董和先生に聴く
かぎかずらの話(下)

聞き手:大浦純孝 社長

大浦 今回で「かぎかずらの話」は最終回となります。そこで今回はまとめとしてカギカズラの葉、白僵蚕、苦丁茶、灯盞花などが組み合わされている「かぎかずらなどの生薬」の具体的な使い方について説明していただけますか。

頭 痛

董和
 まず、頭痛の方にお勧めします。漢方薬では「釣藤散」(ちょうとうさん)と「呉茱萸湯」(ごしゅゆとう)がよく頭痛に使われています。この二つは慢性的に続く頭痛に効果がありますが、釣藤散は体を冷やす作用が強いので、冷え症の方にはあまり勧められません。一方、呉茱萸湯は体を温める作用が強いので、逆にのぼせやほてりのある方には使えません。その点、かぎかずらに組み合わせている生薬の気味は全体として平性(温冷どちらにも偏らない)になっているので、どなたにでも使えます。

大浦 平肝清熱(肝の熱を取り除く)作用のあるカギカズラの葉、駆風(風の邪気を取り除く)作用のある白僵蚕、清熱(熱を冷ます)作用のある苦丁茶、去風散寒(風寒の邪を体表から発散させる)作用のある灯盞花、さらに枸杞子と白菊花も組み合わされているので、急性の頭痛や慢性頭痛、風邪による頭痛、高血圧による頭痛でも使えるという大変便利な頭痛対策食品ですね。しかも、のぼせやほてり気味の人にも、冷え症の人にも使えるので便利ですね。

董和 その他、高血圧症の方にもお勧めできます。その場合は、「羅布麻などの生薬」や「鬼針草」(きしんそう)を合わせて使うとより効果的です。

鬼針草

大浦 羅布麻などの生薬は高血圧症や心臓病、高脂血症などに役立ちますが、鬼針草との併用は、どのような理由によるのでしょうか。

董和 鬼針草の別名は「鬼菊」(おにぎく)です。逆流性食道炎や胃炎などに効果があるため「清胃草」という名前もあります。また、中国の人たちは神奇な草(神秘的な草)とも呼んでいます。この鬼針草が、1997年10月28日付けの中国の『老年新聞』に高血圧に効果があると発表されていました。その内容は、中国の陳永強副主任医師が鬼針草を高血圧の患者に用いたところ顕著な治療効果(有効率は100%、治癒率98%)があったというものです。しかも、正常血圧と低血圧の人に対しては副作用はなかったということです。

大浦 たしか鬼針草は菊科の栴檀草(せんだんぐさ)属の植物ですね。その種類はいくつかありますね。

董和 はい。日本にあるオオバナセンダングサ(別名・タチアワユキセンダングサ・白花鬼針草)や、ホソバノセンダングサ(小花鬼針草)は高血圧の方にお勧めできます。しかし、アメリカセンダングサ(中国名・大狼把草)は、高血圧には効果がないといわれています。


瓜楼の果実などの生薬

大浦 ところで、逆流性食道炎には「瓜楼(かろう)の果実などの生薬」を使ってとても調子がいい人がありましたが、鬼針草との使い分けはあるのでしょうか。

董和 ええ、逆流性食道炎には鬼針草だけを使うことがありますが、これに瓜楼の果実などの生薬を合わせていただく方が良いと思います。特に、舌に苔が多い人の場合は合わせて使うとより効果的です。

大浦 そうですか。以前、董和先生に瓜楼の果実などの生薬は胸・脇・胃・腹部の不快症状には全て使えると教えていただいたように思いますが、その理由を説明してください。

董和 瓜楼の果実はトウカラスウリの果実のことです。瓜楼の果実に組み合わせた生薬(瓜楼、薤白、枳実、肉桂、お種人参、黄連の葉、生姜、蜜柑の皮)は、胸痛・心痛・脇痛に処方される漢方薬の「瓜楼薤白白酒湯」と、腹痛・嘔吐・胃部の停滞感や重圧感、食欲不振に重用される漢方薬の「黄連湯」に含まれる生薬と同じもので、もちろん胸・脇・胃・腹部の不快症状には全てお勧めできます。

大浦 日本では、瓜楼の根は栝楼根や天花粉という名前でよく漢方薬に使われていますが、瓜楼の実はあまり使用されていませんね。

董和 はい。しかし中国では、この瓜楼の果実は様々な病気に使っています。
去痰、鎮痛、排膿作用があることから気管支炎、肋膜炎などの炎症と胸痛に、また狭心症や心臓神経症の胸痛に用いています。特に、肺炎や気管支炎、喘息、咳、肺気腫などによる痰がつまって息苦しい時に使います。また、心臓や肺疾患による胸痛、さらに胸痛が背中までつき抜けるような激痛にも使われます。二日酔いの予防にも、酔った時にも有効です。

大浦 具体的に、瓜楼の果実などの生薬を使われた症例を紹介していただけますか。

董和 ある薬局の先生ご自身の体験談ですが、年とともにお腹が張るようになり、仕事が忙しくなるとお腹が妊婦さんのようにパンパンに張り、胸まで突き上げてくるような辛さだったそうです。その先生は、これまで「(から)(たち)などの生薬」を愛用されていたのですが、寝る前に「瓜楼の果実などの生薬」を合わされるようになってから、動かなかった消化管がグルグル動き始め、快便になり、お腹がすっきりしてとても気分が良い、というメールをいただきました。
この先生のように、胃腸にガスが溜まるときには、唐橘などの生薬と瓜楼の果実などの生薬を合わせると効果的です。胃痛や腹痛があるときにも同じように二つの組み合わせが有効だと考えています。

大浦 さて頭痛の話に戻りますが、最近、片頭痛と群発頭痛の場合、帯状疱疹ウイルスが頭痛発作の回数や痛みの程度を悪化させる因子として働いている、という説が出ています。帯状疱疹には先生は「ヘビエキスなどの生薬」を勧められていますが、片頭痛にもヘビエキスなどの生薬を勧められていますね。やはり片頭痛と帯状疱疹ウイルスには何らかの関係があるとお考えでしょうか。

董和 片頭痛と帯状疱疹ウイルスの関係についてはよくわかりません。しかし、ヘビは通絡止痛(経絡の気血の通りを改善し、痛みを止める)作用のある動物生薬です。また、血中の酸素不足を改善し、血中に蓄積した老廃物を除去する働きにも優れています。肩コリや片頭痛も「風の邪気・風の病気」の一種と捉えており、截風の要薬であるヘビが役立ちます。ヘビエキスなどの生薬はヘルペス後の神経痛や、突発性の顔面神経マヒなどには、是非使っていただきたい生薬です。

パーキンソン病

大浦 かぎかずらなどの生薬が頭痛、高血圧に効果があるという説明をしていただきましたが、その他の病気については如何でしょうか。

董和 パーキンソン病や小児チック症、癲癇などに役立ちます。それぞれの病気に使って良かったという報告をいただいています。まず、パーキンソン病については、ある薬局の先生からの次のような報告がありました。それは、パーキンソン病で深夜に寝言や暴れるなどの症状がある場合には「亀版などの生薬」が役立った。また、パーキンソン病で顔に表情がなく、感情を表わすことが少ない、歩行困難があるといった場合には「かぎかずらなどの生薬」が役立つと報告されています。
この薬局の先生は、パーキンソン病で深夜に起こる症状の場合には亀版などの生薬が、歩行や感情に問題がある場合はかぎかずらなどの生薬が良いとお客さんに勧められています。

大浦 パーキンソン病は進行性の病気で、治療困難なことがほとんどですが、こういった漢方食品が役立つということになればいいですね。


小児チック症や癲癇

大浦 では次に、小児チック症について教えていただけますか。

董和 別の薬局の先生からは、小児チック症に良かったという報告です。小学生の男の子ですが、長い間この病気のために本人やご家族が悩んでおられました。筋肉が自分の意志とは無関係(不随意)に動いたり震えたりし、体がガチガチになって疲れる。また、学校の教室内や朝礼などの時に起こる不随意な声や動きを大変に気にしておられ、このままでは普通に中学校に行けないのではないか、と相談に来られたそうです。すでに、病院で検査を受けておられました。その結果、脳には異常がなく、ハロペリドールなどの抗精神薬が処方されていましたが、全く効果がないどころか、かえってしんどくなり、途方に暮れておられたそうです。そこで先生は、かぎかずらなどの生薬を勧められました。

大浦 結果はどうだったんですか。

董和 一ヵ月後に来られた時には、お父さんの顔が歓びでほころんでおられたそうです。お父さんの話によると、一週間で震えが激減し、二週間目頃からは声も発しなくなり、今では震えもなくなり、とても静かで穏やかだそうです。震えがなくなったので、本人も体がとても楽だと喜んでいる、とのことでした。

大浦 すごい効果ですね。漢方薬では小児チック症に「抑肝散加陳皮半夏」がよく使われますが、こんなに短期間で著効がでるようなことはありませんね。

董和 少し難しくなりますが、小児チック症は中国漢方では肝風内動(肝の潤い物質の不足によるめまいやけいれん)と関係がある疾患で、主に風・痰・火から発症したものと捉えています。そのために治療には、平肝熄風(内風によって起こるめまいやけいれんを抑える)の効能のある漢方薬の「天麻釣藤飲」などを使っています。しかし、カギカズラの葉には平肝(肝の機能亢進状態を改善する)作用があり、白僵蚕には化痰熄風(水毒を除去し、興奮やけいれんを抑える)作用がありますから、これらを組み合わせたかぎかずらなどの生薬は小児チック症にもお勧めできると思っています。

大浦 そういうことですか、よく分かりました。癲癇はどのような症例だったのでしょうか。

董和 癲癇の患者さんにかぎかずらなどの生薬を勧められたところ、夜間に起こる発作が少なくなったと大変喜ばれ、現在も毎日続けておられるようです。

大浦 癲癇に対しては、人間医学社ではこれまで天然のタウリンの製品を使ってきました。タウリンには細胞の興奮を調整する、つまり細胞内外でのカルシウムの移動を微妙に調整する働きがその作用と考えられています。このようなタウリンの働きとかぎかずらなどの生薬の作用は、なにか似たところがあるように思いますね。それにしても、癲癇症状の緩和と発作の減少ができてとても嬉しいことですね。

むずむず脚症候群

董和 最近、かぎかずらなどの生薬に関して、ある薬局の先生からおもしろい症例をいただきました。

大浦 どのような症例でしょうか。

董和 それは、78歳の女性で、長年むずむず脚症候群に悩んでいる方に、かぎかずらなどの生薬が効果があったという症例です。この女性は、ご主人を亡くされた後に発症されたそうです。症状は夜、布団に入ると足の裏からチリチリした感覚が起こり出します。それが、次第にふくらはぎから太ももにかけて広がり、電気が走るようなけいれん痛が間欠的に起きてきて、痛みで眠ることができなかったそうです。眠れない日が続くとますます症状が強まり、昼間は睡眠不足で頭が朦朧としていたそうです。病院から処方された新薬を服用すると、けいれんは治まるものの、逆に頭が興奮して眠れないとか吐き気などの副作用があり、とても困って相談にこられたそうです。

大浦 これにもかぎかずらなどの生薬で対応されたわけですね。

董和 そうです。この方は、一日分を一回分として、夕方と寝る前、そして夜中トイレに起きた時に食べられました。すると、脚の不快な症状を感じることなく熟睡ができるようになり、爽快に目覚められるようになったそうです。素晴らしいものに出会えたと、大変喜ばれ毎日続けておられる、とのことです。

大浦 むずむず脚症候群の症状は、じっと座っているときや寝ているときに脚が、むずむずする、ピクピクする、ほてる、痛い、痒いなど、じつとしていると我慢できないような不快感を特徴とするようです、漢方的にはどのように捉えられているのですか。

董和 中医学ではむずむず脚症候群は「不安腿総合症」などと呼ばれ、痺証の一つと捉えます。痺証というのは、風・寒・湿の邪気が下肢の経絡をつまらせて、気血の流れが悪くなるために痛みやしびれが起こる病気のことです。カギカズラの葉と白僵蚕には駆風通絡(風の邪気を除き、経絡の流れを良くする)作用があり、むずむず脚症候群の改善に役立ちます。

大浦 不眠症の原因の一つとして増えてきているといわれていますので、かぎかずらなどの生薬を勧めたいと思います。

董和 また、良い症例がありましたらお知らせしたいと思います。

大浦 今回は有益なお話をいただきありがとうございました。頭痛や高血圧、パーキンソン病、小児チック症や癲癇、むずむず脚症候群をはじめ、ストレス、更年期障害、のぼせ、めまい、不眠、手足の震え、こむら返り、ひきつけ、脳卒中後遺症、蕁麻疹など、さまざまな症状に「かぎかずらなどの生薬」で対応できるようですので、これからは勧めていきたいと思います。また、心臓や脳の血管の病気には「灯盞花などの生薬」をお勧めしていきたいと思っています。

本日はどうもありがとうございました。

(了)