董和先生に聴く

骨砕補植物の話(中)

聞き手:大浦純孝 社長

大浦 今回も先月号に引きつづいて新しく改良された「骨砕補(こつさいほ)などの生薬」についてお話ししていただくわけですが、今回は骨砕補植物以外の組み合わされている各生薬についてお話ししていただけるのですね。

董和 はい。今回は以前とは違う生薬も組み合わせていますので、その点についても説明させていただきたいと思います。

大浦 そうですか。先生はこれまでも先生がつくられた多くの製品を、実際に使っていただいた方々の意見や評判などをもとに改良を重ねてきておられますね。その改良のスピードには、いつも感心させられます。失礼な言い方になって申し訳ないのですが、これが大会社であれば、改良したくても様々な制約があって簡単には変えられないのですが、先生のところでは先生の考え方一つで決められるところが強みだと思います。

董和 そういっていただくとうれしいです。私は常に安全で、しかも効果の高い製品づくりを心掛けていますので、これからもよろしくお願いいたします。


骨粗鬆症

大浦 いえ、こちらこそよろしくお願いいたします。さて、骨砕補などの生薬ですが、これは骨粗鬆症にも効果があるのですね。人間医学社でも骨粗鬆症で腰痛などがある人にはよくお勧めしています。

董和 骨は古くなった骨をこわす「破骨細胞」と、新しい骨を作る「骨芽細胞」の働きがバランスを取って新陳代謝を繰り返し、骨を丈夫に保っています。ところが、破骨細胞の働きが骨芽細胞を上回ると、骨の密度が次第に低下していき、やがて骨の中がスカスカになってきます。これが骨粗鬆症です。中年以降の方に多くみられ、その内の八割は女性だといわれています。

大浦 骨粗鬆症ではどのような症状が起こるのでしょうか。

董和 ごく初期のうちは、とくに痛みなどはなく、外見上も明らかな変化は見られません。骨粗鬆症が進んでくると骨がもろくなり、骨折などを起こしやすくなります。骨折は一般には外から骨に強い力が加わったときに起こります。しかし、骨粗鬆症になると日常生活の中で少し力が加わっただけでも骨折しやすくなります。なかでも最も多いのが、背骨の圧迫骨折です。転んで尻もちをついただけで、背骨がつぶれたり、ひびが入ったりします。

大浦 よく高齢の方で「身長がニセンチ低くなった」などと言われますが、こういう場合は背骨が圧迫骨折を起こしている可能性があるのですね。

董和 そうだと思います。圧迫骨折を起こすと背骨が縮んだり腰が丸くなったりします。また、つぶれた背骨が近くの神経根を圧迫することもあり、そうなると下肢に痛みやしびれがみられることもあります。しかし、必ず痛みがあるとは限らず、検査を受けるまで圧迫骨折に気づかなかったということもあります。背中が曲がると体のバランスがとりにくくなるため、些細なことで転倒しやすくなり骨折してしまいす。

大浦 転倒によって骨折するケースは、年齢が高くなるほど増えてきますね。

董和 最近増えているのが、高齢の方の大腿骨(太ももの骨)の骨折です。とくに大腿骨の付け根辺りを骨折すると、手術が必要になったり、寝たきりになってしまうなど、生活の質(QOL)が著しく低下するので、注意が必要です。

大浦 骨砕補などの生薬には骨密度を高める働きがあるのですか。

董和 大いに期待できます。ある薬局の先生から、次のような報告をいただきました。ずっと骨砕補などの生薬を食べ続けておられる七十四歳の女性の方が、上肢の骨密度(カルシウム量)を測定したところ、0.635(g/c㎡)という数値だったそうです。この数値は、同年齢の人の平均骨密度と比較すると、147%にも相当し若い成人の平均骨密度と比較しても98%で、ほとんど若い人と変わりない骨密度だったそうです。


カルシウム剤ではない

大浦 骨砕補などの生薬は、カルシウム補給という意味合いのものではありませんね。

董和 そうです。私は補腎強精のある骨砕補植物に、新たに亀の腹殻と鼈(すっぽん)の甲羅を組み合わせました(後述)。骨砕補植物は「骨が砕けたのを補う」と書くとおり、骨折など骨にかかわる専門の補腎壮骨の作用がある名薬です。これに、この働きを補助するために補腎精・強骨の作用のある亀の腹殻と鼈の甲羅を組み合わせました。これらを合わせて食べることによって、骨粗鬆症などの予防や改善に役立ちます。

大浦 先生がつくられる製品は、栄養を補給するという性質のものではなく、どちらかというと機能改善に働きかけるものというわけですね。

董和 はい。自らの自然治癒力を高めて健康を取り戻していくことが大切だと思います。単にカルシウムを補給するだけの方法は、消極的な治療としか言えません。その点、漢方は補腎精などの作用がある生薬を用いて、体の機能全般を強化し骨を丈夫にするので、積極的な治療法と言えます。

大浦 医師がすすめる骨粗鬆症の薬も、最近はその主流はカルシウム代謝に働きかけて、骨からカルシウムが抜け出すのを抑えるものになっています。骨粗鬆症だからといってカルシウム剤を多量に摂るのは感心しません。加齢によって細胞内に入り込んだカルシウムをすぐに追い出す働きが弱くなってくれば、カルシウムが細胞内にとどまってしまい、細胞が壊れてしまいかねません。年をとって医者にすすめられたからといって、乳製品を熱心に摂る人がいますが、これは考え直さないといけないと思います。むしろ、海藻とか小魚、ごま、削りカツオといった、どちらかといえば吸収率が悪いとされるものでカルシウムを補給することを心掛けるべきだと思います。

董和 私もその通りだと思います。やはり、日頃の食生活はとても大事ですね。


亀とスッポン

大浦 ところで、今回、新しく改良された骨砕補などの生薬に含まれている亀の腹殻と鼈の甲羅は、とくに骨粗鬆症対策として入っているのですか。

董和 そうです。骨粗鬆症はカルシウム不足でも起こりますが、漢方では、骨は五臓六腑の「腎」と深く関係していると考えています。この腎は、西洋医学でいう腎臓の機能も含みますが、成長、発育、生殖など生命の根源的な働きを指しています。その生理機能にはいろいろとあり、その一つに「腎は骨を主る」という働きがあります。年をとると腎の働きが衰え(腎虚)てきます。腎虚になると骨がもろくなる、歯がグラグラする、足腰がだるくなるなどの症状が現われてきます。

大浦 この腎虚に亀の腹殻や鼈の甲羅が役立つのですね。

董和 はい。亀の腹殻はイシガメ科のクサガメの腹甲を乾燥させたもので、生薬名を亀版といいます。滋陰潜陽(潤い物質を強化して、上に昇った熱を下げる)、益腎強骨(腎精不足による足腰の弱りを強化する)の作用があります。老化による骨粗鬆症や関節の軟骨の減少を改善するのに役立ちます。

大浦 鼈(すっぽん)の甲羅にも同じ働きがあるのですか。

董和 鼈の甲羅はスッポン科のシナスッポンの背甲を乾燥させたもので、生薬名は鼈甲(べっこう)といいます。亀の腹殻と同じように滋陰潜陽の作用があります。さらに、骨に溜まった熱(炎症)を抑える力や、軟堅散結の効果もあります。

大浦 軟堅散結とはどのような働きですか。

董和 硬い組織を柔らかくして散らす働きのことで、痰濁や瘀血による腫瘤や硬結、結石などの解消に役立ちます。関節の変形や異常増殖した関節の軟骨に対しても、この効果があるのではないかと期待して新しく加えました。


更新された生薬

大浦 新しい「骨砕補などの生薬」は、骨砕補植物、亀の腹殻、鼈の甲羅の他には、どのような生薬が組み合わされているでしょうか。

董和 以前の骨砕補などの生薬と同じ八種類の生薬の組み合わせからなります。骨砕補植物とカザンコウ、クチナシの実は今までと同じです。それ以外の五種類を新しい生薬に変更しました。それは亀の腹殻と鼈の甲羅に鶏血藤(けいけっとう)、伸筋草(しんきんそう)、黄柏(きはだ)の葉です。

大浦 亀の腹殻と鼈の甲羅については、既にお話しいただきましたので、残りの三つの生薬について説明をお願いします。

董和 「鶏血藤」はマメ科の蔓性の植物で、蔓の皮を切ると血のような赤い汁が出ることから、この名前が付いたといわれます。味は苦・甘で、温性(体を温める)の性質です。漢方的には補血(血を増やす)活血(血流をよくする)舒筋活絡(筋肉の緊張をゆるめ経絡の流れをよくする)などの働きがあるとされています。

大浦 主に、どのような症状に用いられているのですか。

董和 生理不順や生理痛、血虚(血の不足)による無月経などに使われます。また、関節のだるさや痛み、手足のしびれや麻痺、風湿(風邪と湿邪)による痺痛(しびれ痛み)などに使います。とくに、体力のない高齢の方や女性の慢性の風湿による痺痛にもっとも適しています。また、高齢の方の手足の萎縮や無力、しびれ、麻痺、めまいなどにも用いられます。


伸筋草と黄柏の葉

大浦 伸筋草について教えてください。

董和 伸筋草は世界各地に分布するヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラ(常緑シダ植物)の全草です。

大浦 日本でも見ることはできますか。

董和 北海道から九州にかけての山地などの日当りのよいところに自生しています。日本では、万葉集に詠まれるほど古くから馴染みのある植物です。肌に潤いを与え、いきいきとさせる効果があるといわれています。胞子は石松子(せきしょうし)と呼ばれ、丸薬の衣や果物の人工授粉の際の花粉増量剤として使われています。

大浦 漢方ではどのような働きがあるものとして使われているのですか。

董和 去風散寒、除湿消腫、舒筋活血の作用があります。

大浦 具体的にはどのような症状があるときに使うのですか。

董和 風・寒・湿邪による関節痛や腰痛、皮膚の麻痺、四肢の無力、浮腫、打撲などの症状に用います。

大浦 伸筋草は中国ではよく使われているのですか。

董和 中国では「舒筋草」「寛筋草」とも呼ばれ、繁用されています。その名のとおり、筋を伸ばして血行を良くする働きがあり、筋肉や骨の痛みがある人によく用いられます。

大浦 黄柏の樹皮は生薬名を黄柏(おうばく)といい、胃腸薬の「百草丸」や「陀羅尼助」の主原料に使われていますが、黄柏の葉にはどのような働きがありますか。

董和 黄柏の葉は樹皮と同じように利用できます。味も苦く、ベルベリンなどの薬用成分が含まれ、強い抗菌作用があることも樹皮と同じです。また、清熱燥湿(体内にとどまる余分な水分と熱を除去する)の働きがあり、湿熱による下肢の腫脹や熱感、疼痛などに用いられます。

大浦 そして、これらに以前の骨砕補などの生薬にも組み合わされていたカザンコウ(鎮痛作用)とクチナシの実(清熱利湿解毒作用)の働きが加わるのですね。

董和 これらを組み合わせることで、さらに効果的になったと思っています。

大浦 高齢社会といわれている現在、骨粗鬆症をはじめ手足の関節の痛みや腰痛などの悩みを抱えている方はたくさんおられます。そういった方々に、新しく改良された骨砕補などの生薬は特にお勧めできますね。また、関節リウマチなどの改善にも役立つということですので、次回に説明していただくことにします。