董和先生に聴く
亀版と竜葵のはなし(下)
聞き手:大浦純孝 社長


大浦 今回は「竜葵(りゅうき)などの生薬」を用いた症例についてうかがいたいと思います。まず、ガンの予防や治療についてですが、中国では竜葵はどのようなガンの治療に使われているのでしょうか。

董和 中国の多くの文献には、竜葵は乳ガンや食道ガン、肺ガン、直腸ガン、膀胱ガン、子宮頸ガン、白血病、それにガンによる腹水にも治療効果があると報告されています。

大浦 それは、前回に説明していただいた、竜葵に含まれる成分(アルカロイド)のアポトーシス誘導作用によるものでしょうか。

董和 そうだと思いますが、中国ではアポトーシス誘導作用とは言わずに、ガン細胞の分裂を抑制する力があるとしています。

大浦 ガン細胞が分裂しなかったら、ガンが大きくなることはありませんね。

董和 また、竜葵を手術や化学療法、放射線治療と組み合わせて、子宮絨毛膜ガンや卵巣ガン、肝臓ガンなどに使って効果を上げているという報告もあります。


直腸ガン

大浦 先生もガンの人に竜葵を勧められたそうですが、どのような症例でしょうか。

董和 七~八年前に直腸ガンの手術をされた女性です。昨年、突然下痢が続いてなかなか止まらないので、病院で検査すると直腸ガンが再発し、転移もあることが判明し、余命が半年しかないと言われました。

大浦 どこに転移していたのですか。

董和 肝臓と肺、それに腹膜にも転移していて腹水も溜まっていました。直腸ガンの手術後、毎週48時間、抗ガン剤の点滴治療を受けています。そこで昨年の10月から、竜葵の果実 6gを煎じて毎日飲むように勧めました。

大浦 竜葵の果実だけを煎服されたのでしょうか。

董和 いえ、免疫力を高める働きなどがある「紫霊芝や冬虫夏草、田七人参などの生薬」も併せて食べてもらいました。

大浦 その後、何か症状に変化は現われたのでしょうか。

董和 十二月頃に、本人から「大腸に詰まっていた物が体から出て行った感じがします。これは大腸に転移して、手術で取れていなかったガンが排出されたのではないでしょうか」という報告を受けました。それからは食欲も戻り、回復されつつあります。

大浦 転移した方のガンにも、何か変化があったのでしょうか。

董和 今年の四月の精密検査によると、肺のガンは5個から3個に減り、肝臓のガンの大きさも半分に縮小しています。今は「竜葵などの生薬」と「紫霊芝や冬虫夏草、田七人参などの生薬」を食べ続けておられます。


腎嚢胞

大浦 他には、どのような症例がありますか。

董和 58歳の女性で、腎嚢胞の中に影があり腫瘍の可能性がある、と言われた人があります。この女性は、十三年前から腎臓と肝臓に多発性嚢胞がありましたが、とくに今まで治療はしていませんでした。

大浦 嚢胞というのは、病的に生じた袋状のもので、内部に体液と同じような液体が入っているものですね。

董和 昨年の10月、腎孟炎にかかり、その時の検査で腎臓の嚢胞の中に影が見つかりました。ただ、嚢胞の壁が厚くて、それが血の塊なのか腫瘍なのか判断できないため、三ヵ月間様子をみることになりました。三ヵ月後の検査で、腫瘍であれば腎臓の摘出手術をすると言われました。

大浦 この女性にはどのようなものを勧められたのですか。

董和 先の直腸ガンの人と同じように、竜葵の果実を 6g煎じて飲むこと、それと紫霊芝や冬虫夏草、田七人参などの生薬を毎日食べてもらいました。その結果、三ヵ月後の再検査では嚢胞の中の影が消えていました。

大浦 ところで、嚢胞には腎嚢胞や肝嚢胞、膵嚢胞などがありますが、なかなか効くものがありません。嚢胞にはどのようなものが役立つのでしょうか。

董和  嚢胞の治療には利尿作用のあるものが必要です。竜葵にはアポトーシス誘導作用や抗炎症作用の他に、利尿作用もあります。「竜葵などの生薬」の中には冬虫夏草菌糸体エキスも含まれているので、嚢胞やガンによる腹水などにも役立つと思います。


歯の痛み

大浦  竜葵などの生薬は歯の健康にも役立つとお聞きしましたが、董和先生ご自身の歯の痛みにも良かったそうですね。

董和 昨年の二月頃から、左の上の第一臼歯の歯茎が腫れ、炎症と痛みが出てきました。その後、歯科医院で治療を受けていましたが、良くなったり悪くなったりをくり返し、完治することはありませんでした。そして治療中の今年の三月、この歯が急性歯髄炎を起こしてしまいました。

大浦 歯髄炎というのは、神経と血管が通っている歯の中心部の歯髄に炎症が起こるものですね。どのような症状だったのでしょうか。

董和 最初は、冷たい水や熱いお湯を口に入れたときに痛むという程度でした。ところが徐々に痛みがひどくなってきて、二、三日後には、何もしなくてもズキズキと激痛が起こるようになりました。

大浦 歯科医院ではどのような治療をされたのですか。

董和 抗生物質と解熱・鎮痛・消炎剤が処方されました。しかし効果がなく、最後には、歯髄を取り除く(俗に、歯の神経を抜く)治療法しかないと言われました。それを断って、何とか自分で治そうと試みました。

大浦 どのように対処されたんですか。

董和 漢方薬の煎じ薬や、抗炎症作用のある「苦地胆植物」、抗炎症・鎮痛作用のある「ツボ草などの生薬」と「竜葵などの生薬」そして「亀版などの生薬」と、有効と思われるあらゆるものを毎日食べ続けました。

大浦 それで歯髄炎の痛みはよくなったのですか。

董和 何とか自発性の痛みは治まってきました。でも、歯の周りの炎症はまだ残っているようで、軽く舌が歯茎に触れるだけでも激痛が起こりました。

大浦 それでは食べるのも苦労されたでしょうね。

董和 毎日、おかゆと豆腐が中心の食事でした。歯科医院の治療も自分の治療も思うようにいかず、果たして治るのだろうかと、非常に心配しました。


歯痛の神薬

大浦 お手上げ状態だったわけですね。

董和 ええ。そのような状態だったのに、四月に竹の子料理を食べ、激痛に見舞われてしまいました。その時、竜葵などの生薬はどうだろうかと思いました。

大浦 普通の飲み方とは少し違った飲み方をされたとか。

董和 すぐには飲み込まず、しばらく口に含んでいて、更に痛みのある歯茎に竜葵の成分を直接付けました。すると激痛が次第に治まってきました。

大浦 一日に何回くらいされたのですか。

董和 一日に6~10回はくり返しました。毎日行なっていると、日に日に痛みが薄れていき、五日目には痛みも炎症もほとんどなくなりました。非常に硬いものはまだ無理ですが、だいたいのものは食べられるようになりました。

大浦 これは今回のような痛みだけでなく、他の歯の痛みに対しても有効なのでしょうか。

董和 全ての歯の痛みに有効かどうかはまだ分かりません。ただ、一年にわたって私を苦しめた原因不明の歯の痛みが、僅か五日間でほとんどなくなりました。これからは「竜葵などの生薬」の歯の痛みを抑える働きを、自信を持って皆様にお伝えして行きたいと思います。


早期に改善

大浦 竜葵などの生薬の外用で、同じように歯痛が改善された症例があるそうですね。

董和 私と同じような激痛がなかなか治らなかった五十代の女性です。外用として使い始めたときは、半信半疑でした。

大浦 その女性は、一日何回くらい用いられたのでしょうか。

董和 一日目は昼と夜の二回、二日目は昼だけでしたが、何となく良くなってきたようで、次の日も一回用いられました。この時点で、これは効くと確信されたそうです。

大浦 この女性もかなり早い効き目ですね。

董和 完全に痛みがなくなったわけではありませんが、四回試しただけで、水や熱いお湯を飲んでも平気で、以前とは比べものにならないほどに回復されました。

大浦 なぜ、竜葵などの生薬を歯の痛みに使おうと思われたのでしょうか。

董和 『全国中草薬滙編・竜葵』という書物の中に「清熱解毒、利水消腫の効能あり。風邪の発熱、歯痛、慢性気管支炎、赤痢、泌尿器系感染症、乳腺炎、帯下、癌などの治療に用いる」と書かれていたからです。

大浦 これはナス科の竜葵に含まれているアルカロイドの働きでしょうか。

董和 そうだと思います。竜葵などの生薬の外用が、これほど歯の痛みに効果があるとは思っていませんでした。人間医学社でも、ナスのヘタの黒焼きを歯周病の予防などに使われていますね。

大浦 当社には、古くからナスの黒焼きと粗塩からなる「ナスター」があり、歯周病の予防・改善などのために、これで歯茎をマッサージすることをお勧めしています。

董和 竜葵と同じナス科ですから効果があるのは納得できます。とくに竜葵などの生薬は外用に期待できます。現在、経過観察中ですが、歯の痛みの外に、子宮頸ガンや胃や腸のポリープなどに内用と外用の両方に使ってもらっています。


歯の痛みは「熱」

大浦 ところで歯の痛みは、漢方的にはどのように考えられるのでしょうか。

董和 漢方的には歯の痛みや炎症は、ほとんど「熱」と関係があります。その熱は「実証」と「虚証」に分けられます。実証の熱は、急性炎症期ともいえ「胃の熱」が原因しています。

大浦 胃の熱はどのようなときに起こるのですか。

董和 食べ過ぎたり飲み過ぎて消化不良を起こすと胃に熱が溜まります。その胃の熱が上昇すると、歯肉炎や初期の歯周病などを起こします。

大浦 胃の熱を取り除くには、例えばどのようなものが役立つのですか。

董和 漢方薬では「清胃散」などで対処します。また、抗炎症・鎮痛作用のある「苦地胆植物」や「ツボ草などの生薬」も役立ちます。

大浦 虚証の熱の原因は何でしょうか。

董和 少し難しいかもしれませんが、「腎の虚火」が原因です。

大浦 虚火というのはどのような現象をさすのですか。

董和 年をとると腎虚(腎の働きの衰え)になってきます。それに伴って体の熱感やのぼせ、手の平や足の裏のほてり、ノドの渇きなど熱証(虚熱)の症状を呈するようになります。これを腎の虚火といいます。五十代以上になってくると歯の痛みの原因が、胃の熱から腎の虚火へと変わっていくことが多いです。

大浦 漢方でいう「腎」というのは、腎臓の働き以外に、骨や歯を丈夫にする働きもありますね。

董和 この働きが衰えてくると、歯茎が痩せてきて、歯が動き、抜けやすくなります。

大浦 では、腎の虚火には、どのようなものが役立つでしょうか。

董和 補腎効果のあるものが必要になります。それは腎の虚火を鎮める「亀版などの生薬」や補腎強骨作用のある「骨砕補などの生薬」です。これらを長く食べ続けていると歯を丈夫にするのに役立ちます。そして、歯の痛みには「竜葵などの生薬」の外用をお勧めします。


「以毒攻毒」

大浦 竜葵などの生薬は、その他にどのような症状に有効でしょうか。

董和 N薬局の先生から、帯状疱疹後神経痛に竜葵などの生薬が効いたという報告をいただきました。

大浦 神経痛は基本的には「蛇エキスなどの生薬」を勧められることが多いですが、竜葵などの生薬もよいのですか。

董和 この人は蛇エキスなどの生薬とツボ草などの生薬を食べられたのですが、あまり効かなかったそうです。そこで竜葵などの生薬とツボ草などの生薬を併せて摂ったところ効いたそうです。

大浦 なぜ竜葵などの生薬を用いたら良かったのですか。

董和 これはあくまでも推測ですが、帯状疱疹の原因であるヘルペスウイルスが体に入ってくると、普通は免疫が働いて除去しようとします。しかし、免疫から逃れたウイルスは神経細胞に感染します。このときにアポトーシス作用がうまく働けば、ウイルスに感染した細胞は取り除かれるはずです。しかし、アポトーシス作用が不十分だと神経細胞に潜んでしまい、後に帯状疱疹後神経痛を発症する原因になるのではないかと思います。

大浦 そのためヘルペスの治療には、先生はアポトーシスを誘導する働きのあるものが必要になるとお考えなのですね。

董和 竜葵に含まれているアルカロイドにはアポトーシス誘導作用があるため、帯状疱疹後神経痛に効いたのだと思います。その他、自己免疫疾患の全身性エリテマトーデスやIgA腎症などにも、この作用は有効だと思っています。N薬局の先生には、しばらく続けていただいて、またお知らせ下さいと伝えました。

大浦 竜葵に含まれるアルカロイドは様々な病気に役立ちそうですね。

董和 竜葵のアルカロイドが病気を攻撃して改善に役立ってくれるのだと思います。ただし、竜葵は生では絶対に食べないでください。加熱して食べれば大丈夫です。

大浦 これから難しい病気に竜葵などの生薬は期待できそうですね。
本日はどうもありがとうございました。

(了)