董和先生に聴く
健康に良い薬草“熊柳”(Ⅱ)

聞き手:大浦純孝 社長


大浦 前回は「熊柳などの生薬」の主材である熊柳について詳しく教えていただきましたが、今回は熊柳以外の組み合わされているいくつかの生薬についてお話ししていただきたいと思います。熊柳一味だけでもじつに幅広い効用があるということでしたが、先生はさらにいくつかの生薬を組み合わされています。それはどのような目的でプラスされたのですか。

董和 自然治癒力を高めるためです。自然治癒力は人類が発生以来、営々としてつちかってきた病気を自然に回復させる力です。この自身の持つ自然治癒力をさらに高めるために、「気・血・水」の理論をもとに熊柳に数種類の生薬を組み合わせました。また、漢方には「去旧生新」という言葉があります。これは、瘀血(古血)を除去することによって新血(新しい血)が産生されるという意味です。この働きにより血液循環がよくなり自然治癒力が高まります。

大浦 瘀血というのは一種の老廃物と理解しています。この老廃物が蓄積して体の新陳代謝が低下すると、治癒システムが働かなくなります。この悪循環を断ち切るため瘀血を除去してやるわけですね。

董和 そうです。また、気と血は脾胃から産生されるものであり、気・血が旺盛になれば免疫力、自然治癒力も強くなります。そこで、熊柳の働きを補うものとして、補気(気を補う)作用のあるものと、健脾(消化吸収機能の強化)作用のあるもの、化瘀解毒(古い血を除き、老廃物を排泄)作用を増強するものなどを組み合わせたのです。


熊柳とお種人参

大浦 気を補うために熊柳にどのような生薬を組み合わされたのですか。

董和 一つはお種人参です。お種人参は補気(気を補う)作用が一番強い生薬で、「補気の王様」と呼ばれています。虚弱体質の人に対して優れた滋養強壮効果があり、熊柳と併用すると相乗効果があります。そのほか、慢性病で体力が低下している、疲れやすい、元気が出ない、風邪をひきやすい人などにも有効で、安心して食べていただけます

大浦 手術をしたり抗ガン剤を使用したりすると、組織や臓器のダメージが引き金となって消化吸収機能が低下し、食欲不振となり、それからさらに体力の低下を生むという悪循環をくり返します。このような食欲不振、体力低下の状態に対して、西洋医学による消化剤や消化管運動促進剤、ビタミン剤などの効果はほとんど望めません。こういう場合に補気作用の強いお種人参が熊柳の効果とあいまって働くわけですね。

董和 はい。さらに熊柳にはルチンが多く含まれており、軽度ですが血圧を下げる働きがあります。そのためお種人参を長期間服用しても、のぼせるとか血圧が上昇するといった心配はありません。

大浦 そういうことですか。お種人参は長期間服用すると、のぼせるとか血圧が上昇することがありますが、それを熊柳が抑えてくれているわけですね。それでいて補気作用はぐっと高まっているわけですから、じつにうまく配合されていることが分かります。では、健脾作用を高めるためにどのような生薬を組み合わされたのですか。


その他の生薬

董和 それは山薬(やまいも)、大棗、黄精(なるこゆり)です。これらには健脾、補陰血(潤いを与え血を増す)などの作用があります。慢性病などで食欲がない方が、これらをいっしょに摂ることで脾胃の機能を高め、気・血の産生を促します。

大浦 ガンによって引き起こされる貧血、気力減退、食欲不振、また化学療法による造血組織障害が現われてきたときに、山薬、大棗、黄精による気血の産生を促す働きが役立つわけですね。

董和 はい。その他にも、気の巡りを良くするために陳皮と九香虫(キュウコウチュウ)も組み合わせています。

大浦 陳皮は乾燥したミカンの皮でしたね。

董和 はい。香りがあり、古くから理気(気の巡りを良くする)作用や健脾作用があり、芳香性健胃薬としてよく使われています。

大浦 九香虫はどのような効果があるのですか。

董和 九香虫にも良い香りがあり理気、止痛(痛みを止める)、温中(お腹を温める)、強精などの作用があります。


脾の働き

大浦 先に、気血は脾胃から産生されると言われましたが、それはどのような働きをいうのでしょうか。

董和 気の組成成分となる物質には、両親から受け継いだ先天的な物質と、人間が生まれてから後天的に得られる物質があります。その後天的な物質を得るために大切なのが脾の働きで、その生理機能には「水穀の精微の運化」と「水湿(水液)の運化」があります。

大浦 水穀の精微の運化というのはどのような働きか説明していただけますか。

董和 中医学では、飲食物のことを水穀といい、その栄養素に相当するものを水穀の精微といいます。つまり、水穀の精微の運化とは、脾が食べ物から体に必要な栄養素を吸収し、全身の各臓器や四肢、皮膚などに運ぶことです。

大浦 では、水湿の運化とはどのような働きですか。

董和 脾が飲食物から体に必要な水分を吸収して全身に運び、肺・腎と協力して体内の水分代謝を維持することです。

大浦 ということは、脾胃の働きを簡単にいえば、飲食物の有用成分、水分も含めてですが、①これらを消化吸収して全身に運び栄養として身につけるという働きと、②肺と腎と協力させて水分代謝を司るという働きの二つがあるということでしょうか。

董和 そうです。脾胃の働きを高めるために、熊柳にお種人参、山薬、大棗、陳皮、黄精、九香虫を組み合わせて気血の産生を促します。さらに、これらを組み合わせることで補気・利水効果も一層強まり、体内の気・血・水のバランスも整います。


万病一毒

大浦 それでは熊柳の化瘀解毒作用を増強するためには、どのような生薬を組み合わされたのですか。

董和 それはシャチュウとスイテツです。これらを組み合わせることにより「化瘀生新」(古い血を下ろし、新しい血液を産生させる)という熊柳などの生薬の大切な作用が発揮されます。たとえば、ガンや慢性病の人の多くは、肌の艶も悪く貧血状態で体力が低下しています。このようなときに、高麗人参や漢方薬の十全大補湯など滋養強壮作用のあるもので貧血を改善しようとしても、なかなか効果は現われません。

大浦 どうして効果が現われないのでしょうか。

董和 このように体力の低下している人は、瘀血が邪魔になって新しい血液が産生できないからです。

大浦 江戸の漢方医、吉益東洞は「万病は唯一毒、衆薬は皆毒物なり、毒を似て毒を攻む。毒去って体佳なり」と万病一毒説を唱えました。現代においても、自律神経免疫療法の創始者の一人である福田稔先生は、東洞のいう体内にためた毒こそ病気の本体だ、と述べられています。老廃物、化学物質、重金属、ストレス、ねたみなどが現代における毒だというのです。こうした毒が、体内に蓄積して血流を妨げ病気になるということで、刺絡(治療点の周辺に小さな針を刺して少量の血液を出させる方法)をされたりしています。こういった毒と瘀血は同じように思えますね。

董和 そうだと思います。漢方には「虚人不受補」という言葉があります。これは、虚弱な人には強力な滋養強壮薬を与えてはいけない、という教えです。病気で体が衰弱しているときは体力が低下しているばかりでなく、気血の巡りも大変悪くなっています。そういうときに強力な滋養強壮薬を多く与えると、いっそう気血の流れが悪くなり、かえって逆効果です。これは滋養強壮薬には補気の力で、気の巡りと血の流れを止める作用があるからです。気の巡りと血の流れが悪くなれば、いっそう苦しい状態になります。

大浦 免疫活性物質についてもいえることですが、免疫を活性化することは白血球を活性化することになります。ところが、白血球を活性化するということは、白血球の粘着性を高めることでもあります。白血球の大きさは赤血球の約三倍もあり、それが粘着性が高まれば血流障害を引き起こすでしょう。しかも白血球が活性化すると血小板も活性化しますから、血小板の凝集性が高まって、ますます血流障害を招いてしまいます。今のお話しをうかがってなるほどと思いました。

董和 その対策として熊柳などの生薬にはシャチュウとスイテツを組み合わせています。どちらも虫類生薬で、ほぼ同じような活血(血の巡りをよくする)化瘀(古い血を除く)作用があり、婦人の無月経、腹部の腫瘍、打撲傷などによく用いられます。また、熊柳とシャチュウ、スイテツを一緒に用いることで、化瘀生新の作用がより発揮されます。

大浦 血液循環を良くすることは慢性病の治療には欠かせないということですね。

董和 ええ。熊柳にこのようにさまざまな生薬を組み合わせることによって、脾胃の働きを強め、気血の産生を高めて、免疫力、自然治癒力を高めるという効果が期待できます。

大浦 熊柳などの生薬の補気、健胃などの作用は補中益気湯と似ていますが、瘀血を下ろし、新血の産生を促進して免疫力を高めるという効果は、補中益気湯より素晴らしいですね。具体的には、体力低下や免疫力低下、食欲不振などの回復、花粉症の体質の改善などに幅広く役立つということですが、それらについては次回に詳しく教えていただくことにします。