董和先生に聴く
実証の痛み・虚証の痛み(下)
聞き手:大浦純孝 社長

大浦 先生がリハビリを続けておられると、ツボ草エキスの鎮痛効果がだんだん落ちてきて、そのとき羊胎盤(プラセンタ)などのエキスを食べたら、また効果が現われてきたということでした。
董和 ツボ草エキスの効果が落ちたのはつらいリハビリを続けたために体力が低下し、体が虚証になってきたからでした。
大浦 そこで体力を回復し、虚証を改善するために羊胎盤などのエキスを加えられたのですね。これは漢方薬をヒントにして創られたそうですね。
董和 参考にしたのは「亀鹿二仙膠」という処方です。これは漢方の有名な滋養強壮薬で、亀版、鹿角、人参、枸杞子の四つから成る処方です。
大浦 それぞれの効能について簡単に説明してください。
董和 亀版は亀の甲羅で、補陰(体をうるおす働き)。鹿角は鹿の幼角で、補陽(体を温める働き)。人参は薬用人参で、補気(内臓機能を促進する働き)。枸杞子はクコの実で、滋養陰血(血の不足を補う)の働きがあります。
大浦 この処方はどのような症状に用いられますか。
董和 病後、産後、慢性病などで体力が低下したとき、また貧血、老衰などに良い滋養強壮薬です。
大浦 亀鹿二仙膠と羊胎盤などのエキスとでは、どこが違うのでしょうか。
董和 亀版、鹿角、人参は同じですが、亀鹿二仙膠の枸杞子をやめて、羊胎盤、管花肉蓯蓉に変えました。これらの方が枸杞子よりも働きが強く、特に補血作用が優れているからです。
大浦 羊胎盤と管花肉蓯蓉には、どのような作用がありますか。
董和 羊胎盤は体を温め、補血作用が強く、慢性病で体力が低下した人には好適の食品です。一方、管花肉蓯蓉は「砂漠人参」の別名があり、体に潤いと温かさを与え、優れた補血作用があります。
大浦 これらを合わせた羊胎盤などのエキスは、どのような症状の人にすすめられますか。
董和 これは滋養強壮効果が優れていますから、一切の慢性病、体力低下、老衰、免疫力低下、産後の体力低下、乳汁不足、女性ホルモン不足、不妊、冷え症、肌のつやが悪い、貧血などにすすめられます。
大浦 女性に良いのですか。
董和 漢方の理論では「女子以血為本」(女子は血を以て本と為す)といわれ、女性の病気はみな血の不足が根本にあるとされています。羊胎盤などのエキスには強い補血作用があるので、女性に対してとても良いものです。
大浦 男性にはあまり効果がないのでしょうか。
董和 そんなことはありません。滋養強壮作用が強いですから、やはり体力低下、老衰、慢性病はもとより、インポテンツ、ケガ後の体力回復、疲労の改善、傷の修復などに栄養食品として役立ちます。

羊胎盤と不眠症
大浦 ところで、羊胎盤などのエキスが不眠症によく効いた例があるそうですね。
董和 先日、漢方の勉強会に出席したとき、ある薬局の先生から、慢性の不眠症に羊胎盤などのエキスが奏功したという例を聞きました。それを聞いた後で、なるほどと感心しました。
大浦 と言われますと…。
董和 というのは、私も若い時から不眠症に悩んでいます。五、六年前に五加皮植物が有効であることを知り、これでかなり眠れるようになりましたが、それでもたまに体調が悪いとき、夜中に目が覚めると眠れないことがあります。しかし、最近はよく眠れ、ほとんど毎晩熟睡しています。
大浦 何かこれまでと違ったことをされたのでしょうか。
董和 いま私は、虚証の痛みを改善するために、滋養強壮作用のある羊胎盤などのエキスを毎日食べています。これが不眠症にも効いているのだと思います。
大浦 そうですか。滋養強壮作用のあるものを摂ることでよく眠れるようになられたということですが、そういえば眠るにも体力みたいなものが要りますね。子どもはむりやり起こしても、いったん眠ると起きませんが、だんだん年をとってくるとちょっとした物音でも目がさめたりしますからね。では、漢方では不眠はどのように考えられているのでしょうか。
董和 漢方では、不眠は心神の不安定によると考えています。心神の基礎物質は心血であり、心血(脳の精神作用を支える栄養物質)が旺盛であれば睡眠はよいとしています。それゆえ漢方では不眠症に「養心安神」(補心血、安心神)という治療法がとられます。
大浦 それにはどのような生薬や処方が用いられるのでしょうか。
董和 漢方には直接に補心血に効くものがありません。そのため補血の働きを高めて補心血を達成するという方法がとられます。これには四つの方法があります。
大浦 それぞれについて説明していただけませんか。
董和 ①「補気生血」=人参、黄耆などの補気薬によって気を高めて血を増やそうという方法です。漢方薬には「当帰補血湯」(大量の黄耆と少量の当帰から成る)という処方があります。
②「補脾生血」=脾胃の働き(消化吸収機能)を高めて、血を産生させる方法。漢方では「加味帰脾湯」が代表的処方。
③「養血和血」=直接、補血作用のある生薬を利用して血を増やそうという方法。漢方の「四物湯」が代表処方。
④「強精補血」=栄養価の高い動物性生薬を用いて精を増強し、血を増やそうとする方法です。その代表的処方が「亀鹿二仙膠」です。
大浦 強精すれば増血するのですか。
董和 ええ。漢方では精と血は同根と考えています。精が多いときは血に変えて利用でき、血が多いときは精に変えて利用できるとされています。ですから、精を増やせば、これが血に変わり、血が増えます。一方、血が多いときはこれを精に変えて腎に貯蔵しておき、血が少なくなったときこれを補うことができます。
大浦 この四つの方法のうち、最も効果が高いのはどれでしょうか?
董和 それは強精補血の法です。羊胎盤などのエキスは亀鹿二仙膠よりも補血、強精効果が高いので、これらの処方の中で最も効果が高いといえます。

亀やスッポンの甲羅
大浦 ところで、漢方的に考えて、慢性不眠症の原因として多いものは何でしょうか。
董和 やはり心労、思慮過多(思い悩みのしすぎ)でしょう。これは肉体労働者より精神労働者に多いので、慢性不眠症は精神労働者にずっと多くみられます。
大浦 思慮が過ぎると、どうして心血が不足するのですか。
董和 大まかにいうと、日々思慮過多がつづくと食欲が落ちてきて栄養が不足になります。そのため血の生成が悪くなり、心血不足に陥ることになります。ですから、強精、補血の働きのある羊胎盤などのエキスが慢性不眠症に大きな効果を上げたのです。
大浦 「慢性」となったら「虚証」と考えてよいのでしょうか。
董和 大体、そうですね。
大浦 老人は不眠を訴えることが多いですが、漢方的にみて、お年寄りの不眠の原因は何でしょうか。
董和 ほとんどが「血虚」です。これにも羊胎盤などのエキスは使えますが、こういう人は体のうるおいが不足していますから、補陰作用のある亀の甲羅やスッポンの甲羅などをあわせて摂ると、いっそう効果があります。
大浦 血虚症状の目標はどのようなものになるのでしょうか。
董和 舌の色が赤く、舌苔がなくツルツルしている人です。こういう人はうるおい不足(陰虚)です。ほてったり、口が渇くという人もこのタイプです。

関節症や腰痛は?
大浦 話をもどしますが、リハビリ中に先生に再び痛み(虚証)が現われたとき、ツボ草のエキスに羊胎盤などのエキスを合わせて食べたら、手術の痛みが消えたということでしたが、これらは関節痛や腰痛などにはどうでしょうか。
董和 もちろん悪くないですが、こういう場合はツボ草のエキスより、骨砕補植物のエキスの方がよいです。
大浦 それはなぜでしょうか。
董和 膝の変形性関節症や腰痛などは、多くが慢性的経過をたどっており、虚証の痛みに属します。このような場合は骨砕補植物のエキスが適しています。骨砕補植物には補腎(腎の機能を強める)壮骨(骨を丈夫にする)の働きがあるので、このような名前で呼ばれています。
大浦 「腎は骨をつかさどる」という言葉がありますが、骨砕補植物のエキスはまさに腎を補って骨、関節の慢性的な病気に良いわけですね。
董和 骨砕補植物のエキスを、羊胎盤などのエキスといっしょに食べますと、関節の変形の修復、骨粗鬆症の改善などにも役立ちます。
大浦 では、ツボ草のエキスはどのように用いればよいでしょうか。
董和 これは、急な、激しい痛みのときに、一時的に用いると(多量に用いてもよい)速効性があります。ただ、痛みが緩解したら骨砕補植物のエキスにして、常用されるのがよいでしょう。

ほぼ100%の回復
大浦 先生のリハビリもすでに三ヵ月になろうとしていますね。
董和 はい。当初、この「神の領域」といわれた指のケガの治療実績について教えていただきました。完全に元通りになるのは10%ほどで、指先が手のひらに付くようになる人でも30%くらい。また、指が完全に伸展できない人が半分はあるということでした。
大浦 それに比べたら、先生の回復ぶりはすごいですね。
董和 今日も病院で担当医の診察を受けてきました。二十日以上病院へ行っていなかったので、まずリハビリステーションへ行って、指の機能測定をしました。
大浦 結果はどうでしたか。
董和 これまでのところ指の機能回復は96%に達しており、結論はExcellent (最高)という評価でした。
大浦 もう、普通の指とほとんど動きは変わらないですね。
董和 主治医は私の手を見るなり「これはすごい!」と言いました。「この部位の手術はいくら設備が良くても、こんなに良くなる症例はない」と興奮ぎみでした。
大浦 董和先生の努力の賜物だと思います。
董和 手術していただいた主治医の先生や、熱心に指導していただいたリハビリの先生をはじめ、病院のスタッフには感謝しています。
大浦 それとツボ草のエキス、羊胎盤などのエキス等、先生が創られた健康食品の効果も絶大です。
董和 そうですね。これらがなかったら私もここまで頑張れなかったと思います。今回のリハビリを通して、改めてツボ草エキスの鎮痛、抗炎症、血流改善などの効果を実感しました。
大浦 その応用範囲は広いですからね。
董和 ええ。私が体験したようなケガや手術、リハビリの痛みから、各種の炎症、打撲・骨折の痛み、産後の痛み等々、あらゆる痛みにきっと役立つと思います。
大浦 本当にそうですね。本日は貴重な体験談をどうもありがとうございました。
(了)