董和先生に聴く
体験例集(下)「地膚子」
聞き手:大浦純孝 社長
 

大浦 引きつづき、かゆみに有効な地膚子(ホウキグサの種子)などの話をうかがっていきますが、皮膚科で治療してもなかなか治らなかったかゆみが、地膚子や龍葵、鶏血藤などを合わせて摂ったら、きれいに治った例があるそうですね。

董和 Y薬局の先生からいただいた報告です。その患者さんは、腕に紅斑と激しいかゆみが現われ、皮膚科でステロイドの外用薬とかゆみ止めの内服薬を投与されていましたが、改善しませんでした。また別の漢方薬局で冠元顆粒や白花蛇舌草などをもらっていたのですが、これも全く効きませんでした。Y薬局からは乳酸菌製剤を中心に、いくつかの漢方製剤を組み合わせて出されたそうです。

大浦 それで良くなられたのですか。

董和 いえ。一応はきれいになったのですが、月に一、二度、発作的に炎症が増悪するのは抑えられませんでした。そこで地膚子や龍葵などの薬草が加えられました。すると、炎症が起こってかゆみが激しくなっても、地膚子などの薬草を少し食べるだけで症状が治まるようになりました。今では、きれいな状態が維持できているそうです。Y先生は「地膚子などの薬草は効き目がシャープで、いつも助かっています」と言われています。


かゆみはなぜ起こる?

大浦 ところで、かゆみはどのようにして起こるのでしょうか。

董和 まず、かゆみの種類ですが、IgE抗体が関与しているアレルギー性のものと、IgE抗体が関与しない非アレルギー性のものとがあります。急性のかゆみ、例えばエビやカニなどを食べてすぐに起こるものはアレルギー性が強いですが、長くつづく慢性のかゆみは非アレルギー性のことが多いです。これにはストレスが大きく関わっていると思います。

大浦 アレルギー性と非アレルギー性とで、かゆみの起こり方は違いますか。

董和 どちらも、最終的には肥満細胞からヒスタミンが放出され、これが血管に作用して血管を拡張させます。そのため血管の透過性が亢進し、血漿成分が血管外へ漏出し、発疹やかゆみが起こります。

大浦 このヒスタミンの働きをブロックするのが抗ヒスタミン剤ですね。ところで漢方では、かゆみの原因はどのように考えているのでしょうか。

董和 漢方ではいろいろな原因が考えられています。例えば、風寒型のかゆみ、風熱型のかゆみ、湿熱型のかゆみ、血熱型のかゆみ、血燥型のかゆみ、熱毒型のかゆみなどです。ですから、漢方ではきちんと弁証論治(体質や症状を見極め、それに合わせて処方を選ぶこと)を行なわないとよくなりません。

大浦 地膚子や龍葵などの生薬は、こうした原因に関わりなく効果があるのでしょうか。

董和 そうです。私はこれまでの経験から、地膚子や龍葵や鶏血藤などがかゆみに効くのは、これらの生薬に抗ヒスタミン作用があるからではないかと考えています。それが血管の透過性を抑制し、かゆみを抑えるのではないかと思います。


抗ヒスタミン剤に匹敵

大浦 先生ご自身も、経験があるそうですね。

董和 昨年の四月ごろ、全身に蕁麻疹が出ました。発疹部の皮膚はかなり熱を帯びていました。それが地膚子や龍葵などの生薬を食べたら、30分くらいで皮膚の熱は治まり、それとともにかゆみが消えていくのが自分でもわかりました。

大浦 他にも、症例があるでしょうか。

董和 ある女性が虫に刺されました。患部が赤く腫れて、肌に触るとかなり強い熱感がありました。そこで地膚子や龍葵などの薬草を食べてもらいました。すると、やはり30分ほどで患部の熱感はなくなり、痛みもかゆみも消えていきました。

大浦 地膚子や龍葵など五つの薬草を合わせたものは、どれくらいの効力になるのでしょうか。

董和 以前に、私自身の蕁麻疹のとき、抗ヒスタミン剤(アレグラ60㎎)を一日2錠飲みましたが、このときの感じに比べると、地膚子や龍葵などの薬草の効き目はアレグラより良いと実感しました。

大浦 それに新薬は、はじめは良くてもだんだん慣れてきて、量を増やさなければ効かなくなってきますね。

董和 ええ。でも、地膚子や龍葵などにはそれがありませんし、効き目も早く現われ、抗ヒスタミン剤に劣りません。続けて用いることができ、かゆみの程度によって食べる量を自由に加減できます。

大浦 近年、お年寄りに老人性掻痒症が増えています。地膚子や龍葵などの薬草はこれにも有効でしょうか。

董和 かゆみですから悪くはないと思います。ただ、漢方では、これは年をとって体に陰血(潤い)が不足したことが原因と考えています。ですから、その治療も合わせて行なう必要があります。

大浦 それにはどのようなものを用いればよいでしょうか。

董和 最も良いのは亀版(亀の腹殻)です。亀版にどのようなものを組み合わせれば最適なものができるか、いま研究中です。次回の対談では、その成果をご披露できるのではないかと思っています。


アトピー性皮膚炎

大浦 ところで、かゆみで真っ先に思い浮かぶのはアトピー性皮膚炎ですが、これに対して地膚子や龍葵などの薬草はどうでしょうか。

董和 これに関しては、私は次のように考えています。地膚子や龍葵などは、アレルギー性でも非アレルギー性でも、あらゆるかゆみに対して有効です。アトピーのかゆみにも効果はあります。しかし、これらだけでアトピー性皮膚炎を治すのは難しいと思います。

大浦 それはなぜでしょうか。

董和 漢方では、アトピー性皮膚炎は、かゆみが風のように突然やってきたり消えたりするので、「風」の病気の一種と考えています。ですから、これに対する治療も合わせて行なわなければなりません。

大浦 それはどのような治療でしょうか。

董和 それは「治血」の方法です。漢方には、「風」の病いの治療に関して「治風先治血、血行風自滅」という理論があります。すなわち「風の病いを治すには先ず血の治療をする。血の流れが良くなれば風邪は自然に消える」というのです。

大浦 具体的にはどのような治療をするのでしょうか。

董和 一つは駆瘀血(古血を除き、血の流れを良くする)、もう一つは解毒(血の汚れをきれいにする)、そして養血(補血により肌に潤いを与える)です。

大浦 長期問患っておられるアトピーの患者さんは、特有の黒っぽい汚れた肌の色をしていますね。あれは古血の色ですか。

董和 ええ、瘀血の色ですね。アトピーの治療では、このように瘀血の除去や血行の促進など、「血」の治療を合わせて行なう必要があります。


紫霊芝、田七人参など

大浦 今から7年前(平成十四年)、先生は紫霊芝や田七人参、冬虫夏草など、いろいろな薬草を合わせてアトピーの患者さんに試されました。私も依頼されて、幾人かのアトピーの方に試してみましたが、大変良い結果が得られました。

董和 あれは紫霊芝の他に、田七人参、冬虫夏草、白花蛇舌草、山慈姑、黄精、三稜、莪朮などを、いろいろと組み合わせて用いました。

大浦 これらは瘀血に対するものなのでしょうか。

董和 瘀血ばかりでなく解毒にも養血にも働き、「治血」に対して総合的な効果があります。胃腸の健康にも役立ちます。

大浦 あのとき、私のところでは三人の患者さんに劇的な効果があり、大変喜ばれました。

董和 そのことを私の方でも他の薬局の先生方にお教えし、追試をお願いしたところ、やはり大きな効果があったという報告をいくつもいただきました。よほど難治のアトピーは別として、普通のアトピーならこの紫霊芝や田七人参、冬虫夏草などを合わせたもので、かなりの効果が期待できます。これに地膚子や龍葵などを加えると、さらに効果が高まると思います。

大浦 ただ、時々、炎症が激しく、かゆみもひどくて、どうにもならないという方がおられます。

董和 そういう方は「紫霊芝や田七人参、冬虫夏草など」に「地膚子や龍葵など」を合わせ、さらに「大青葉、金銀花(スイカズラの花)など」の生薬を合わせていただくとよいでしょう。

大浦 大青葉や金銀花などを加える目安となるのはどういう症状ですか。

董和 それは皮膚の炎症が激しく、赤みが強いときです。大青葉や金銀花などには清熱(熱をとる)涼血(血を冷ます)などの作用があります。アトピーがひどいときは皮膚が炎症を起こし、赤くなって、熱を持っています。これを少し冷やしてやる必要があるのです。


接触性皮膚炎

大浦 最近、接触性皮膚炎が多いですが、これは地膚子や龍葵などだけでよいでしょうか。

董和 普通はそれで大丈夫です。これについては私にも経験があります。5年くらい前から毎年、耳が我慢できないくらいかゆく、時々炎症も起こしました。触ると熱く、汁が出るほどでした。病院の皮膚科で診てもらったところ「これは接触性皮膚炎ですね」と言われました。私はよく右側を下にして寝ていたので、耳と枕が接触して皮膚炎を起こしたようです。

大浦どのような治療をされていたのでしょうか。

董和 以前は、紫霊芝や田七人参、冬虫夏草などを配合したものを水で溶いて塗っていました。これである程度は抑えられました。しかし、これは黒っぽい色ですから外見が汚らしく、困りました。

大浦 今は良くなっているようですね。

董和 かゆみに地膚子や龍葵などの生薬が良いことに気づいて、これらを食べてみたところ、すっかり良くなりました。今年は全く炎症が起こっていません。これは主婦湿疹などにも有効です。

大浦 水ぶくれのようになった蕁麻疹が出る人がありますが、これにも有効でしょうか。

董和 有効です。赤みがあれば大青葉や金銀花などを加えるとなおよいでしょう。早くかゆみが止まると思います。

大浦 赤みがない人も見かけますが…。

董和 赤みがない場合や、よくわからないというときは、まず地膚子や龍葵などの薬草を試してみます。それでも効果がない場合に、大青葉や金銀花などを加えるという方法でよいと思います。


「平性」である

大浦 先ほど、先生は、漢方にはきちんとした弁証論治が必要だと言われました。地膚子や龍葵などについては弁証論治は必要ないのでしょうか。

董和 ええ、必要ありません。

大浦 それはどうしてでしょう?

董和 これらに関しては、かゆみに対して有効であるばかりでなく、それぞれの生薬の気味(寒熱などの性質)を勘案して、「平性」(温冷どちらにも偏らない)になるようにバランスを取ってあるからです。

大浦 平性であれば、どのような体質の人が用いても支障はないわけですね。

董和 その上、かゆみに対する有効成分が働きやすくなり、いっそう効果が高まります。忙しい現代人はいちいち弁証論治をやっている時間がありません(やり方も難しい)。そういう煩わしさなしに用いられるように組み合わされています。

大浦 いずれにせよ、かゆみに対してはまず地膚子や龍葵などの生薬が基本になるということですね。

董和 効果も早く、抗ヒスタミン剤と同じくらい早く効果が現われます。

大浦 抗ヒスタミン剤は眠気を催したりしますが、地膚子や龍葵などは副作用はどうでしょうか?

董和 ありません。安心して食べていただけます。ただし、妊婦の方は避けていただいた方がよろしい。

大浦 かゆみというのは、日常、たびたび経験します。中には、厄介なものもあります。そういうとき、地膚子や龍葵などのように安全で、効果の高いものがあると、多くの人々が助かると思います。

本日はどうもありがとうございました。

(了)