董和先生に聴く
体験例集(中)「地膚子」
聞き手:大浦純孝 社長

大浦  今回は地膚子(じふし/植物)の症例についてお話しいただくわけですが、私が皆さんにおすすめしていても、効いているのが実感できます。
董和  面白いのは人ばかりでなく、動物(ペット)に対してもかなりの反響があったことです。

ペットも大喜び
大浦 では、はじめに動物の例をひとつ挙げていただけませんか。
董和 これはK漢方堂のご主人からいただいた報告です。愛犬の名前はリナコ(小学校の娘さんが漫画の主人公の名から付けたらしい)です。そのリナコが昨年の秋ごろから急に体を引っかいたり、歯でかむようになりました。そのためピンク色だったきれいな肌が赤くなってしまいました。たまりかねて昨年9月26日に、動物病院へ連れて行かれたそうです。
大浦 どのような治療を受けたのでしょうか。
董和 いわゆる“パラボラアンテナ”を付けられ、なんとも情けない格好で、抗生物質とかゆみ止めの薬をもらい、「とりあえず一週間、これで様子をみましょう」と言われて帰ってきました。
大浦 それで効果のほどはどうだったのでしょう?
董和 「薬を飲ませている間は少しマシなのですが、首のパラボラアンテナを掻く音は夜中、よく聞こえた。薬が終ると、元に戻ったようにガリガリ、バリバリと音を立てた」そうです。
大浦 ほとんど効果がなかったということですね。
董和 そこで娘さんが「違う病院へ連れて行こうか」と言われたそうですが、ご主人は「もしかしたら董和先生の地膚子(植物)が効くかもしれない」といって地膚子などの薬草を食べさせてみたそうです。
大浦 人間に効果があるものなら、犬にもきっと効果があるでしょうね。何日くらいで効いてきたのでしょうか。
董和 10月7日に食べさせ始めて、五日目にはもうお腹の赤さが減っていました。リナコは八歳、体重は4キロ強です。早く治ってほしかったので少し多めに食べさせたそうですが、思ったより早く治ったと喜ばれていました。
 他にもたくさんの症例をいただいておりますが、愛犬、愛猫の皮膚炎でお困りの方には、地膚子などの薬草がきっとお役に立つと思います。

地膚子とは?
大浦 地膚子(植物)については以前にも(平成20年7月号)少しお話しいただきましたが、改めて説明していただけませんか。
董和 地膚子はアカザ科のホウキギ(帚木)の種子です。ホウキギは高さ1mくらいになり、枝葉がよく茂ります。これを干して葉を落とし束ねて草帚(くさぼうき)を作るのでこの名があります。一方、種子は“とんぶり”と呼ばれ食用にされます。その味は"畑のキャビア"と称されるほどです。江戸時代には、若葉を煮物や和え物にして食べたそうです。
大浦 食用にされるくらいですから、安全性には全く問題がないわけですね。ところで漢方的には、地膚子にはどのような効能があるのでしょうか。
董和 地膚子の気味は甘くて、やや苦いとされます。主に腎・膀胱経に働き、利尿、解毒などの作用がある。また、清熱(体の熱をとる)利湿(余剰水分を排泄する)の効能があり、特に湿熱型(熱がこもり水分代謝が悪い)のかゆみによいとされています。
大浦 病名でいうと、どのような病気になりますか。
董和 蕁麻疹、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、急・慢性湿疹、皮膚掻痒症その他、いろいろな皮膚のかゆみに有効です。また民間でも、皮膚のかゆみのほか、排尿痛、風疹などによく用いられます。
大浦 先生ご自身も、この地膚子などの薬草で助かったことがあるそうですね。
董和 昨年の4月でしたが、突然蕁麻疹が出て大変かゆく、難儀しました。いろいろな漢方薬を飲んだり、抗ヒスタミン剤を飲んだりしても、なかなか良くなりませんでした。そこで文献を調べて探し当て、煎じて飲んでみたのが地膚子などの薬草でした。これでようやく強いかゆみが治まりました。これが、私がかゆみに有効な地膚子などを"発見"するきっかけとなった最初の出来事でした。

「龍葵」の働き
大浦 地膚子はこれだけを食べればよいのでしょうか。
董和 研究の結果、地膚子単独で用いるより、いくつかの生薬と合わせて食べる方が効果が高くなることがわかりました。
大浦 合わせたらよいのはどのような生薬でしょうか。
董和 地膚子の他に、龍葵(りゅうき)鶏血藤(けいけっとう)などです。
大浦 それぞれについて効用などを説明してください。
董和 龍葵というのはナス科の植物で、山菜として食べている人もおり、台湾の人は大好きのようです。薬効としては、解毒(血をきれいにする)によりかゆみを止めるとされますが、他に清熱、活血、消腫などの働きもあるといわれます。
大浦 この植物は科学的に解明されているのでしょうか。
董和 ええ。龍葵には各種の配糖体アルカロイドが含まれています。その一つ、ソラソジンという成分には抗炎症作用があることがわかっています。ソラソジンにはコルチゾン(副腎皮質ホルモン)に似た作用があり、血管の透過性およびヒアルロニダーゼ(組織の透過性を増加させる)の活性を低下させ、アレルギー性、火傷性、ヒスタミン性のショックから体を守る作用があるといわれます。
大浦 かゆみ止めの効果はどうなのでしょうか。
董和 これは臨床的に確かめられています。広範囲に皮膚を侵され、かゆみが激しい湿疹の患者50例について経過が観察されています。これらの患者に、初めはカルシウム剤やプロカインの静脈注射、プロメタジンやジフェンヒドラミンの服用などが試みられましたが、一時的な安静しか得られませんでした。
大浦 そこで龍葵が試されたわけですね。
董和 そうです。すると龍葵の服用後は水腫がしだいに消えていき、かゆみも軽減しました。著効のあったものは7例で、服用後3~4時間はかゆみが止まっていました。25例は2~3時間かゆみが止まっており、これらの人たちは睡眠も比較的よく取れたということです。無効は8例で、残り10例はかゆみがやや軽減したと報告されています。

「鶏血藤」の効用
大浦 では、鶏血藤の方はどうでしょうか。
董和 これはマメ科の蔓性の植物です。漢方的には養血(血を潤わせる)補血(血を増やす)活血(血流をよくする)などの働きがあるとされます。
大浦 主に、どのような症状に用いられるのでしょうか。
董和 漢方の補血の要薬である「当帰」(セリ科トウキの根)と似た働きがあり、貧血や血行不良、生理不順、無月経などに使われます。
大浦 かゆみ止めにはどのような働きが関係するのでしょうか。
董和 アトピー性皮膚炎や老人性掻痒症などの慢性的なかゆみは、血液の中の潤い物質が不足していること(陰虚、血虚)が原因と漢方では考えています。したがって、こういうかゆみは血液を潤わせることによって良くなります。それに鶏血藤の養血、補血、活血作用が役立ちます。乾燥肌の改善にも役立ちます。
大浦 その他には、合わせた方がよいというものはありませんか。
董和 あと二つほどあります。一つは「シイ」で、もう一つは「鹿角霊芝」です。
大浦 これらもかいつまんで説明してください。
董和 シイはシイ科の植物です。薬効は「血を涼め、オを去る」、すなわち血の熱を取って、血をきれいにする働きがあるとされます。鹿角霊芝はマンネンタケ科のキノコで、鶏血藤と同じように滋養強壮、養血、活血の作用があり、免疫力を高め、慢性病体質を改善するといわれています。

頑固な蕁麻疹
大浦 少し説明が長くなりましたが、この辺でひとつ、体験例をご披露いただけませんか。
董和 昨年、私が激しい蕁麻疹を患ったとき、地膚子や龍葵などを食べてよくなったことを多くの会員の方々に紹介し、おすすめしたところ、これを試された薬局の先生方から多くの報告をいただきました。その中からいくつか紹介します。
大浦 はじめはどんな例でしょうか。
董和 これはT薬局の先生からいただいた症例です。夜の九時過ぎに、84歳の一人暮らしの女性のお客さんが「夕方、牛乳やチーズ、バターを食べたところ、急に全身に蕁麻疹が出て、かゆくて仕方がない。何かよい薬はありませんか」といって来られたそうです。
 そこでT先生は、地膚子や龍葵、鶏血藤などの薬草をおすすめしました。そして、これらを食べて一時間ほど経ったころ電話をしてみたら「蕁麻疹は消えて、かゆみも無くなっていた」そうです。それでも「まだ蕁麻疹が出るようなら、続けて飲んでください」と言っておいたそうです。
大浦 かなり早い効き目ですね。

董和 ええ。後にT先生から「一人暮らしのお年寄りが夜中に病院へ行くのは大変です。地膚子や龍葵などの薬草が効いて、本当に助かりました。ありがとうございました」と御礼を言われました。
大浦 他には、どのような症例があるでしょうか。
董和 S薬局の先生からは二つの奏功例をいただきました。一つは85歳の女性の例です。後頭部から首にかけて皮膚が赤くなり、大変かゆい。全身もあちこちが赤くなって、かゆみがひどいという。これは三日前に髪の毛を剃ってから発症したそうです。医者は、牛乳、卵、パンを食べないように指示し、かゆみ止めの薬をくれただけでした。しかしS先生は、かゆみ止めの薬は飲まずに、地膚子や龍葵などの薬草を食べてみるようにすすめられました。ただ、その量がよく分からなかったので、どれくらい食べたらよいのか、私のところへ電話がかかってきました。
大浦 実際、どれくらい摂ったらよいのでしょうか。
董和 私は次のように答えました。一般に、高齢者は薬物の代謝能力や体外への排泄能力が低下しますから、薬剤の摂取量は成人より少なくするのがよい。しかし、地膚子や龍葵などは食品で、毒性もありませんから、高齢者が大量に用いても害はありません。むしろ目安量の二~三倍くらい、多めに食べた方が高齢の方には早く効くと思います、と。
大浦 効果はその通りになったのでしょうか。
董和 ええ。次の日には、背中とお尻にすこし赤みとかゆみが残っていましたが、全身的にかなり良くなっていたそうです。S先生は「もちろん完全に症状が消えるまで食べつづけてください」とつけ加えることを忘れませんでした。
大浦 S薬局からのもう一つの報告はどのような症例ですか。
董和 あるときS薬局に、81歳の女性がかゆみ止めの薬が欲しいといって来られたそうです。一週間前から、顔、目の上、胸などの皮膚が赤くなり、かゆみも出てきました。原因はよく分からないのですが、以前に化粧品で肌が荒れたことがあったそうです。
大浦 これにも地膚子や龍葵などで対応されたわけですね。
董和 そうです。(どれくらい時間が経過したのかわかりませんが)その日の夕方にはかゆみが和らぎ、赤みも薄くなったと連絡があったということです。
大浦 たしかに地膚子や龍葵などの薬草には、かゆみを鎮める優れた効果があるのがわかります。詳しくは次回おうかがいしますが、アトピー性皮膚炎などの厄介なかゆみにも大いに期待が持てますね。