董和先生に聴く
健康に良い薬草“熊柳”(Ⅳ)


聞き手:大浦純孝 社長


大浦 前回に引き続いて「熊柳などの生薬」は、どのような慢性病に用いることができるのか教えていただければと思います。

董和 熊柳などの生薬は、肝臓病や腎臓病、脳・心臓血管系の疾患、糖尿病、肺気腫、胃腸病、婦人病、リウマチ、疲労症候群、ウツ病、冷え症、血行不良など、さまざまな慢性病で「疲れ、食欲不振、痩せ気味、肌つやが悪い」という症状がある方にお勧めできます。

大浦 「疲れ、食欲不振、痩せ気味、肌つやが悪い」といった症状は慢性病につきものですね。それに対し熊柳などの生薬が勧められるというのは、どのような理由からでしょうか。

董和 漢方的には、あらゆる慢性病では「久病多虚」「久病多瘀」という病理変化が見られると考えます。

大浦 どのような意味ですか。

董和 病気が長引くと体力の消耗が激しく衰弱状態に陥ります。また、血液の循環も悪くなり瘀血が現われてくるという意味です。このようになると、疲れや食欲不振、痩せ気味、肌の艶が悪いといった自覚症状が現われてきます。このような状態を改善するのに熊柳などの生薬は役立ちます。

大浦 熊柳などの生薬は、疲れを解消し、瘀血を下ろし、新血の産生を促進し、免疫力、自然治癒力を高めてさまざまな慢性病の改善に役立ち、健康を回復させる「気・血・水」の宝物と言えますね。

董和 はい。さまざまな慢性病の方にお勧めできます。


ガンとの共存

大浦 以前に董和先生が言われていましたが、中国ではガン治療で免疫力が上がらない患者さんに対しては、脾胃の働きを高める方法を講じているのですね。

董和  私はガン治療に一番有効な方法は、自然治癒力を高めることだと考えています。例えば、怪我をしても小さな傷であれば放っておいても自然に治ります。これは体に自然治癒力が備わっているからです。自然治癒力というのは、体の全体的な力で生命力といってもよく、免疫力や消化吸収機能、造血機能などすべての働きが総合されて現われるものです。

大浦 ガンの治療に対しても同じことが言えますね。

董和 ガンになると自然治癒力が非常に低下してきます。まして、現代医学では手術や抗ガン剤、放射線など体にとって攻撃的な治療をします。これがさらに自然治癒力を低下させます。そのために亡くなられる方も少なくありません。このような時には攻撃的な治療ではなく、むしろ体をいたわり、自然治癒力を高めてガンを休眠させ、ガンと共存できるような治療がいいと思います。

大浦 それにはどのようなものが勧められますか。

董和 脾胃の機能を高め、滋養強壮作用のある熊柳などの生薬がお勧めです。脾胃の機能が高まってくれば、自然治癒力や免疫力も高まってきます。そうすれば、体内にガン細胞があっても大人しくさせておくことができ、普通に日常生活を送ることができると思います。ガンが退縮していく可能性もあります。


紫霊芝などの生薬

大浦 本当にそうですね。免疫力が上がらないからガンが進行してきたのであって、こういう状態のときには、いくら免疫力を上げようとしても如何ともしがたいところがあります。こういう場合は、免疫力も考えなくてはいけないのでしょうが、それよりもまず消化吸収機能を高めて栄養状態を改善することが大切ですね。また、体力が低下すると血液循環や新陳代謝も悪くなって、体に老廃物がたまってきます。そうなるとますます治癒システムが動きにくくなりますが、それに対しても熊柳などの生薬は配慮されているわけですね。
ところで、ガン治療には熊柳などの生薬だけを勧めればよいのでしょうか。

董和 ガン治療に対しては一種類のものだけではなく、いくつかの方法を組み合わせて行なうことをお勧めします。

大浦 どのようなものとの組み合わせがよいのでしょうか。

董和 「紫霊芝などの生薬」と「竜葵(りゅうき)などの生薬」を合わせて用います。

大浦 つまり、熊柳などの生薬に紫霊芝などの生薬と竜葵などの生薬、合わせて三種類の生薬群の併用を勧められているのですね。それぞれについて説明していただこうと思いますが、まず紫霊芝などの生薬からお願いします。

董和 熊柳などの生薬は、免疫力や自然治癒力の向上、食欲増進、気血の産生などを主な目的として作ったものです。ガンに対しては、これに紫霊芝などの生薬を併せて食べて、総合的に対処した方が有効です。

大浦 紫霊芝などの生薬は、どのような生薬を組み合わされているのですか。

董和 これには野生紫霊芝をはじめ冬虫夏草、田七人参十頭根、三稜、ガジュツ、半枝蓮、白花蛇舌草、大青葉、山慈姑、青皮、ウコンなど、全部で十四種類の生薬が組み合わされています。

大浦 化瘀血のものが多いように思いますが…。

董和 中国のガン治療の原則は「去邪扶正」です。つまりガンを治療する場合は、体力や自然治癒力を高めるだけでなく、熱、瘀血、痰(貯留した異常な水液)、気滞(気の巡りが滞る)など病気の原因となる邪気を取り除かなければなりません。また、漢方的にはガンは出来物(瘤)の一つと捉え、瘀血、痰、毒の三つの邪気が原因でできていると考えています。その中でも瘀血はガンの大きな原因になっています。

大浦 三つの邪気に対して、どのように対処していくのですか。

董和 ガンの人には、瘀血や毒を下すのにあまり攻撃的なものは体に負担となるため使えません。その点、紫霊芝などの生薬に含まれている山慈姑、大青葉、半枝蓮、白花蛇舌草などは穏やかに解毒する作用があります。そこに熊柳などの生薬を合わせて摂れば、食欲が増進し、さらに自然治癒力が高まると思います。


血管新生阻害作用

大浦 紫霊芝などの生薬には、瘀血、痰、毒といった邪気を除く働きと、免疫賦活作用があるということですね。
ところで、ガンの代替療法では免疫賦活作用、アポトーシス誘導作用、血管新生阻害作用、体内有害物質の排泄作用、抗酸化作用、腸内環境の浄化作用の六つが効果的に働くことで、ガンを休眠させ、ガンと共存できると考えています。先生の熊柳などの生薬と紫霊芝などの生薬の組み合わせは、これらの条件を備えたものと思いますが、先生はさらに血管新生阻止作用の高いものをプラスした方が良いというお考えのようですね。新生血管ができなければガン細胞には栄養が行かず、アポトーシスが始まるということですか。

董和 ガンが増殖するためには、栄養を吸収するための補給路として新しい血管(新生血管)を形成する必要があります。この新生血管は正常な血管とは違い、血管が細く、もろくて、血流が非常に悪いのです。漢方では、これも瘀血と捉えています。

大浦 普通は、人は成長してからは新生血管はできません。新生血管ができるのは異常で、ガンや関節リウマチ、黄斑変性症などでみられます。一般にはサメ軟骨が新生血管を抑えるものとして有名ですが、吸収率が悪いため、最近ではそれに代わるものとして一部にはサメ脂質が注目されています。先生は漢方生薬の中にもそうした働きのあるものを見出されているわけですね。

董和 はい。紫霊芝に組み合わせて用いている田七人参十頭根、三稜、ガジュツ、山慈姑などの生薬には化瘀血作用があるので、血管新生を阻止し、ガン治療に役立つと期待しています。また、紫霊芝などの生薬が関節リウマチに良い結果をもたらしているのも、こうした効果が大きいと思います。その他、竜葵の果実と冬虫夏草菌糸体のエキスからなる「竜葵などの生薬」にも同じような作用があり、ガンの方にお勧めできます。


竜葵などの生薬

大浦 紫霊芝などの生薬は、ステロイド剤的な働きをするばかりでなく、血管新生阻止作用もあるということが関節リウマチにも効果がある理由となるわけですね。さらに「竜葵などの生薬」にも血管新生阻止作用があるということですか。

董和 はい。竜葵はナス科の植物の果実で和名をイヌホオズキと言います。生薬名は竜葵(りゅうき)と呼ばれ、世界の温・熱帯に広く分布しています。

大浦 どのような成分を含んでいるのですか。

董和 竜葵は、ソラマルジンというアルカロイドを含んでいます。この成分に、ガン細胞にアポトーシスを誘導する働きがあるという研究結果が、十数年前から多く発表されています。

大浦 アポトーシスについて説明していただけますか。

董和 アポトーシスとは「枯れて、落ちる」という意味で、もともと予定されたプログラムに従って細胞が死んでいくことです。つまり、役割を終え古くなった細胞が、遺伝子の指令で自殺、崩壊するメカニズムをいいます。これに対し、細胞の損傷や血行不良などにより偶発的に起こる細胞死はネクローシス、または壊死と呼ばれ、アポトーシスとは区別されます。

大浦 アポトーシスは体の中ではどのようなときに起こるのでしょうか。

董和 アポトーシス作用は、組織の余分な細胞の除去、ガン化した細胞や内部に異常を起こした細胞の除去、自己抗原に反応した細胞の除去などに重要な役割を果たしています。生体内でガン化した細胞は、アポトーシスによって取り除かれており、ガンの成長を未然に防いでいます。しかし、ガンや自己免疫疾患などを発症してしまうのは、正常細胞のアポトーシス作用に異常が生じているからと考えられています。


理想的な組み合わせ

大浦 竜葵はガンに対して、アポトーシス誘導作用以外にも何か効果があるのでしょうか。

董和 竜葵には直接ガン細胞の分裂を抑制する作用もあり、中国ではガン治療に多く利用されています。現代医学の抗ガン剤のような使い方ですが、正常細胞に悪影響を与えることはありませんので、とても安全な抗ガン薬草です。以上のように、竜葵は抗ガン剤治療の効果増強の目的で併用したり、進行ガンの漢方治療において使用する価値はあると思います。

大浦 ガン細胞がアポトーシスできないのは、ガン細胞内ではミトコンドリアが萎縮と減少をしているからだという説を読んだことがあります。竜葵などの生薬に含まれている冬虫夏草はミトコンドリアの働きを活性化するはずですから、その点でも効果が期待できますね。ところで、竜葵は全草ではなく、なぜ竜葵の果実を利用されているのですか。

董和 竜葵に含まれるアルカロイドは、全草には 0.20~0.25 %(乾燥重量計算)ですが、未熟な青い果実には 4.2 %も含まれています。果実 1g には、全草 20g と同じくらいの量が含まれています。
このように漢方のガン治療では、自然治癒力・免疫力の面には「熊柳などの生薬」、新生血管の抑制には「紫霊芝などの生薬」が役立ちます。さらに、漢方の化学抗ガン剤的な働きとして「竜葵などの生薬」が役立ちます。これらを用いて治療に当たれば、きっと満足いただける結果が得られると思います。

董和 健康で長生きするためにも役立ちます。長生きするためには最初にも述べましたが、体の中の「気・血・水」の三つの要素がお互いにバランスが取れていることが大切です。この三つのうちどれかが過剰でも、また不足していても他の要素に影響を与え、バランスが崩れてしまいます。ところが、ほとんどの高齢者に気・血・水の不足が現われています。

大浦 そのような時にはどのように対処すればいいのですか。

董和 「脾虚」と「腎虚」に分けて治療していきます。具体的には、年とって体力が衰えたときには「食欲」と「足の力」の二点についてチェックします。食欲がない場合は脾虚、足に力が入らない場合を腎虚と捉えます。また、その両方ともあれば、腎虚も脾虚もあるとします。

大浦 熊柳などの生薬は食欲のない脾虚の人に役立つのですね。

董和 はい。健康で長生きするための養生法として、食欲が低下した脾虚には熊柳などの生薬が役立ちます。また、足に力が入らない腎虚には仙茅や黄精、西洋人参、亀の殻などを組み合わせた「仙茅などの生薬」が役立ちます。また、食欲と足の力の両方が低下した方には、熊柳などの生薬と仙茅などの生薬を一緒に摂ることをお勧めします。

大浦 熊柳などの生薬を摂ることは、高齢者が多い日本では、健康的で幸せな人生を送るために非常に意義ある自然からの贈り物と言えますね。

本日はどうもありがとうございました。

(了)