキスを基本にして、痛みがひどければツボ草エキスを加えるという対処の仕方で良いと思います。舌を見たり、むくみを調べたりして、別の健康食品を併用されると、より早く、より根本的に回復を早めることができると思います。

大浦
 痛みは本当につらいものです。皆さん、大なり小なり痛みの経験があると思いますが、今回それが快癒した実例をうかがって、今度自分の身に痛みが起こったときはこうすればよいという確信が持てたことで、気分的、精神的にもずいぶん楽になったのではないかと思います。
本日はどうもありがとうございました。

(了)