董和先生に聴く
亀版と竜葵のはなし(中)  
聞き手:大浦純孝 社長

大浦 前回は、改良された新しい「亀版などの生薬」の組み合わせについて教えていただきました。今回は、もう少し亀版などの生薬の使い方について教えていただき、その後で「竜葵(リュウキ)などの生薬」のお話をうかがおうと思います。その前におさらいとして、亀版などの生薬はどのような症状のある方に有効か教えてください。

董和 ほてりやのぼせ、ノドの渇き、寝汗、足腰がだるい、無力感などの症状がある人に有効です。また私自身の体験で、亀版などの生薬が、目の乾燥感や視力低下、夜間の頻尿などにも非常に良いことがわかりました。


め ま い

大浦  最近、めまいを訴える人が多いのですが、亀版などの生薬はめまいにはどうでしょうか。

董和 陰虚(潤い不足)によるめまいには使えます。

大浦 それはどのように見分ければいいのでしょうか。

董和 陰虚によるめまいかどうかは、次のような点を見て判断します。まず、舌の肉の色です。舌に赤みがあれば陰虚と捉え、亀版などの生薬が使えます。

大浦 舌の肉の色に赤みが少なく白っぽい場合のめまいには、どのようなものを使うのでしょうか。

董和 このような舌は、胃腸が弱くて冷えがあり貧血気味の人に多くみられます。このタイプのめまいには、漢方薬の「半夏白朮天麻湯」や「苓桂朮甘湯」「帰脾湯」などで対処します。

大浦 日本の漢方治療でめまいに使うものというと「半夏白朮天麻湯」と「苓桂朮甘湯」が有名ですが、これはいくつかあるめまいのタイプの中の一つに過ぎないわけですね。次はどこを見て判断すればいいのでしょうか。

董和 舌の苔の量です。少なければ陰虚です。逆に白っぽい苔が多く、舌にベターッと付いている人のめまいには「穿山薯預植物などの生薬」を使います。

大浦 白い苔が多い舌というのは、体がどのような状態にあることを示しているのですか。

董和 漢方でいう湿・痰・食積などで、体に余分な水分が停留していたり、食べ過ぎて消化不良を起こしていることなどを表わしています。ただ、苔が多くても舌の肉の色が赤ければ、亀版などの生薬を使って差し支えありません。

大浦 その他にはどこを見て判断するのでしょうか。

董和 ほてりやのぼせの症状があるかないかです。あれば陰虚です。これらの症状がなくても、手の平が温かい、口が渇く、尿が少ないなど熱症状があれば陰虚で、亀版などの生薬が適します。


関節の痛み

大浦 頸椎の異常によってめまいが起こる人がいますが、このタイプのめまいはどのように対処すればいいでしょうか。

董和 首が痛い、肩がこるなど頸椎の変形によるめまいには「骨砕補植物などの生薬」が役立ちます。また、頭を傾けるとめまいがするときにもお勧めします。

大浦 首に問題を抱えている人には骨砕補植物などの生薬は効果が高いですね。ところで、骨粗鬆症や関節痛のある方にも亀版などの生薬がいいということですが…。

董和 腰や膝の関節の痛みには、基本的には「骨砕補植物などの生薬」を使います。ただ、お年寄りの人は年齢とともに治癒力が衰えてきますので、滋養強壮効果のあるものを併せて摂った方が効果的です。

大浦 滋養強壮効果と聞くと、多くの人は○○酒とかニンニク製品などを想像しますが、そうではないんですね。具体的には、どのようなものに滋養強壮効果があるのでしょうか。

董和 それは補腎薬(腎の機能を高めるもの)で、「補腎陰薬」と「補腎陽薬」の二種類があります。補腎陰薬の代表的なものが「亀版などの生薬」で、補腎陽薬の代表が「羊胎盤などの生薬」や「鹿茸などの生薬」です。

大浦 補腎陰か補腎陽かの違いは、どのように見分ければよいでしょうか。

董和 ほてりやのぼせがある、あるいは手の平を触ると熱い、ノドの渇きなどの症状があり、舌の肉の色が赤い人は補腎陰薬を用います。このような人は、骨砕補植物などに亀版などの生薬を併せて摂った方が効果的です。

大浦 では、補腎陽が必要な場合というのは?

董和 寒がりで、手足が冷たい、冷えると痛みが増すような人で、舌の肉の色に赤色が薄い人は補腎陽薬を用います。この場合は、骨砕補植物などに羊胎盤などの生薬を併せて食べることをお勧めします。


糖尿病

大浦 糖尿病は基本的に「黄耆茎葉などの生薬」を勧められていますが、亀版などの生薬も併せた方がいいのでしょうか。

董和 糖尿病も陰虚の症状があれば併せた方が効果的です。

大浦 糖尿病で陰虚の人は多いのでしょうか。

董和 糖尿病にはⅠ型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)とⅡ型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)があります。その中でⅠ型糖尿病の人には、口やノドの渇き、体重の減少など陰虚の症状が多くみられます。

大浦 陰虚の症状はⅡ型糖尿病の人にはあまりみられないのでしょうか。

董和 中高年に多いⅡ型糖尿病の初期には、陰虚の症状はあまりみられません。しかし、血糖値のコントロールがうまくできなくなり、糖尿病が進行して痩せてくると陰虚の症状が現われてきます。とくに糖尿病性昏睡を起こすようなときは、舌が赤く、舌苔が全くないという典型的な陰虚の症状が現われます。

大浦 亀版などの生薬は、糖尿病の合併症の予防に役立つことがありますか。

董和 糖尿病の合併症には、網膜症、腎症、神経障害などがあり、この三つを糖尿病の三大合併症といいます。これらの原因は、おもに血管障害が関わっているので、活血(血流をよくする)の働きのある田七人参や雁れい茶、黄耆茎葉などを組み合わせた食品をお勧めします。そこに陰虚の症状があれば亀版などの生薬を併せます。


かゆみや不妊症にも

大浦 潤い作用があるということであれば、乾燥肌や老人性掻痒症にも亀版などの生薬が役立つということですか。

董和 そうですね。肌が乾燥してかゆいとか老人性掻痒症は、漢方では、血液中の潤い物質の不足(陰虚、血虚)が原因と考えています。したがって漢方では、こういうかゆみには血液を潤わせるという方法を取ります。それには亀版などの生薬が役立ちます。かゆみが強い場合には「地膚子などの生薬」を併せます。

大浦 亀版などはホルモン作用的なものがあるように思いますが、不妊症の方にも役立つのでしょうか。

董和 漢方の不妊治療に周期療法というのがあります。月経周期を生理期、低温期(卵胞期)、排卵期、高温期(黄体期)の四つに分け、それぞれの期間に合った漢方薬を使って治療する方法です。

大浦 細かく分かれているのですね。

董和 理想的には、このようにやっていくのですが、そこまで細かくしなくても、生理期間中は駆瘀血(古血を除き、血の流れを良くする)作用のある「野牡丹科植物などの生薬」を用い、それ以外の時は「羊胎盤などの生薬」を食べるという、簡単な周期療法でも差し支えありません。この方法で妊娠された方が増えてきています。

大浦 亀版などの生薬を使うとすれば、どの期間に使うのでしょうか。

董和 羊胎盤などの生薬を食べる期間に、ほてりやのぼせなど陰虚の症状があれば、亀版などの生薬を組み合わせます。

大浦 その他、亀版などの生薬はどのような方にお勧めできますか。

董和 漢方薬の杞菊地黄丸や六味地黄丸、知柏地黄丸、麦味地黄丸、天王補心丹を利用されている全ての方にお勧めできます。

大浦 これらの漢方薬には、全て地黄が入っているので、胃がもたれることがありますね。

董和 その点、亀版などの生薬はそのようなことはありません。高濃度のエキスでありながら胃にはやさしく、効果も早く現われます。また、慢性の歯の痛みにもお勧めできます。

大浦 お話をうかがっていて、新しく考案された「亀版などの生薬」が役立ちそうな人がたくさんいるのを感じます。このような陰虚症に用いるものが、これまで日本にはなかった(漢方薬にはあるが胃がもたれる副作用がある)だけに、そういう人に、ぜひ勧めたいと思います。


「竜葵」とは?

大浦 引き続きまして、新しく考案された「竜葵(りゅうき)などの生薬」についてお話をうかがいたいと思いますが、これはどのような生薬の組み合わせなのでしょうか。

董和 竜葵と冬虫夏草菌糸体の二種類からなる簡単な組み合わせです。

大浦 まず、主材となっている竜葵について説明してください。

董和 竜葵はナス科の一年性の植物で、和名をイヌホオズキと言います。葉は広卵形で、夏に小さい花が咲きます。果実は球形の液果(果皮が肉質で、液汁の多い果実)で、黒豆くらいの大きさです。はじめは青く、熟すと黒色になります。ホオズキやナスに似ていますが、民間では、役に立たないという意味で「バカナス」とも呼ばれています。畑や道端などに生えています。

大浦 食べられるのでしょうか。

董和 台湾の人は、若葉を料理して食べることが多いようです。中国では、唐辛子の葉に似ているので「野生の唐辛子」と呼ばれ、野菜として売られています。でも、生では食べられません。

大浦 それはどうしてでしょうか。

董和 竜葵には、ソラニン、ソラソニン、ソラマルジンなどの配糖体アルカロイドが含まれています。このアルカロイドはサポニンの作用に類似しており、赤血球の膜を溶解することがあります。生でたくさん食べると、頭痛や腹痛、下痢などの中毒症状を起こすことがあるからです。

大浦 アルカロイドは、どの部分に多く含まれているのでしょうか。

董和 全草には0.20~0.25%(乾燥重量計算)ですが、未熟な青い果実には4.2%も含まれています。ただし竜葵の毒は、加熱すれば消えます。

大浦 先生は食べられたことがありますか。

董和 昨年、私は何十回も料理して食べました。独特の味があり、とても美味しいです。中国の『唐本草』という書物の中に、「竜葵は……、煮て食すことができるが、生で口にしてはならない」という食経験が書かれているように、竜葵は生食はできませんが、加熱して食べれば大丈夫です。

大浦 薬用には全草を使うのでしょうか。

董和 竜葵の果実を使いますが、私は高温で10時間以上加熱して製した濃縮エキスを用います。さらに私は、これを検査機関に依頼して、マウスを使っての急性毒性試験を行ないました。その結果、人間に換算して一日あたり120gの量を投与しても毒性は認められませんでした。これによって、加熱した竜葵は安全であると確信しました。


副作用のない抗ガン剤

大浦 高温で長時間加熱した竜葵は、安全性には全く問題がないわけですね。ところで、竜葵にはどのような効能が期待できるのでしょうか。

董和 主に抗ガン作用と抗炎症作用があります。これは、主に竜葵に含まれているアルカロイドの働きと考えられます。最近、漢方のガン治療でも竜葵のアルカロイドが注目されています。ある文献によると、肝ガン細胞(H22)や腹水型ガン細胞を移植したマウスに、竜葵のアルカロイドを含む漢方処方を投与したら、ガン細胞の増殖が顕著に抑制され、その抑制率は87.5%に達したと報告されています。

大浦 このアルカロイドの抗ガン作用の機序は、どのようなものでしょうか。

董和 大量に投与した試験結果によると、ガン細胞の細胞膜の構造と機能に影響を与え、DNAとRNAの合成ができなくなり、腫瘍の成長が抑制されることがわかったということでした。

大浦 正常細胞への影響はどうなのでしょうか。

董和 影響はありません。つまり、竜葵のアルカロイドには、ガン細胞の分裂を抑制する作用があり、その効果は化学療法に用いられる抗ガン剤とよく似ています。しかし、正常細胞には影響を及ぼさないという点で、副作用のないガン治療の救世主と言えると思います。


アポトーシス誘導作用

大浦 竜葵に含まれるどのアルカロイド成分に、ガン細胞の増殖を抑える働きがあるのか、わかっているのでしょうか。

董和 それは竜葵の活性主成分であるソラマルジンです。このソラマルジンに、ガン細胞にアポトーシスを誘導する働きがあるという研究結果が、十数年前から多く発表されているようです。

大浦 ガンの治療の一つとしてアポトーシス誘導作用のあるものを利用することがありますが、そもそもアポトーシスとはどういうことか説明していただけますか。

董和 アポトーシスとは「枯れて、落ちる」という意味で、もともと予定されたプログラムに従って細胞が死んでいくことです。つまり、役割を終えた細胞が、遺伝子の指令で自殺、崩壊するメカニズムのことをいいます。これに対し、細胞の損傷や血行不良などにより偶発的に起こる細胞死はネクローシス、または壊死と呼ばれ、アポトーシスとは区別されます。

大浦 アポトーシスは体の中ではどのようなときに起こるのでしょうか。

董和 アポトーシス作用は、組織の余分な細胞の除去、ガン化した細胞や内部に異常を起こした細胞の除去、自己抗原に反応した細胞の除去などに重要な役割を果たしています。生体内でガン化した細胞は、アポトーシスによって取り除かれており、ガンの成長を未然に防いでいます。しかし、ガンや自己免疫疾患などを発症してしまうのは、おそらく正常細胞のアポトーシス作用に異常が生じているからと考えられています。

大浦 竜葵にはアポトーシス誘導作用ばかりでなく、抗炎症作用もあるということですが…。

董和 歯周病による歯茎の炎症などを抑える働きがあります。清熱解毒(熱を取り毒を下ろす)の働きもあります。

大浦 清熱作用があるということになると、竜葵などの生薬が体を冷やすということはないのでしょうか。

董和 竜葵だけではなく冬虫夏草菌糸体と組み合わせているので、冷やすことはありません。

大浦 冬虫夏草については以前にもお話しいただきましたが、もう一度簡単に教えてください。

董和 冬虫夏草はキノコの一種で、古くから不老不死、強壮の妙薬とされ、補肺腎、すなわち肺と腎の働きを高める働きがあります。また肝機能向上作用があり、心臓にも良く、心肺機能を高める働きがあります。さらに、免疫力強化作用が強く、体を温める作用もあります。

大浦 冬虫夏草は粉末を使われているのでしょうか。

董和 私のところでは冬虫夏草菌糸体のエキスを使っています。

大浦 竜葵と冬虫夏草菌糸体のエキスを組み合わされたものは、ガンの予防や治療、ポリープ、歯の痛みなどに役立つそうですが、それらの症例については次回に詳しくお話しいただくことにします。