董和先生に聴く

野ぼたん科の植物(上)


聞き手:大浦純孝 社長


大浦 本日はよろしくお願いいたします。今回からは「野ぼたん科の植物」についてお話していただけるということで楽しみにしています。そもそも董和先生が平成三年に日本に来られることになったきっかけは、この野ぼたんの研究のためでしたね。

董和
 はい。当時、中国で内科医師だった私は、ある種の野ぼたんにアレルギー性喘息や小児喘息に根治効果があることに非常に興味を持ちました。そこで、野ぼたんが持つⅠ型アレルギー抑制作用の研究のために来日しました。

大浦 野ぼたんの種類は多いと聞いていますが、どれくらいあるのですか。

董和 世界に3000種くらいあるといわれています。多くは熱帯~亜熱帯産で、その一部は食用になりフィリピンやインドネシアなどでは若葉を採って食べています。その中で私がお勧めしている野ぼたんは、蔓性の多年草で、実が熟すと赤紫色になるものです。中国では葉は食べませんが、実はよく食べます。街でも、その実は山の果物として売られています。これを食べると口の中が黒くなることから属名が「メラストマ」とつけられています。メラストマとはギリシャ語で「黒い口」を意味する言葉だそうです。

大浦 日本でも観賞用として栽培されている野ぼたんは数種類あります。しかし、実は硬くてとても食べられませんが、中国の野ぼたんは日常よく食べられているのですね。これにはどのような成分が含まれているのですか。

董和 野ぼたんには、タンニンが多く含まれており、他にアミノ酸やブドウ糖、ポリフェノールなども含まれています。

大浦 食用とされているということは、それだけ安全性が担保されているわけですから、薬用として使う場合でも安心して食べることができるということですね。先生にお勧めしていただいた薬草の多くは食用にされてきた歴史があり、現在も食用に供されているそうですね。

董和 はい。野ぼたん以外にも鉄包金(熊柳)や穿山龍(ウチワドコロ)、竜葵(イヌホオズキ)の若葉、土大黄(スイバ、ぎしぎし)などがあり、これらは山菜料理やスープなどにして利用されています。

野ぼたん科植物の作用

大浦 それでは、野ぼたんにはどのような効果があるのか、説明していただけますか。

董和 野ぼたんは、中国の『全国中草薬匯編』という書物に清熱解毒(熱を取り毒を下ろす)、去風利湿(風邪を取り除き、湿を尿に排泄する)、補血(血を養う)、止血などの効果があると書かれています。それにより、腸炎、下痢、肺膿瘍、子宮出血、貧血、下り物、足腰の痛み、風湿骨痛(風湿性関節痛)、外傷出血、蛇咬傷に用いると記されています。

大浦 他にも野ぼたんについて書かれている書物はあるのですか。

董和 『中薬大辞典』にも活血(血流改善)、止血、清熱解毒の効果があり、生理痛、産後の腹痛、血崩(不正出血)、下り物、大便出血、下痢、癰腫、疔瘡などに用いるとあります。また、『閩東本草』には生理痛、不正出血、下り物、血痢、痔瘻、脱腸、風疹に用いるとあります。

大浦 いずれも「血」が関係する症状に多く使われているようですね。

董和 はい。これらの書物に書かれているように野ぼたんは活血、補血、止血の作用があります。貧血や生理痛、不正出血、産後の腹痛、大便の出血、痔の出血、外傷による出血などに用います。また、清熱(熱を取り除く)利湿(利尿により余分な水分を排泄する)解毒(毒を排除する)の作用があり、肺膿瘍や下痢、癰腫、疔瘡などにも役立ちます。


副作用がない野ぼたん

大浦 野ぼたんというのは、じつに様々な効果をもった植物ということがわかりますが、先生は野ぼたんを喘息や小児喘息、さらには急性や慢性の咳に勧められていますね。

董和 はい。私は平成十二年に野ぼたんにミカンの皮と蛇胆(ヘビの胆)を組み合わせて健康食品の「野ぼたん科植物」を創りました。

大浦 蛇胆は野生のものを使うのですか。

董和 日本では養殖したマムシの胆が使われているようですが、中国では野生のマムシやハブの胆を使います。中国では、蛇胆とミカンの皮は咳に常用する薬で、ほとんどの人が使っています。

大浦 有名な咳の薬なのですね。では、野ぼたんはどの部分を使われているのですか。

董和 全草です。葉も根も実も、全体を使って創っています。以来、たくさんの方に野ぼたん科植物を利用していただいています。その結果、中国で用いていた時と同じように、アレルギー性喘息や小児喘息に対して良い結果が出ています。また、咳が長引いている方にもお勧めして良い効果が出ており喜ばれています。

大浦 人間医学社でも、この野ぼたん科植物は咳や喘息には第一選択として使わせていただいています。とくに、風邪は治ったけれども咳だけが残ったという場合にはよく効き、とても喜ばれています。

董和 そのような咳には是非試していただきたいと思います。咳というのはありふれた症状ですが、麻黄系の薬を除いて、なかなかこれといったものがありません。しかし、麻黄系の薬は副作用の問題があります。その点、野ぼたん科植物は食用として使える安全なものである上、効果の面でも引けを取りません。

大浦 漢方では喘息や咳には、今言われた生薬の「麻黄」を使いますね。

董和 麻黄の原産は中国中北部やモンゴル地方です。古くから気管支喘息の特効薬として用いられてきた歴史があります。それは主成分にアルカロイド成分の一つ、エフェドリンを含んでいるからです。新薬の咳止めに配合されているdl-メチルエフェドリン塩酸塩などは、麻黄から抽出したエフェドリンから合成されています。

大浦 漢方薬では風邪薬の「麻黄湯」や「葛根湯」「麻杏甘石湯」「小青竜湯」などに麻黄が配合されていますね。

董和 はい。ただし、麻黄は中枢神経に作用する植物毒を含有しているといわれています。そのため、心臓の血管や心拍に異常が起こったり、ケイレン発作や精神異常などが起こることがあり、麻黄が入った漢方薬を服用する時には細心の注意が必要です。


喘息・咳の秘草

大浦 それに対して先生が勧められている野ぼたん科植物は食べても安全で、かつ喘息や咳に効果があるというのは、とても嬉しいことですね。

董和  麻黄は喘息の発作を抑制する効果はありますが、根治させる働きはありません。また、麻黄の薬性が非常に強いので続けて服用することは勧められません。その点、野ぼたん科植物は長期間にわたって食べても安全ですので、喘息が良くなるまで食べ続けられます。このことが野ぼたん科植物が「喘息・咳の秘草」と言われる由縁だと思います。

大浦 喘息の根治作用ということに関してですが、野ぼたん科植物を利用されている方の中に、アトピー性皮膚炎の症状がかなり改善されてくる例があります。その人たちの特徴は、いずれも胃腸が弱いという共通点があります。もともと軟便・下痢気味とか、血便が出易いといった症状があることから野ぼたん科植物を用いてもらったところ、皮膚の炎症がみるみる良くなったのです。その理由を考えますと、腸管での傷というか炎症が改善されて、アレルゲンの侵入を防いだことが影響しているのではないかと想像しているのですが、いかがでしょう。

董和 おそらくそうだと思います。野ぼたん科植物には、医薬品のタンニン酸アルブミンとほぼ同じものが含まれています。タンニン酸アルブミンは出血性大腸炎に用いられていますが、牛乳アレルギーにも用いられています。こうした点を考え合わせますと、やはり腸管でのアレルゲンの侵入を防ぐことによって、アトピー性皮膚炎や喘息の改善につながっているものと考えられます。

胸苦しさに瓜楼の果実

大浦 「喘息は腹で治せ」という人がいますが、アレルギー疾患の治療は、胃腸をはじめとして粘膜での過敏状態を改善しなければならないということでしょうね。さて、喘息は発作時と緩解時がありますが、野ぼたん科植物はどちらの時期に使われますか。

董和 どちらの場合にも利用できます。ただし、喘息の急性発作の時は取り敢えず一度病院で診療を受けていただくのがよいと思います。それから野ぼたん科植物と「瓜楼の果実などの生薬」を一緒に食べられることをお勧めします。瓜楼の果実は清熱化痰(熱を下げ、痰を取る)の作用があり、痰の排出を楽にします。

大浦 日本では、瓜楼根は去痰(痰を排出する)止渇(渇きを止める)抗腫瘍作用などがあるということで漢方薬に使われています。しかし、瓜楼の実は使用されていないようですが、そのあたりを説明していただけますか。

董和 瓜楼はインドシナに分布するウリ科の蔓性の多年草で、トウカラスウリとも呼ばれます。中国では、根は「瓜楼根」(天花粉)、果実は「瓜楼実」、果皮は「瓜楼皮」、種子は「瓜楼仁」と呼ばれ、いずれも薬用になります。瓜楼の果実は呼吸困難や呼吸促迫、肺炎、気管支炎の初期で、痰がつまって胸が痛むときなどにもよく使われています。

大浦 瓜楼仁に薤白(ラッキョウの鱗茎)などを配合した狭心症の漢方薬があり、よく使われています。先生が創られたものは、瓜楼の果実に薤白、枳実、肉桂、お種人参、生姜、黄連の葉、蜜柑の皮を組み合わされていますね。

董和 これは喘息発作の時の呼吸困難に使います。その他、先月号でも紹介しましたように胸が苦しい、胸が重い、軽い胸痛などにも使います。また、胸・脇・胃・腹部の脹満(ぱんぱんに張る)、苦しい、痛いといった不快症状には、全てお勧めできます。

大浦 瓜楼の果実は痰にも痛みにも役立つ植物なのですね。喘息で呼吸困難や胸が苦しいといった場合には、野ぼたん科植物と合わせて使うと効果的だというのがよくわかりました。

董和 野ぼたん科の植物は、これから寒くなると増えてくる風邪の咳にもお役に立てると思います。

大浦 次回は、咳や喘息のときに出る痰の対処方法や、漢方でいう広義の「痰」などについて詳しく教えていただくことにします。

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